【KAC20253】赤い帽子
武江成緒
第1話 村
今日もおれは、ババアとジジイの目を盗んで、村のはずれ、ごろごろ石が積みあがってる場所までコッソリやってきた。
「おじいちゃんと、おばあちゃんの所にいたほうがいいのよ」
「おまえも、もう十二歳だろう。聞き分けないこと言うもんじゃない」
そう言われて、おれだけが、ロンドンから四百マイルも北にある、こんなちっぽけな、しけた村に送られたんだ。
ババアはガキの絵本にでてくる魔女みたいなブサイクで、性根と口うるささは魔女よりひどかった。
朝はやくから、晩メシが終わっても、やれ掃除しろ、やれ牛の乳をしぼれ、やれコヤシをかき混ぜろ、奴隷みてえに仕事に追いたててきやがる。
ジジイはババアにお似合いのシワくちゃ面で、こっちが何か話しかけても、一っことの返事だってしやがらねぇ。
そのくせ、ババアに言いつけられると、石コロみてえなゲンコでおれを殴りやがる。
村のやつらは、この村とおんなじぐらいにしけたヤツらで、そのくせ、おれをよそ者あつかいしやがって、ジジイとおなじ、まともに口もききやがらねえ。
とくに、おんなじ歳ごろの連中ときたら「ロンドン野郎」とか呼びやがって、時には石やらゴミやら投げつけてきやがる。
この村にきてたった三月で、おれがまともに過ごせる場所は、この石コロの小山だけ。
むかしのトリデの
村のやつらも、ここには近づいてこねぇ。田舎モンらしく、ここには幽霊が出るとか、悪い妖精がいるだとか、この二十世紀、いまだにびびってやがるんだ。
ひひっ、って声がもれる。
考えてみりゃあヘンな話だ。
この村で、おれにまともに口をきいてくれるのは、その妖精だけなんだからな。
ババアの目をなんとかぬすんで台所からもらってきた干からびかけのソーセージをポケットからとり出して。
ロンドンにいたころに買ってもらった水筒をふって、チャプチャプ牛乳を鳴らして。
石コロのつみあがったまん中、ちょっと広場みてえになったとこにむかって、おれは声だして呼びかけた。
「
そういって、あたりキョロキョロさがしてると、いつのまにか、ソイツがどこかに腰かけてんだ。
「……レニーかい。
今日は土産はもってきたか」
ちっちぇえ体、せいぜい四フィートぐれえのやつが、いちばん高ぇ石の小山に腰かけてた。
ゴワゴワしたヒゲをゆらして、ババアよりもジジイよりも、ずっとしゃがれた声で今日も
「もちろんだって。ほらよ」
ソーセージと牛乳わたすと、
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