部隊編成
改めて整理しよう。
僕がアヤシマ奪還作戦において、多方面からの一斉攻略を訴えたのは、『終わりの獣』のメンバーであるみんながここに集結したからだ。
僕の見立てでは、『夜光蛇』とその仲間たちだけの実力では、クレハさん、それに〝三姉妹〟のカグヤさん、イツハさんぐらいでもなければ、魔物たちに囲まれればその時点で負ける可能性もある。
そんな状態で戦力を分散するなんて、普通に考えれば有り得ない選択ではある。
ただ、そこに『終わりの獣』のメンバーたちが加わるとなれば、まあ話は変わってくる。
元々の戦力に比べれば大幅に衰えているとは言っても、ぱっと見た感じだとあまり能力を使わなくてもルベラとかの一線級相手でも戦えるだろうし、本気で戦えばそれこそ悪魔にも負けないだろうという程度の力はあるのだ。
そんな子たちがいるのにもたもたとやり続ける理由はないわけで、さっさと攻めてしまった方がいい。
なので、メインの戦闘は『終わりの獣』のメンバーが対応し、他のメンバーが雑魚処理や拠点の構築部隊と、その護衛なんかを担う冒険者を連れていくことで、アヤシマ全域への侵攻速度を一気に短縮する。
そうして僕らが一斉にあちこちから侵攻することで、背後に潜んでいる何者かを引きずり出してやろう、というのが僕らの狙いだ。
邪神が何を考えて下級神であり、この地の神であるタマヨリとやらを利用しようとしているのかは知らないけど、これ以上邪神優勢に傾かせるのも面白くないし。
「――じゃあ、アンタたちを分けるのは五つの部隊。この西チームとは別に、南西と南東、北西と北東、一番東に一部隊ずつ。という形でいく。そうだね?」
「うん。一番東は僕とルシィ、それにクリスティーナ。ヴィムとジンは北西部隊、リーナはハワードと北東へ。ドラクが南西部隊、エリカとルフィナが南東部隊を率いてもらう」
「えーっ、リーナお兄様と一緒がいいのにー」
「ワガママを言うな」
「ぶー」
クレハさんに続いて僕が『終わりの獣』の面々を振り分ける。
この振り分けはそれぞれの能力を考えての組み合わせだ。
というのも、『終わりの獣』の中でも、最も広範囲かつ無差別に攻撃対象にしてしまうという特性を持つのが、クリスティーナとエリカだ。
あの子たちは単独制圧より広域殲滅型の能力に特化してしまっているので、あまり派手に暴れると『夜光蛇』のメンバーや冒険者たちを巻き込みかねない。なので、そういう場面をサポートできる補佐をつけている。
ヴィムとジンを組ませたのは、ヴィムが上手くジンをコントロールできること。
なんだかんだでヴィムは年上としての自覚みたいなものがあるから、面倒見がいいしね。
一方で、リーナとハワードを組ませたのは、ハワードの解剖欲を満たすためというのもあるけれど、何よりリーナが派手に暴れまわると周りが見えなくなるからだ。そういう時、フォローができる人材としてハワードをつける形にした。
そして一人きりなのはドラク。
見た目は「喧嘩上等」とか言い出したり、ビキビキと青筋立てて顔の上とか横とかに「!?」とか表記されちゃうような感じなんだけど、実は純粋な青年である。
ドラクは単体との戦いはもちろん、その気になれば範囲殲滅もできるし、命令を素直に聞いてくれるから単独だ。
そんな僕の采配の横で、クレハさんもカグヤさんと話し合って『夜光蛇』のメンバーと冒険者の割り振りを決めている。
「――ソウ。アンタのとこには誰もつけなくていいんだね?」
「巻き込む可能性があるからね。というか、それが不要だってことぐらい、理解しているでしょ?」
ここに至るまでに僕が見せてきた【魔砲】やら何やらを見て、それでも僕らに追加の人員を増やす必要があるのかと言下に問えば、クレハさんは苦笑した。
まあ、彼女とて理解はしているだろう。
「東側――つまり僕らの部隊は、あくまでも魔物をおびき寄せ、他の部隊にかかる圧力を減らすための陽動部隊だからね。町や村落があったっていうポイントは通らないで、ただただ注目を集めるだけだしね」
「それは分かっているんだけどねぇ。危険だよ?」
「退屈するより余程マシだよ」
