女子会グルメ
Algo Lighter アルゴライター
第1話:「雨の日のパンケーキ」
静かな雨音が響く午後。カフェの大きなガラス窓には、ぽつぽつと水滴が流れ、外の景色をぼんやりと滲ませている。通りを行き交う人々は傘をさし、足早に歩いていく。
店内はほんのりと温かく、バターとコーヒーの香ばしい香りが漂っていた。しっとりとした雨の空気の中で、ここだけが別世界のように心地よい。
「やっぱり雨の日は、カフェに限るよね。」
桜井美咲がゆったりとした声でつぶやく。向かいに座る沢田玲奈が、小さく頷いた。
「外はしっとりしてるのに、中はバターの香りでふわっと包まれてるって、最高じゃない?」
彼女たちの前には、焼きたてのパンケーキ。厚みのある生地の表面は、ほんのり黄金色に輝いている。とろけかけたバターがじわりと広がり、その上からメープルシロップがゆっくりと流れていく。
「この厚み、たまらない…!」
高橋由香がそっとナイフを入れる。しゅわっと音を立て、生地がやわらかく沈む。切り口からは空気をたっぷり含んだふんわりとした断面が覗いた。
その上にホイップクリームをたっぷり乗せて、フォークで一口。
「……やばい、幸せ。」
甘さとバターの香ばしさが、口いっぱいに広がる。しっとりとした生地の奥から、小麦の素朴な風味がふわりと立ち上り、メープルシロップのやさしい甘さが舌の上でゆっくり溶けていく。
玲奈が熱いコーヒーをひとくち飲んで、ふっと息をついた。
「スイーツって、なんでこんなに癒されるんだろうね。」
美咲はスプーンの先でホイップをすくいながら、くすりと笑った。
「たぶん、食べる時間まで丸ごと美味しいからじゃない?」
カフェの中では、小さなランプの灯りが揺れ、レコードから流れるジャズが雨音に溶けていく。窓の外では、濡れた街が静かに輝いていた。
忙しない日常から、ふっと切り離されたような時間。雨の日にカフェで食べるパンケーキは、ただのスイーツじゃない。
それは、心までほどける小さな魔法だった。
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