イタズラその2

「むむむ~」


 テルルは悩んでいた。朝チュンと呼ばれる方法でユメを驚かせる予定だったのに、初日で失敗してしまった。初日で失敗してしまっては、翌日以降同じ方法で驚かせることは難しい。

 そもそも初日以降は二人で一緒に寝るようになってしまったので、イタズラのしようがなくなった。もうこのイタズラはボツとするしか無いだろう。


「まあ、失敗しちゃった物は仕方がないよね! 次に進むぞ~!」


 ここで下手に粘らずに次の案に進むのがテルルの良いところ。さて、次のイタズラはどんなものだろう?


「ほうほう。ほ~! これなら簡単そう! やってみよう!!」



 翌日の朝。テルルは起き上がろうとしたユメを邪魔するようにぎゅーっと掴んで言った。


「捕まえた~!」


「?!?!」


 抱き着いて離さないという何のひねりもないイタズラ。だが、シンプルだからこそちゃんと効果があったようで、ユメは凄く驚いた。ユメが驚く顔を見て、テルルは「成功だ~!」と嬉しくなった。


「あ、あの? テルルちゃん?」


「むふふ~。今日は逃がさないよ~!」


「か、可愛い過ぎる……!!」


 ユメはテルルの可愛さにあてられてワナワナと震え始めた。効果抜群のようだ。


「今日はずっとこうしてる~!」


 ユメのビックリする顔を見れて嬉しくなったテルルは、思わず調子に乗ってしまった。ユメを抱きしめる力を強くして、ユメにぴったりとくっ付いたのだ。尊すぎる!


 しかしこの行動をテルルは後悔することになる。何故ならこれがトドメとなって、ユメの中で何かが壊れたからだ。


「て、テルルちゃん!!!」


「ふえ?」


 今度はユメがテルルを抱きしめた。手で身体を包み込んで、足で足を挟み込んで、決して離すまいというように抱き着いたのだ。


「そうだね、今日はずっーとこうしてようね♪」


「ふへへ~! うん、ずっとくっ付いてる!」



 そのまま30分が経過した。



「あの~、ユメちゃん! そろそろ起きない?」


「えっ? 私はもうちょっとこうしてたいなー♪」


 そう言ってユメはテルルのほっぺをぷにぷにと触った。


「ふにゅ~」



 さらに30分経った。



「あ、あの~? そろそろ起きるよ!」


「えー? やだ、もうちょっとこうしてるー!」


「あれっ?! 命令が通らない?! しかもなんかキャラが変わってない?!」


 おかしい、チャームをかけた相手は命令に従うはずなのに。何故か拒否されるのだけど?!

 ひょっとして朝一番に言った『今日はずっとこうしてる~!』という命令が優先されている?! そんな仕様あったっけ?!

 テルルはとても混乱していた。



 さらに30分経った。



「そろそろお腹空いたし起きよっか?」


「な、長かった……。うん、起きる~!」


 二人が起きた時、ユメの肌が心なしか艶々ツヤツヤしていたのに対し、テルルは少しだけやつれているように見えたとか。


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