第14話 たとえ人殺しでも…
也一が消えてしばらく経った。
「みんな、4回戦は大丈夫だった?」
鈴・瑠衣子ペアが答える。
「るいこさんのおかげで簡単でした。」
「ハッキング出来たので、謎解きする必要がありませんでした。」
どうやら瑠衣子さんはハッキングが出来たらしい。
「それじゃあ、このゲームも終われるってこと?」
「…いや、もう少し時間かかりそうです。」
「そっか、ごめんね。」
「いえ、私にしかできないことなので……」
瑠衣子さんは黙々と作業を進めている。
「あの…しずさん。」
心さんが話しかけてきた。もう1人の私は心さんと面識があったらしいけど…
「その、色々話したいことがあって……」
心さんは4回戦であった出来事を話してくれた。心さんも菜七子さんも協力してくれるということ、菜七子さんが連れていかれてしまったということ。そして……
「ココロの…ノート?」
「はい。今まで亡くなった方々の過去が、あたかも本人が書いたかのような文章で書かれていました。」
「ということは…やえこさんのも……?」
「いえ…、やえこさんとなるちゃんの物はありませんでした。」
「そうなんですね…」
鳴と弥江子さんのはないらしい。理由はよく分からないけど、黒幕側にとって不都合なのかもしれない。
その時…
「ねぇ、パイセン。」
里紗に話しかけられた。
「セルスさんとエルナさんが戻ってこないんだけど…」
確かにそうだ。もう也一が消えて5分は経っている。4回戦は終わっているはずなのに…
「まさか…」
最悪な結末が頭に浮かぶ。それを肯定するかのように心さんの言葉が耳に届く。
「私が飛ばされる寸前に、またココロのノートが生成されたんです。おそらく…2枚……」
「そんな……」
セルスさんもエルナさんもとても優しい人達だった。不遇な能力を引いた私に元気をくれたり、明るく接してくれたり……
悲しんでいるのも束の間…目の前にカレンが現れた。
「みなさん、お久しぶりです。会いたかったですよ。……おや?」
カレンは辺りを見渡すと…
「随分減りましたね。悲しいです。」
「……は?」
「おや?どうしましたかしず様。」
怒りが込み上げて仕方がなかった。だって…鳴や弥江子さん達が死んだのは……
「お前らのせいでみんな死んだんだ!それなのに…なにも知らないみたいな口調して……」
カレンは私の言葉を遮り言い放った。
「人殺しが今更何言ってるんだよ。私を殺した時、どんな気持ちだった?家族とか、親友とか、その人たちの気持ちを考えたことがあったか?」
…何も言い返せなかった。いくらもう1人の私がやったことでも、私は私だ。私が人の命について語る権利なんか…ない……
「でも!パイセンは変わろうとしてる!」
「しずさんは泣いてる私のことを慰めてくれて…、自分だって辛いはずなのに……」
「しずちゃんは昔も今も、私の大切な人だから…」
「しずさんは、私のハッキングを褒めてくれました。」
目から一筋の涙が零れる。
「みんな……ありがとう!」
「…もういい。これから5回戦を始めるから、自習室に移動しなさい。」
私たちは半強制的に自習室に連れていかれる。これからまた、残酷なゲームが始まってしまう。でも、みんなとの絆も深まったし、もうギスギスすることなんて……ない。
―――第14話 たとえ人殺しでも… 完―――
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