3. マコト①

 ──目が覚めると、ずいぶん懐かしい木目の天井が視界に入った。

 意識は未だ夢うつつで、まどろみの中にいる。

まことー! まだ寝てるのー?」

 唐突に声を掛けられ、私はびっくりして飛び起きた。


 ──キョロキョロと辺りを見回す。

 此処は確かに自分の部屋だ。「遅刻するよー」と扉をノックしながら呼び掛けているのは、聞き慣れたママの声。

 ……いや、そんな訳がない。昨日は東京にいた。

 昨日はKanadeとして、最後のステージに立った。約二時間のライブを終えた後、移動車に乗り一人暮らしのマンションに向かってもらっていた。

 ──もう深夜だ。心身共に疲れ果てている。眠気に身を任せ、目を閉じたところまでは覚えている。

 それがなぜだか、東京からなら飛行機移動しなければならないような遠く離れた場所にある、実家の自室で目を覚ましたわけだ。

 とりあえず、よろよろと立ち上がり部屋の扉を開くと、目の前にはママが立っている。

「おはよう。急いで準備しなきゃ学校遅れちゃうよ。──真が寝坊なんて珍しいね」

「……学校?」

「そうよ。──今日が北高最後の登校でしょう?」

 ──最後? 思わず自室に戻り、スマホを探す。すぐに見つけた。が、スマホは使い慣れたものではなかった。

「なんで……」

 二年以上前に機種変更している。

 ──今、私の目の前にあるのは、機種変更する前のものだ。

 とっさに部屋のカレンダーを確認する。

 【2022年3月】


 ──日付は今から三年前を示している。

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