第21話 初回ログインボーナスみたいなヤツ
「どうするんですか課長」
「では準備は良さそうですね。
マジか……。
自分に返事する
というのも、どういうわけか普段とは違うタイミングでダンジョンにやって来た澄川トウヤをルリが捕まえた。片腕にしがみつきながら「ダンジョン、潜るの? 途中まで一緒に、行こ?」と目をウルウルさせたのだった。
これを拒絶できるランク1位ではなかった。どうもリードされるのはアレだが頼られるのは折り合うらしい。
これも彼が抱える
こうなってしまった以上は腹をくくる必要がある。平岸はランク1位に向き直った。アームズを抜きそうになったが何とか踏み止まって名刺を取り出していた。
「ダンジョン庁、水質保全課の
「同じく水質保全課の平岸です」
「あ、どうもご丁寧に。冒険者の澄川トウヤです。すみません、名刺とか持ってなくて」
「結構ですよ。お噂は伺っております」
「え゛……ど、どんな噂ですかね……? あ、いえ、聞きたくないのでけっこうです……」
「いえいえそんな。
「ああああぁいやいやっ、僕と樟葉さんを比べるのは……! 僕なんてデューフレウムの売り上げでこのランクにいるだけなので……!」
「……」
上司とランク1位のやり取りに平岸は混乱していた。頭上に「?」が浮かびまくりだった。
すなわち「え? コイツこんなにしゃべれるの??」というヤツであった。
「ランク2位もいつか倒す。ね、お兄ちゃん」
「たたた、倒さないよ!?」
ランク2位、
搭乗式
澄川トウヤも弱いわけではない。しかし戦闘力に関していえば、樟葉光司と比べるとやはり一歩劣ると評価されている。そしてその評価は正しかった。
まぁそれはともかく。
「???」
なんだ、これは。
自分の知っているランク1位といえば、人間を見れば逃げ、顔を合わせれば目を反らし、言葉を交わそうにも言葉が出ない。そんな
しかし現実、目の前にいるのは気さくに話す青年だった。自分が今まで画面越しに見ていたランク1位とは似ても似つかなかった。
もしかして偽物では。試しに1発殴ってみれば
と、そこでふと気が付く。
「(……まさか)」
上司と雑談している澄川トウヤ。その額や首筋には汗が浮いていた。汗をかくような気温でもないにも関わらずだ。つまり汗の原因は肉体的なものではなく精神的なもの……。
「(初対面の人にだけ社交的なタイプ……)」
実在したのか……! などと感動する平岸。しかし相手が悪かった。つまりこれは初回ログインボーナスみたいなヤツだ。次に会う時があれば、きっと普段の彼に会うことになる。
「(記憶喪失にすれば……)」
次も初対面だろう。
無意識に警棒型アームズを取り出していた平岸はしかし、慌てた上司の呼びかけで正気に戻った。
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