第16話後編 黒幕は…
瑠衣子はその場に倒れてしまった。でも、何かがおかしい。瑠衣子は今、菜七子さんに撃たれた。
……そうだ。瑠衣子からは血が流れていない。黄色い液体が流れてきている。
「なに…これ。どういうこと…?」
「るいこっち…?」
「るいこさん?」
私たちの困惑の声も、倒れ込んだ瑠衣子には届かない。そんな時…
「安心してよ。僕の計画通りだからさ。」
菜七子さんが話し始めた。それは、私たちが想像できないような内容だった…
「……ここは…?どこだ?僕は04の部屋にいたはずなのに…」
さっきまで心君と一緒に04の部屋にいたはずなのに、気がつくと真っ暗な部屋に立っていた。
「誰かいないのかい?こころ君?」
いくら呼びかけても返事がない。部屋の中を探索しようにも暗すぎてできない。じっと待っていることしか出来なかった。
数分後…
「こんにちは、ななこ様。お元気ですか?」
部屋の照明がつき、目の前からカレンと……瑠衣子君が歩いてきた。
「るいこ君…?なんで君がここにいるんだい…?」
瑠衣子君は嫌な顔をしながら話し始めた。
「まあ、もうそろそろバレそうだったし、もういいかなって。」
「どういうことだい……?」
「そのままですよ。私がこのゲームの黒幕。いわば主催者です。」
「……そんな」
黒幕がいることはだいたい分かっていた。でもまさか、瑠衣子君が黒幕とは思わなかった。
「貴方はね、このゲームを盛り上げるために呼んだ狂人枠なんですよ。なのに更生なんかされたら盛り上がりに欠けるんですよね。」
「なんてことを言うんだ……。僕たちはみんな同じワルイコなはずだろ。君だって例外じゃない。」
瑠衣子君は笑顔で答える。
「そうかもしれませんね。…私は顔に感情は出るけれど、心ではなんとも思うことが出来ないんですよ。小さい頃のトラウマのせいで…。だからね……」
瑠衣子君はホログラムのカレンをコピーし、片方をホログラムのハンマーで潰した。ホログラムのはずなのに、悲鳴は聞こえるし、赤い液体は周りに飛び散る。
「実の母親のホログラムを壊しても、何も思わないんですよね。」
頭がこんがらがってくる。瑠衣子君が黒幕で、トラウマのせいで感情がなくて、カレンが実の母親で……
「まあ、何が言いたいかといいますとね…進藤 菜七子。あなたを殺します。」
「そんな…」
全身から汗が流れてくる。こんなに緊張しているのは初めてだ。コスプレをしている時も、殺人をしている時も、こんなに緊張はしなかった。
ここで殺されてはいけない。まだ、静君にも、心君にも恩返しができていない。2人のために働かなきゃ……
そんな時、私の頭に一つの案が浮かぶ。
「なぁ、るいこ君。僕も君たちに協力するよ。」
「……あなたがなんの役に立つんですか?」
「僕は催眠術を使うことができるんだ。便利だとは思わないかい?」
瑠衣子君は狂気的な笑みを浮かべる。感情がないなんて嘘みたいな笑顔を…
「……それもありだな。いいだろう、お前を利用してやる。」
「あ、ありがとう。」
「でもな、一つだけ条件がある。」
「なんだい…?」
「お前の能力を今から複製するから、お前を催眠術で洗脳させろ。」
「……そうしないと裏切られるかもしれないもんね…。わかったよ……」
瑠衣子君は僕の目の先に手をかざしてきて……
「るいこが黒幕だったなんて……。でも、ななこさんは洗脳されていたはずじゃ…」
「自分の能力だからね、対処法くらい知ってるんだよ。」
菜七子さんのおかげで、黒幕を特定することが出来た。あとは…本物の瑠衣子を倒すだけだ…
「ななこさん。あなたは立派ですね。」
「ありがとう。こころ君。みんな、一緒にるいこ君を倒そう!」
「ななこパイセン!協力するよ!」
「私も、こんなゲームを企てた人は許せませんからね。」
「ななこさん。頑張りましょう。」
私たちは、一致団結して、瑠衣子を探すことにした。でも……油断していた。いや、意識から外れていた。さっき菜七子さんが撃った、偽物の瑠衣子のことが……
「う゛……」
倒れていた偽物の瑠衣子が、菜七子さんを刺し殺した……
「ななこさん!」
「ななこパイセン!」
「ななこさん……」
声をかけた時にはもう遅かった…。菜七子さんは…もう……死んでいた……。
部屋中に声が響く。
「最後まで無駄なことをしやがって。ワルイコのくせに。」
その声は今までに聞いたことがある声だった……。小さい頃にハッキングをしてしまった、私たちに協力するためにゲームをハッキングしてくれていたはずの……
「るいこ…お前が、黒幕だったんだな……」
「最終戦の…スタートだ。」
―――第16話後編 黒幕は… 完―――
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