第16話 じゃんけん

「ああ、マジで疲れた〜」


「お疲れ様……ていうか、あなたどんだけ泳ぐの好きなのよ、そんなに泳ぐの好きなならあそこにある五十メートルのプールで泳いでくればいいのに」


「あはは! 一年ぶりのプールにはしゃいじまった!」


 俺たちは先ほどのプールを堪能して、レジャーシートに座っていた。

 レジャーシートに座っている最中、男女問わず通りかかる人が、俺と同じレジャーシートに座る人たちを凝視する。


 それはそうだ、クラスのアイドルである恵花さん、高崎さん。

 そして、そんな二人に決して劣ることのない、渚ちゃん。


 最後に俺の高校一番かっこいいと言われている王子様である幼馴染。

 これだけのメンツが揃っていて、凝視されない方が不思議なぐらいだ。


 今思ったんだけど、俺かなり浮いてね?


「お前ら次どこいく?」

「うーん、そうね、流れるプールとかはどうかしら?」

「ああ、わたし行きたいかもー!!」


 恵花さんの提案で、次の行き先が流れるプールに決まりそうだった時、渚ちゃんがもう一つ案を出した。


「それなら! 流れるプールの真ん中にあるウォータースライダーはどうですか?」


 このプールの流れるプールは大きく円を書くように出来ていて、その円の真ん中にはウォータースライダーが設置されている。


「いいね! それじゃあウォータースライダー早速行くか!! 純人!!」


 蓮はウォータースライダーがとても楽しみでたまらない様子で俺の肩を叩いた。

 しかし、俺はそんな感情にはとてもじゃないが慣れなかった。


 俺はウォータースライダー。

 いや、絶叫系全般が苦手なのだ。


「なあ、それって俺も行かなきゃダメか?」

「何言ってんだ、純人! お前も行かなきゃダメだ!」


「そうですよ〜純人お兄ちゃんも一緒に行きましょ!」

「う、でもな……」

 俺が答えを渋っていると。

「あなたもしかして、絶叫系苦手なのかしら?」


 恵花さんが俺に核心をつく発言をしてきた。

「だったらなんだよ……」

「いや、可愛いなって思って!」


「そ、そういうこといきなりいうなよ」

「うふふ!」


「そ、それに! ウォータースライダー苦手はあなたが滑っている時の顔を想像したら、なんだか笑いが込み上げてくるわ!」

「恵花さん性格悪いな」


「えへへ!」

 恵花さんは俺がウォータースライダーにびびる様子を見てとても楽しんでいる様子だった。


「まあ、大丈夫ですって! ワタシがついてますから〜! ワタシが怖くないようにお兄ちゃんの手握っててあげますよ!」


「そうだよっ、間遠くん! ウォータースライダーも案外楽しいよ!」


 俺が高崎さんと渚ちゃんにそんなことを言われて、考えていると。

「あ、それじゃあお兄ちゃん! ウォータースライダーが嫌なら! あそこにあるジェットコースターに乗りましょう!」


「は? 渚ちゃん、ここプールだよ……プールにジェットコースターなんてあるわけないじゃ——あった!?」  


 どうせ渚ちゃんの冗談かと思って、彼女の指さすところを笑いながら見ると、そこにはマジでジェットコースターが設置されていて俺は言葉が出なくなる。


 なぜだ……。

 どうしてだ……。

 ここは遊園地でもないんだぞ。

 どうしてここにジェットコースターが。


「いや、ジェットコースターは流石に、俺あれだけは無理だ」

「ええ〜じゃあ、ウォータースライダー行きましょ? 純人お兄ちゃん!」


「わ、わかった……さっさと行こう!」


 俺はこのまま答えを渋っていると、渚ちゃんにジェットコースターに連れて行かれると思い、ウォータースライダーに行くことを選択する。


 なんとなく俺の中では、ジェットコースターよりもウォータースライダの方が怖くなさそうだったから。