敢えて第三勢力感を増すために不敵な態度を取ってひらひらと手を振ってみれば、何名かの冒険者グループのリーダーだとかがむっとした表情を浮かべた。
戦力を減らすつもりはないから絡まないでね。
ヴィム、ちゃんとリーナ抑えて。
「そんなことより、本陣はここ、クレハさんやカグヤさんがいるこの部隊になるからね。ここの戦力確保を優先してくれればいい。最悪、拠点構築が難しいなら指定ポイントを吹き飛ばして更地にしておくぐらい、ウチの子たちならできるから」
「やめとくれ……と、言いたいところではあるんだけどね。実際、そうしてもらって先に魔物を討伐してから復興に入った方が、色々と安全ではあるんだよねぇ……」
「ま、それはそうだろうけどね。どっちにするかは僕じゃなくてキミたちが決めてくれればいいよ」
魔物がいなければ、あとは道を切り拓きながらゆっくりと復興を進めていけばいいんだし。
絶滅させるのは難しいかもだけど、圧力が減ればやりようはいくらでもあるだろう。
とは言え、中途半端な復興をしても意味がない。
この地を奪還した結果、邪神の軍勢が挙って取り返そうとするかもしれないしね。
だからこそここを奪還した後、僕らもしばらくは転々と邪神の勢力圏を根絶やしにしていく予定ではある。
きっと『人族同盟』の方は上手くラトが浸透してくれているだろうし、あっちはある程度任せておけばいいんじゃないかな。
破滅して血の涙を流したり、野望が叶うと喜んだ瞬間に梯子を外されて絶望しながら死んでいったり、仲間同士なのに殺し合ったりとか、なんかそういう大事件とか起きるかもしれないけど……ま、しょうがないね。
生き残りたければ頑張れってことで。
その程度で滅ぶ種族なら滅んでしまうのも仕方のないことだし。
個人的には、そんなどうでもいいことよりも希少種族とかに会ってみたいんだよね。
なんかこの世界、色々いるらしいからさ。
「あるじさまあるじさま」
「うん?」
「クリスティーナと一緒なんです?」
「おーっほっほっほっほっ! お呼びになって!?」
「あ、うん。わたしと一緒だって聞いたから」
「えぇ、そうですわね! だから安心なさっていただいてよろしくってよ! わたくしと愛しき御方が一緒ならば、大船どころか豪華客船でしてよ!」
ルシィとクリスティーナ、なんか仲が良いというか、拠点で交流があったみたいなんだよなぁ。
どうもニグ様曰く、女性陣側はクリスティーナを筆頭にルシィを構い倒していたらしい。
なんだかんだでリーナやルフィナ、エリカまでもがルシィとはそれなりに親しくなったのだとか。
一番意外なのはエリカ……に思えたんだけど、エリカだもんね。
僕がラノベ沼に落としてしまった子だもの。
そりゃエルフなんて存在がいたらお近づきになりたくもなるだろう。
今もちらっと見てみたら、なんかクレハさんたちの耳とか尻尾とか見て目を輝かせながらうずうずしてる感じだし。
……まあ、その横でハワードもうずうずしてるんだけどさ。
別の意味で。
「ところで、クリスティーナ」
「まあ、なんでございましょう?」
「そのドレスにその扇子ってどうかと思うんだけど」
「おーっほっほっほっ! 甘いですわ、愛しの御方! わたくしの高貴過ぎる空気に当てられないよう配慮しているからこそ、こうしたユーモアに富んだ扇子を愛用することで親近感を演出しているのですわーっ!」
ユーモア、ねぇ……。
その扇子に書かれているの、『とんだおきゃんを言いやがらぁ!』とか達筆で書いてあるんだけど、ナニソレ。おきゃん?
「というか、クリスティーナ。それ、ここにいる僕ら以外、全員読めないからね?」
「おーっほっほっほっ! 誤算でしたわーっ!」
誤算なんだ、それ。
そんなくだらない話をしている内に、クレハさん側のカグヤさんを筆頭にした調整は完了したらしい。
僕らはそれぞれの拠点構築の作戦ポイントなんかの確認を含めた会議を続け、いよいよ明日から侵攻作戦が始まることになったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます