第18話
眠りから、ゆっくり覚醒した。
温もりが心地よい。
昨夜はあれから、肌を重ねたまま眠ってしまったらしい。
誰かと寄り添って眠るのがこんなに幸せだということを、美月は今まで知らなかった。
ベッドが軋み、煌が起きたのがわかった。
温もりが離れ、肌に触れた空気が冷たく感じられた。
カーテンの隙間から覗く空は、ようやく白み始めたばかり。
「おはようございます。もうお出かけですか?」
「ああ。あなたはまだ休んでいろ」
起き上がろうとした美月は、自分が何も身につけていないことに気づいて動けなくなった。
そんな美月の肩を押し戻し、煌が布団を引き上げた。
そして、額に唇を押し当て、
「行ってくる」
そう言い残して部屋を出た。
また「いってらっしゃい」すら言いそびれてしまった。
(だって、いきなり額に接吻なさるから)
嬉しいような、恥ずかしいような。
美月は火照る頬を両手で覆った。
そのわずかな動きで、体のあちこちが痛んで息を呑む。
けれど、その痛みをつらいとは思わなかった。
痛いし恥ずかしかったけれど、それ以上に、幸せだと感じていた。
(旦那さまが求めてくださって、嬉しかったのだわ)
そう自覚して、さらに頬が熱くなる。
煌が恋しい。
ずっと触れられて、あの温もり包まれていたかった。
今、隣にいないのが、寂しい。
(どうして?)
不思議だ。
昨日までは、離れているのが当たり前だったのに。
(わたしは、どうかしてしまったの?)
とまどいながら、枕に顔をうずめる。
ふわりと香る、煌の残り香。
シーツに残るわずかな温もり。
愛しくて、恋しくて……どうしてだろう、泣きそうになった。
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