「キャ〜〜〜〜!!!」


 俺はウォータースライダーにできる長蛇の列に並びつつ、同じくウォータースライダーを体験している人の楽しさや恐怖の混じった叫びを聞いて戦慄する。 

 さ、最悪だ。


「さてと! それじゃあ誰と誰が一緒に滑る今決めちゃおうか!!」

「そうね、ここは順当にチーム分けじゃんけんで決めていいんじゃない?」


 高崎さんの提案に恵花さんが答え、今にもチーム分けじゃんけんによるウォータースライダーのチーム分けが始まりそうだったので俺が一つ提案する。


「あ、あの……俺と蓮が一緒に滑るから、ジャンケンで決めなくてもいいんじゃない?」


「お前……どんだけ俺とすべりたいんだ……これが幼馴染の絆か……これが、これがっ〜! 幼馴染の絆か〜!!」


 俺の耳元で蓮が絆が絆がと、泣きながら嬉しそうに叫んでいるが俺はそれをとりあえず無視した。

「え〜それじなあ面白くないじゃないですか!」

「いや、面白くないとかじゃなくて……その、滑る時、み、密着するじゃん……体……」


 俺が照れながらそういうと、渚ちゃんはニヤニヤして言った。


「うふふ、ワタシは別に純人お兄ちゃんになら体のどこを触られても構いませんよ〜!」

「はい、あんたは一回だまりなさい」


 渚ちゃんの口を後ろから恵花さんが塞ぐ。


「い゛きなりなにす゛るんですか〜」


 渚ちゃんは急に恵花さんに口を塞がれ何かを言っていたが俺には聞き取れなかった。


「でも確かに、じゃんけんで滑るチームを決めるのは面白いかも!」


「確かにな! それじゃあジャンケンするか!!」


 ジャンケンで滑るチームを決める案に高崎さんと蓮も賛同したことにより、俺たちはじゃんけんすることに。


「それじゃあ行くぞ!!」


 俺たちは、互いに向かい合い、じゃんけんで何を出そうか迷っていると、蓮がそう言ってじゃんけんを開始しようという旨を伝えてきた。 

 それを聞いて俺たちはチーム分けじゃんけんの王道の掛け声を呟いた。


「グーとパーで別れましょう!」


「グッパで別れ!!」


「チーム分け分けじゃんけんポン!!」


 すると、みんながみんな別の掛け声をし始めたので混乱してじゃんけんどころじゃなくなる。


「ちょっと! なによ、グッパで別れって! グーとパーで別れましょうでしょ! 普通!」

「いやいや、奈々! 掛け声は普通グッパで別れだろう! な? 純人、渚!」


「俺の小学校は、グッパで別れだったぞが主流だったぞ、蓮と渚ちゃんもそうだよね?」


「ですよね! 奈々お姉ちゃんの掛け声がおかしいんじゃないですか?」


 俺たちはチーム分けじゃんけんについての論争を始める。

 まあチーム分けじゃんけんの掛け声の種類はその地域や県によって違うし、今議論したって何になるって話だが。


「私の掛け声がおかしいはずないわよ! ねえ、穂乃果あなたもグッとパーで別れましょう! でしょ?」


「わたしはチーム分け分けじゃんけんポンって言ったよ!」


 俺たちは掛け声がああだここだと言ってる間にもうすぐ俺たちの番になることに気付いて、渚ちゃんが焦ったように呟く。


「もうなんでもいいから、さっさとじゃんけんしましょうよ〜! このままだと順番がきちゃいます!!」


「それもそうね!」


 このまま議論を続けてもらちが開かないので恵花さんの使っていた掛け声、グッとパーで別れましょう! が採用され、俺たちはその掛け声に沿ってじゃんけんをした。

 結果は、俺、恵花さん。


 蓮、高崎さん、渚ちゃんという結果になった。

 そしてそのあとさらにじゃんけんをし、俺と恵花さんが三人よりも先に滑ることになった。


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