第15話 激変 ♂
詩桜里とやり直し。
とは言っても、関係はここ最近と変わらなかった。
僕は研究に没頭し、詩桜里も仕事に励む。
たまに合間を見て一緒に食事をする。
でも、詩桜里はそんな仕事で忙しい中でも家の事など、身の回りの世話を率先的にこなしてくれた。
僕としては無理しなくて良いと、言っているのだけれど、詩桜里からすると、こんな事位では償いの内に入らないからと言われ。
本人はとても嬉しそうだったので好きにさせた。
そこから一年、ある事件が起きた。
詩穂里の父親の不祥事である。
原因は不倫と言うよりは、権力を傘に強引に関係を迫ったらしい。それこそ詩桜里より年下の社員に手を出しそれが暴露された。
他ならぬ身内の詩桜里の手によって。
詩桜里の激怒っぷりは、それこそ詩穂さん以上で自分の父親である人を徹底的に追い込んだ。
それこそ情け容赦無く、周りがやり過ぎだと諌める位に。
そんな詩桜里は泣きながら僕に弱音をこぼした。
「私の中にはやっぱり裏切り者の汚らわしい血が入っている。父娘共々どうしょうもないクズでごめんなさい」と。
詩桜里とすればそれこそ自分が再度僕を裏切ってしまった心境だったようだ。
鏡のように自分の醜さを見せつけられた。
そんなふうにも言っていた。
詩穂さんの方は、逆に詩桜里が烈火の如く怒りを露わにしたので、逆に拍子抜けしたと言った様子だったけど。長年連れ添ったパートナーの裏切りは心に堪えたようで、そのまま騒ぎの責任を取る名目で社長を辞任し、後を詩桜里に譲った。
そうなると詩桜里の忙しさは僕の比ではなく、こちらにも滞在出来なくなり、一度日本に戻る事になった。
「宏人君。一年だけ待って欲しい」
そう言って日本に帰ると、瞬く間に社内派閥を把握すると、会社の推進事業として僕の研究の派生でもある。新世代AI開発を主軸とした部署を立ち上げ、僕の所属していた研究チームごと買収し、日本に研究ラボを設立。当然のごとく僕も招集された。
ただ一部で会社の私物化を指摘されたが、それを長期に渡る事業プランと収益予測で黙らせてしまった。
僕も事前に計画は聞かされていたけど、本当に実現させるとは思っていなかった。
出来たとしても、もっと時間が掛かると思っていた。けれど詩桜里は本当に一年でやってのけた。
とんでもないバイタリティと行動力。
しかも原動力が「宏人君と一緒に居たかったから頑張った」と言われてしまえば、僕としては返す言葉が無かった。
結局、そんな詩桜里だからこそ僕は必要だと判断した。
日本に帰国するタイミングで、僕は詩桜里にプロポーズをした。
色々と条件付きだったけど。
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