## パート8:新たな始まり

学園に戻った俺たちは、校長室で全てを報告した。アルバート校長とルーク館長は、驚きと感嘆の表情で聞いていた。


「クリスタル家の呪いが解け、レインの封印も解かれた...」校長が感嘆の声で言った。「千年の時を経て、ついに全てが解決したというわけか」


「はい」エリザベートが頷いた。「私たちクリスタル家は、もう感情を抑える必要はありません」


「そして、灰崎くん」校長が俺を見つめた。「君は本当に...レインの力を受け継いだのか?」


「はい」俺は静かに言った。「レインの記憶と力は確かに俺の中にありますが、俺は俺のままです」


「二つの魂が一つになったというわけか」館長が驚きの表情で言った。「前代未聞だな」


「これからどうするんだ?」校長が尋ねた。「そんな強大な力を持っていれば、君たちは学園にいる必要はないかもしれないな」


「いいえ」俺はきっぱりと言った。「僕たちはここで学び続けたいです。まだ知らないことがたくさんありますし、何より...ここには大切な友人たちがいます」


校長は微笑んだ。「そう言ってくれるとありがたい。君たちのような生徒がいることは、学園の誇りだ」


報告を終え、特別寮に戻った五人は、ラウンジに集まった。ノアも窓辺に座り、満足げに見つめていた。


「ついに全て終わったね」俺は深いため息をついた。


「ええ」エリザベートが微笑んだ。「でも、これは終わりじゃなくて、始まりよ」


「そうね」リリアが頷いた。「これからが本当の人生」


「ところで、零」シャーロットが真剣な表情で尋ねた。「あなたの記憶...レインのことを、どれくらい覚えているの?」


「全てだよ」俺は静かに答えた。「千年前のこと、エレナとの愛、そして封印されるまでの出来事。全て鮮明に覚えている」


「それは...どんな感じ?」アリアが好奇心いっぱいの表情で尋ねた。


「不思議な感じだね」俺は考え込みながら言った。「まるで長い映画を見たような...でも同時に、自分自身の記憶でもある。レインの感情も理解できる。彼がエレナをどれほど愛していたか...」


「それで」リリアが少し心配そうに言った。「私たちのことは...」


「心配しないで」俺は優しく微笑んだ。「俺の気持ちは変わらない。むしろ、より強くなった。レインは一人を愛したが、俺は四人を愛している。それが俺たちの違いだ」


四人の顔がほっとした表情に変わった。


「そして」俺は続けた。「俺たちの力は、これからどう使うべきか考えなきゃならない」


「そうね」エリザベートが真剣に頷いた。「強大な力は、大きな責任を伴うわ」


「人々を守るために使おう」俺は決意を込めて言った。「苦しんでいる人を助け、危険から守る。それが俺たちの使命だと思う」


「素敵な考えね」アリアが嬉しそうに言った。


「それじゃあ」リリアが立ち上がった。「今夜は祝杯を上げましょう!私たちの冒険の成功と、新しい未来のために!」


五人は特別寮の屋上でパーティーを開いた。美味しい料理と飲み物を囲み、星空の下で語り合う。かつての敵対関係は今や深い絆と愛に変わっていた。


「零」エリザベートが俺の隣に座った。「あなたに出会えて本当に良かった」


「俺も」俺は彼女の銀色の髪を優しく撫でた。「運命に感謝してる」


リリア、シャーロット、アリアも加わり、五人は夜更けまで語り合った。未来の計画、夢、そして何より、これからも一緒に過ごす日々について。


翌日、俺はトムに全てを打ち明けた。彼は驚きながらも、真っ直ぐな瞳で俺を見つめた。


「零、お前...本当にすごいことになったな」彼は感嘆の声で言った。


「ああ」俺は照れながら頷いた。「信じられないような話だよな」


「でも」トムは真剣な表情になった。「お前は変わってない。それが一番嬉しいよ」


「ありがとう、トム」俺は親友の肩を叩いた。「これからもよろしく」


「もちろんだ!」トムは明るく笑った。「ただし、美少女たちを独り占めするのはずるいぞ!」


二人は笑い合い、かけがえのない友情を確かめ合った。


一方、一年生のアイシャも俺の変化に気づいていた。


「先輩...何か変わりましたね」彼女が放課後、俺に声をかけてきた。


「そうかな?」俺は微笑んだ。


「はい」彼女は真剣な瞳で俺を見つめた。「でも、優しさは変わっていません。だから私、これからも先輩を応援します!」


「ありがとう、アイシャ」俺は彼女の頭を優しく撫でた。「君も頑張れよ」


「はい!」彼女は元気よく頷いた。「いつか先輩のような強い魔法使いになります!」


時は流れ、学園の生活は続いていった。クリスタルローズのメンバーと俺の関係は公になり、多くの生徒たちの間で話題となった。だが、次第にそれも当たり前のこととして受け入れられていった。


週末にはトムやアイシャと過ごし、平日は学業と特訓に励む。時々、五人で遠征に出かけ、困っている人々を助けることもあった。俺たちの絆は日に日に深まり、幸せな日々が続いた。


ある夜、特別寮のバルコニーで、俺とエリザベートは星空を見上げていた。


「零」彼女が静かに言った。「将来のことを考えてるの」


「将来?」


「ええ」彼女はまっすぐ俺を見つめた。「卒業後...私たちはどうなるのかしら」


「それは...」俺は少し考え、そして微笑んだ。「一緒にいるさ。みんなで」


「家族として?」彼女の瞳に期待が浮かんだ。


「ああ」俺は頷いた。「家族として」


エリザベートの顔に幸せな表情が広がった。「嬉しい...」


「俺たちの物語はまだ始まったばかりだ」俺は彼女を抱きしめながら言った。「これからもっと素晴らしい冒険が待っているよ」


星空の下、二人は静かに寄り添った。遠い昔、レインとエレナが交わした愛の誓い。それは今、零とエリザベート、そしてリリア、シャーロット、アリアへと受け継がれていた。


かつて「魔力ゼロ」と蔑まれた落第魔法使いは、今や「禁断魔法の使い手」として無双の道を歩み、美少女エリートたちと共に新たな伝説を紡いでいく。


この物語は終わりではなく、永遠に続く愛と冒険の始まりなのだ。

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