萩市立地球防衛軍☆KAC2025その③【妖精編】
暗黒星雲
第1話 夜空に舞う妖精
ある新月の夜、キラキラと光る妖精が空を舞っていた。
十数体の妖精が萩市の空を乱舞していたのだ。
萩市を見渡せる陶芸の村公園で、その様を観察していたのは防衛軍隊長のララだ。三式戦車の砲塔の上に立ちニコンの双眼鏡を覗いている。
「アレは何だ?」
「妖精のように見えます。背に昆虫のような羽根を持つ子供……恐らく体長は30センチ程度……その羽根から鱗粉のような光の粒が……盛んに振りまかれています」
「童話に出てくる妖精か?」
「外見はそうです。しかし、このように実体化した事例は皆無です」
同じく双眼鏡を使って観察している地味娘の最上が報告していた。今夜、怪しく光る生物が萩市上空を飛んでいるという通報が、警察や消防に多く寄せられた。未確認攻勢生物が出現する萩市である。警察は当然、防衛軍に出動を求めた。
しかし、防衛軍はその正体不明の妖精らしきものが攻勢生物、即ち怪獣であると判断できなかった。その妖精らしきものは夜明けと共に霧散し消えてしまった。
「仕方がないだろう。楽し気に空を飛んでいるだけで捕獲する訳にもいかない。そして、夜明けと共に消滅した理由も不明だ。あの未確認浮遊物体が実害を及ぼすかどうか、それをこれから判断せねばなるまい」
「了解しました。それでは主に警察が監視を続行します」
「防衛軍も萩市沖に戦艦長門を展開し万一に備える」
「それは心強い。しかしララ隊長。あのような小さな物体に対し戦艦は過剰なのでは?」
「何があるか分からない。不測の事態に備えておく事は重要だ」
「ごもっともです」
「しかしだ。アレが夜明けと共に消えた事は気にかかる。昨夜、急に体調を崩した者がいたら、MRIなどを使用して入念な検査を実施しろ」
「それは……あの妖精が人に憑りつくと?」
「わからん。しかし、アルゴルの例がある。念のためだ」
「わかりました」
大型の未確認攻勢生物が出現した場合には防衛軍が撃破している。しかし、ララは小型の未確認生物が人体に憑りついて破壊工作を行う可能性について危惧していた。防衛軍ではアルゴル族……レーザ星系に生息する環形動物が人体に入り込んで支配した事案を何度も経験しているからだ。
三式戦車は陶芸の村公園の駐車場で待機となった。また、航空自衛隊の移動式レーダー部隊も午後には萩に到着し、萩市上空の索敵に当たった。
警戒態勢に入った萩市に夜が訪れた。
その未確認浮遊物体……妖精のようなものは再び萩市の上空に現れ、空中を自由に飛び回っていた。
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