番外編(ココロのノート) 瀬羅・桃谷 菜緒
俺の名前は瀬羅 雫(セラ シズク)。とは言っても、みんなの前では瀬羅としか名乗らない。
昔から雫という名前が嫌いだった。俺の見た目はどちらかと言うとかっこいい系、そんな俺に雫という名前は似合わないと思っていた。あいつに出会うまでは…
中学1年生の頃。俺は隣の席のやつに沢山話しかけられた。あんまり話しかけられるのが好きじゃなかった俺は適当にあしらっていたが、あまりにもしつこいのでつい言葉が出てしまった。
「しつこいんだよ。お前と仲良くする気は無い。」
これで嫌われた。そう思っていたのに…
「そんなの嫌っすよ。私は瀬羅さんと仲良くなりたいっす。」
「なんでそんなに俺にこだわる?」
「だって…」
ここでそいつは考えられないことを言う。でもそれが、俺にとって、とても嬉しい言葉だった。
「なんか瀬羅さん放っておけないんっすよ。」
「そうか…」
昔から一匹狼で、親が構ってくれなくて小学生の頃に酒を飲んでいた俺には、とても嬉しく、安心をくれる言葉だった。
「…わかったよ。友達になってやる。」
「嬉しいっす!」
これが俺と桃谷 菜緒との出会いだった。
…………………………………………………
私の名前は桃谷 菜緒。中学1年生。小学生の頃からみんなから優しいと言われてきたけど、1つ思うところがあった。
みんなから優しいと言われるが故に、親友と呼べる存在がいなかった。
中学校で親友を作ろうと思った私は、この出会いがかけがえのないものになるとも知らずに隣の席の子に話しかける。
彼女の名前は瀬羅。下の名前は自己紹介の時も話してくれなかった。
「瀬羅さん!私と友達になってほしいっす!」
何回も話しかけるけど、適当に返事をされてしまう。でも、私は諦めずに話しかけ続けた。その結果…
「…わかったよ。友達になってやる。」
遂に友達になって貰えた。その日は嬉しくて寝れなかった。
時は過ぎ高校2年生の春。
瀬羅と過ごしているうちに段々と瀬羅の私に対する気持ちが分かってきた。
恐らくだけど……瀬羅は私のことが好きだ。恋愛的な意味で。
別に嫌ではなかった。なんなら私も瀬羅のことは好きだ。でも、この気持ちが恋愛かどうか分からなかったから、1つ心に決めていたことがあった。
「瀬羅が告白してきてくれたら、付き合おう。」
…………………………………………………
菜緒と過ごしてきて分かったことがある。俺は菜緒のことが好きだ。恋愛的な意味で。
でも、女同士だし、気軽に告白することは出来ない。だから俺は1つ心に決めていたことがあった。
「学園祭の時、俺はなおに告白する。」
学園祭の日、俺は菜緒を呼び出す。
屋上で2人きりになった時、俺は緊張する気持ちを抑えて言葉を出す。
「その…、実は俺、菜緒のことが………」
急に、意識が朦朧としてきた。目の前にいる菜緒も倒れそうになっていた。なんでだ。そういえば…ここに来る前、菜緒と一緒に1年の出店で……たこ焼きを……買っ…………た……
目が覚めると、俺はよく分からない教室にいた。周りには菜緒も含めて女子が19人。状況が掴めなかった。
…………………………………………………
デスゲームが始まってしばらく経ち、俺は今、菜緒と菜七子と保健室に居た。
そんな時また放送がなった。菜七子が様子を見てくると言い部屋を出ていく。その時…
「その…しーちゃん。」
「どうした?」
「実は私、昔無免許運転したことがあって…」
「……」
予想外のことだったが、菜緒のことならおそらく事情があったのだろう。
「そうか。」
「引かないんすか?」
「引かねえよ。……俺だって、昔はグレてて未成年飲酒してたからな…。」
「そうっすか。」
「なおこそ引かないんだな。」
「しーちゃんの事だし、なんか事情があったんすよね?そう思えば引くことなんてないっす。」
「ありがとうな。」
部屋に菜七子が戻ってくると倉庫で鳴が菜緒を呼んでいたと言った。菜緒はそれを聞き倉庫に向かう。俺は菜七子と一緒に改めて保健室の探索を………
…………………………………………………
倉庫に着くと鳴ちゃんが居た。
「なんか用っすか?」
「え?呼んでないよ?」
「えー。おかしいっすねぇ」
用がないらしいので保健室に戻ることにした。保健室に戻ると……そこには………
ベッドの上に寝転がってる瀬羅がいた。
「しーちゃん眠いんすか?」
返事がない。寝てるのかな。そんなことを思いながら顔を近づける。するとそこには……
呼吸をしていない瀬羅がいた。
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」
私は急いで一緒にいたであろう菜七子ちゃんを探しに行く。でも見つからない。保健室に戻ってくると誰かの声が聞こえた。
「殺されたのはこいつだったのか…。しずじゃなくて良かった。」
怒りが収まらなかった。良かった…だと。瀬羅は殺されたんだ。このゲームの参加者の誰かに……
気がつくと私はそこにいた弥江子さんの頭部を鈍器で殴っていた。
その後、何が起きたのかあんまり覚えていない。瀬羅を必死に呼び掛けたり、瀬羅の為に怒ったり、泣いたり、そんなことをした気もした。
話し合いも終わりに近づき、だんだんと落ち着いてきた。今回は江南ちゃんが追放される流れらしい。そんなことを思っていると…
「分かったよ…。もういい…。」
そう言うと共に私の方に全力で走ってきた。気づいた時にはもう遅い。私は江南ちゃんが手に持っていたサバイバルナイフで……何回も…何回も……刺さ…………れ………………
意識が朦朧とする中、目の前に、しーちゃんがいるような気がした。
「しーちゃん。死んだんじゃ……」
「らしいな。でも、なおも死にそうじゃんか。」
「そうっすね……。もうほぼ意識ないっすよ。目の前にしーちゃんがいるように見えてるし…」
「なあ、なお。ひとつ言いたいことがあるんだ。」
「なんすか?」
その言葉を待っていた。高校2年生の時からずっと、ずっと、待っていた。できれば、もっと早く言ってくれれば、違う結末が見えたかもしれないのに……
「菜緒。俺はお前が大好きだ。」
「私もっすよ。雫。」
―――番外編 瀬羅・桃谷 菜緒 完―――
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