テンポはゆっくりズレていく
るありも
Ep,1
晴れ渡った晴天に突き抜けるのは金管楽器の爽やかな音色だった。
辻は幼いながらに感激した。
─何だこの音は。
それが、辻の、吹奏楽との出会いである。おぼろげであるとともに、鮮明な記憶だった。
体育館に響き渡る、盛大な拍手と演奏。
胸を張って入場する新一年生。そのなかには辻の姿もあった。
「えー..まずはこの学校を選んでくれた皆さん。本当にありがとう。中学校というこの場所で、君たちの新たなる成長を望んでいます。そしておそらく小学校ではなかったでしょう。部活、です。中学校には部活があります。その種類、多様さは学校によって異なりますが、こちらの宮江第一中学校みやえだいいちちゅうがっこうでは"男子バスケットボール部"、女子も同様にあります。そして"バレーボール部"、"バドミントン部"、"サッカー部"、"野球部"、さらに文化部では、"美術部"、"吹奏楽部"、があります。このなかから選んで、それぞれが違う道を歩んでいくわけです。あ、いい忘れていましたが、もちろん帰宅部もありですよ。みなさんの、やりたいように、楽しい学校生活を送ってくれるよう望んでいます。」
学校長の挨拶が終わった。その他諸々お偉いさんの挨拶が終わり、無事、入学式は終わった。その日はそのまま下校である。
翌週、改めて中学校での生活が始まった。
そして辻は悩んでいる。部活だ。運動が嫌いというわけではないが、運動部の熱血感というかなんというか、少し嫌いなのである。ただ文化部は2つしかない。
ただ、「部活」という概念に興味がある。先輩後輩間の人間関係、まとまって行動する特別感....."部活に入りたい"、そんな気持ちはあったのだ。
"まぁ、体験に行ってみるか"
それが辻の出した結論だった。ちょうど入学後一週間はすべての部が部活動体験を開いている。その部の雰囲気等もわかるため、毎年1年生はそこで自分の入る部を決めるのだ。
部活体験は初日から始まる。まずは中学最初の授業を乗り越えなくては、と、辻は1日を過ごした。
放課後、美術室に向かう。2つある文化部のうち、一つはこの美術部である。
体験には10人ほど集まっていた。中には辻と顔見知りの人もいる。帰りのホームルーム後に掃除が10分程あるのでその間は体験も始まらない。辻はただ待った。美術部の体験に胸を膨らませながら。
掃除が終わったらしい。辻含め諸々は美術室に流れ込む。その中には現役で美術部に通う2,3年の生徒も混じっていた。
席を指定され、部長らしき人物が話し始めた。
「皆さん、こんにちは。美術部、部長の宮迫みやさこです。一中いっちゅうへようこそ。1年生の皆さん、体験に足を運んでいただきありがとうございます。まぁこんなね、長々と話していてもあれなんで、早速体験に移りましょうか。」
宮迫が他の生徒にアイコンタクトを送ると、その生徒は新一年生に鉛筆と紙を配り始めた。それと並行して宮迫は話し続ける。
「今、皆さんにお配りしている鉛筆で、簡単な立体を書いてもらいます。前に、こんなふうな三角錐だったり円柱だったり球だったり...いろんな木がありますので、好きなのを選んで、そちらの紙に書いてもらいます。2,3年生の皆さんは回って、アドバイスとか、色々コミュニケーションとってみてください。さ、なにか質問ありますか?なければ早速、前から好きな立体を持っていき、書き始めちゃってください。」
昔から絵は得意だ。すっごい立体的な立体(?)を書いて驚かせてやる。
そう辻は奮起し、黙々と絵を書いた。平日の部活時間は2時間。短い。辻の中で時計は淡々と回っていく。
辻は完成した絵を先輩方に自信満々に見せつけた。ただ反応は薄い。
なぜだ。あ、そういえばこの人たち美術部か。当たり前か。
その日の体験は虚しい気持ちで終了した。
美術部か。
辻は家に帰って無言の時間を送る。
残る文化部は吹奏楽部だけ。どんなことをするのだろうか。楽器体験か?早速明日行ってみよう。
前日にも関わらず、辻の心は躍っていた。
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