第17話 旦那と鉢合わせ

有給休暇の平日。

おじさんと、スーパーで買ったお昼ご飯の材料を持ってお店を出た。

歩いてタワマンに向かっていたところ

「愛子!お前何してんだよ!」

という怒鳴り声に捕まった。


もちろん聞き覚えのある声で、私は振り向いて声の主を確認すると顔を青くした。

「営業まわりのついでに店立ち寄ったら…お前このおっさんとパパ活してんのか!?このマンション入ろうとしてたよな!?」


ATMが私の腕を強く掴んで怒っていた。

痛い…。

どうしよう。おじさんと一緒にいるのがバレちゃった。

私は声が震えてしまったけど冷静に話そうとした。

「パパ活じゃないし。一緒にご飯をお家にお邪魔して食べるだけ。あなたとは違ってキスもそれ以上もしてないし、責められる理由がない」

言えた…!

怖かったけど、ちゃんと最後まで言えた!

私はおじさんに迷惑かけたくないのに、旦那とのこんなやり取りを目の前で見せてしまったことで嫌われそうで怖くて、チラッとおじさんをみた。

おじさんは俯いて口に手を当てて笑いを堪えていた。

え…?なんで…?

どうして笑いそうに、なれるの?

こんな状況なのに…。


「うるせぇ!それがパパ活って言うんだろうが!ほらさっさと帰るぞ!お前二度と俺に浮気がどうこうとか文句言うんじゃねーぞ!」

「あっやめて…」


腕を引っ張られて強引にひきずられるように車へと連れられていく。

私はおじさんを振り返って

「すみません」

と謝った。

おじさんはやっぱり、上がる口角を隠すように手を当てたままで、肩が震えていた。

はたからみたら泣いているのをこらえているように見えるのかもしれない。

だけど私にはわかる。あれは楽しそうにしている時のおじさんだ。

意味がわからない。

葉月ちゃんの″策士″や″狙うなら気をつけたほうがいいですよ″という忠告が頭を掠めた。

おじさんの知らない一面を垣間見た気がして、少し怖くなった。




ここから先は後日おじさんから聞いた話。


おじさんは私と旦那の姿が見えなくなったあと、クックって喉を鳴らして笑うと、座り込んで大声を出して笑い出した。

「ああ〜愉快愉快!こんな上手くいくなんて!」

通り過ぎるマンションの住人にギョッとされるのも気にせず、スマホを取り出した。

「先生?発射準備が整いましたよ。ええ。〇〇銀行宛でお願いします。かなりお待たせしましたね。ようやくです。いやあ、楽しいですね?」


おじさんは足取りも軽く自宅マンションへと戻っていった。

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