第8話

今日はいつもと違う場所に回収に行くことになった。

普段オレが担当してるのは街中とか病院とか、まぁ人が普通に生活してる場所。

でも今日の目的地は、山奥の古びた神社。

「……なんか、やな感じすんな」

オレはローブをはためかせながら、朽ちかけた鳥居の前に降り立つ。

あちこち苔むしてて、木々が鬱蒼と生い茂り、夕方しかも日が落ちる寸前。

そのせいもあって雰囲気は完全にホラー。

「マジかよ、こんなとこで死ぬなよ……」

ボヤきながら境内に足を踏み入れる。

すでに、ここに魂がいるのはわかってる。

ただ…なんか、妙に不安定な気配がするんだよな。

普通の魂ってのは、死んだ直後は多少フラついてても、ある程度時間が経てば落ち着くもんだ。

でも、ここにいるヤツは……なんつーか、グラグラしてる。

まるで、こっちに来るのを拒んでるみてぇに。

「……おい、いるのは分かってんぞ」

境内の奥、崩れかけた拝殿の前。

そこに、一つの人影が立っていた。

……女か?細身のシルエット。

けど、その姿はぼんやりと揺れていて、普通の魂とはどこか違う。

「なぁ、お前……」

オレが声をかけた瞬間――。


ぞわっと、空気が変わった。

次の瞬間、女の周りに黒い靄が広がり始める。

やべぇ。

コイツ、悪霊になりかけてる。

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