11 スキル望んだ世界


 息を吐いて恒例のステータスを見る。

「取り敢えずステータスオープン」


【名前 マリエ 年齢 十五歳 性別 女】

【スキル 編み物初級 薬師初級 身体強化初級 属性魔法初級 聖魔法初級】

【固有スキル 望んだ世界初級】


 いきなり増えている。

「ねえユラン。この固有スキル望んだ世界って何だろう」

「何だろうな」

 猫は肝心なことは何も言わない。


 バスローブを乾かしてタオルと一緒に仕舞って、別のチェックのパジャマを出した。藁のベッドじゃなくて自分のベッドがいいなあ。

「ユラン、ベッドとお布団入れ替えるわ」

 猫がベッドから飛び降りる。家で使っていたベッドと布団に入れ替えた。

「わーい、前のお布団ー。お休みなさーい」

 猫が両手を広げた私の所に恐る恐るやって来る。

 モフモフ―ーー。


  ◇◇


 朝起きて鏡を見て再度チェックする。髪は五センチくらいでショートカット。ヴァラクさんが言ってたプラチナブロンドは金髪の薄いヤツ。瞳はベルベティ・ブルーだと言ったな。澄んで混じり気のない濃い青。顔立ちは外人風で非常に整った顔だ。身体はまだ痩せているけど大分肉が付いてきた。


 鏡を見て思う。キューピッドみたいだ。背中に羽でも生えてきそう。胸も扁平胸だし、全体的に淡い印象の中、目だけが濃い青で際立っている。


 猫写真の猫も綺麗な瞳で惹き込まれたが、鏡を見ても、まるで人ごとみたいで自分とも思えない。ユランが私の布団の上で背伸びして欠伸をしている。

「ユラン、ベッド仕舞うから下りて」

「にゃあ」

 猫がベッドから下りて私の方に来たので、ベッドと布団に清浄やら清掃やらフワフワやらをかけて仕舞う。代わりに藁のベッドを出して清浄をかけた。



 学校に行くとソフィア様の側には侍女のデリアが控えていた。

「おはようございますソフィア様」

「おはようマリエ」

 ソフィア様は変わらなかった、というか私の頭を見てにっこりする。

「髪が伸びたのね、良かったわね」

「はい、まだ短いですけど」

 毛糸の帽子を止めて三角布を被っている。前髪がくるくると覗いているので小さなリボンを作って止めてみようか。


「まあ、ソフィアお嬢様。そのような下賤な者と親しげに言葉を交わされてはなりません。そなたも近づいてはならぬ」

 おや、イチャモンをつけられてしまったわ。

「何を言っているの、デリア。わたくしたちは神の御許では皆平等なのですよ」

「それはこの国の国教である新教の教えでございます、私共の国では──」

「デリア」

 侍女はハッとしたように口を噤んだ。

「ごめんなさいね、マリエ」

「いいえ」

 子どもたちは固唾を呑んでその様子を見ている。


「じゃあ今日は挨拶の仕方を覚えようか、みんな並んで」

 私は子供たちを私の横に並ばせる。

「じゃあいくわよ」

 侍女デリアさんの前に行き、スカートを摘まんで挨拶をする。


「初めましてデリア様、私ミュステア村の聖ミトラス修道院の修道女見習いマリエと申します。どうぞよろしく」

 ポケッと見ているその場の面々。子供たちに促す。

「さあ皆、順番にやってみて」

「きゃあ、するのー」

「順番はー?」


「僕が一番だ。初めましてデリア様。僕はミトラス村のリアム・マイヤーと申します。どうぞよろしく」

 最初に挨拶したのはミトラス村の村長の息子で、来年から大修道院のある隣の州都の学校に行くというリアムだった。これにはデリアも挨拶を返した。

「はい、どうぞよろしく」

「次わたしーー」

 そして挨拶大会が始まったのだ。デリアは驚いていたが、子供パワーに圧倒されてぎこちない笑顔で返事をしている。そんなに悪い人ではないようだ。


「お姉ちゃん、いい匂いする」

 いつもの匂いフェチな女の子はアンナという。ミトラス村の村長の娘でリアムの五歳下の妹だ。

「そう? 昨日ウサギギククリームを作ったからかしら?」

 何気なくその子の頭に手をおいた。

「きゃん」


 アンナの頭からウサギの耳がぴょこと飛び出した。え、クリームの所為なの? 誰も驚いていない。あーあ、という顔で見ている。どういうことなの?

「あ、ごめんなさいね」

「ううん。お姉ちゃん、こんな耳、イヤじゃないの?」

「嫌じゃないけど、アンナちゃんは嫌?」

「ううん。お姉ちゃんいい匂いがするもの」

 昨日お風呂に入ったからかしら。自分の手を嗅いでみるがよく分からない。

「耳に触ってもいい?」

「うん」

 リアムは茶瞳、茶髪だが、アンナは赤い瞳でシルキーピンクの髪がすっごく可愛い。耳やら頭を撫で撫でさせてもらった。お礼にピンクのリボンを作ろう。



「このアレマン共和国は元々獣人や竜人、魔人、妖精なんかがそれぞれ部族で固まって棲んでいたんだ。彼らに共通するのは強靭で、長命で、魔力も高いということだが、段々交流が進んで交配も進んで、種々雑多な人々が暮らす国になった」


 猫のユランが説明する。


「この国に聖なる山があるので、皆他国に出ても帰って来るというな」

 帰巣本能みたいなものかしら。私にもあるのだろうか。あるとしたら何処だろう? それに、聖なる山って何処にあるの。


 すると、目の前に地図が浮かび上がった。それは色も何もついていない白地図の中に、自分の位置とユランが言った聖なる山がぽつんと表示されているだけの地図だった。こんなんどうすりゃいいの。


 地図に気を取られていたらソフィア様からお誘いがあった。

「マリエ、お詫びに今日の午後のお茶に招待したいわ。いらっしゃってくださるかしら?」

「あ、はい、喜んで。お誘いありがとうございます」


 お茶会のお誘いだわ。お菓子も出るかも、そう思ってありがたく受けたら、周りの子供たちも聞き逃しはしなかった。

「「「「ありがとうございます」」」」

「まあ」

「あら、じゃあここで今からお茶にしましょう、それでよろしいかしら皆さま」

 流石ソフィア様、サッサと方向転換された。

「「「わーい!!!」」」

 だがもちろんここは学校なのでタダでお菓子が食べられるわけではない。ソフィア様とデリアさん指導の下で、厳しいマナー教室お茶とお菓子付きとなった。

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