第18話

平日、学校の自分のクラスに入るといつものように小走りで雪兎がやってきた。

「おはようございます!みくみ…美虹様っ!」

「え?どうしたの突然」

緊張した様子で深く頭を下げる雪兎に訳が分からないという状況だった。


「……美虹様は朱雀様の番になったそうで…神の番である美虹様に失礼なことはできません。朱雀様を含む四神様やその番や神子様のご機嫌を損ねるわけにはいけませんから…その……」

雪兎の目は悲しそうだ。まるで身近な人が遠く手の届かない存在になってしまったかのように。


「ウサちゃん、いつも通りで大丈夫だよ。ね?」

ニッコリ笑うと緊張がほぐれたのか「うん!みくみく!」といつもの人懐っこそうな可愛い笑顔をみせてくれた。

クラスメイトも二人の会話を聞いて、ホッとしたようだ。


「美虹ちゃんオメ〜」

「すげぇ!美虹は只者じゃないってオレは知ってたぜ!」

「う、うん……」

クラスメイトたちが祝ってくれるが素直に喜べない。神子だけならまだマシだったのだが、番になるなんて決めていないし不服だ。

そんな事をクラスメイトに言えば、島民全員顔見知りなほどの人工数なので速攻島中に広がる。

そうなると焔に話が伝わってしまう。

晴陽から機嫌を損ねないようにと言われている。



お昼の給食を食べていると男子生徒から「美虹に会いたいって来てる奴がいる」と慌ててやってきた。

教室をでて廊下には二人の女の子。


「こんにちは。私に何か用かな?」

優しい口調で話しかけると二人の女の子が美虹をじっくり観察するようにみつめていた。


「お話しするのは初めですわね。私は八月一日涼花ほずみすずかと申します。そして…」

八月一日ほずみ……鈴花りんか…」


涼花は膝まで長いストレートロングでお嬢様のような白いフリルやレースのワンピースを着ていている。

鈴花は涼花と同じ髪の長さをポニーテールにして、涼花と同じデザインの色違いを着ている。

住人全員顔見知りだが名前は知らなかった。

小学高学年の双子で姉の涼花が強気な自信家、妹の鈴花はおっとりで話し方が凄くゆっくりだ。鈴花の目元にホクロがあるのでわりと見分けられる。

たしか、草月村に住んでいて良く当たる占い館をしているとか……


「美虹様が朱雀様の神子とは本当ですか?」

「番……本当?」

「うん、まぁ……」

認めたくないが話がややこしくなるので仕方なくだ。

否定しないことで自分の首を絞めていっている気もする。


「そうですか…あなたが……」

「本家の人は……いいよね……いつも……特ばかりだ〜……」

「?」

「お時間を頂戴して申し訳ございません。失礼しますわ!」

美虹がなんて答えようかと困っていると納得したのか去っていった。一体なんだったんだろう?


「みくみく〜なんだったの〜?」

「さぁ〜」

こっちが聞きたいくらい。不思議な子たちだった。

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