第38話 暴力

 とりあえずは無力化することだけ考えよう。


 縄を持ってきて女のいる場所の近くまで近づく。

 女は滑りやすい川底に気を取られてこちらに気づいていない。


 手に持った石の大きさを確認する。

 握りこぶしの大きさだ。

 このくらいで死にはしないだろう。


 女との距離は5~10mほどだろうか。

 当たるかどうかの距離だ。

 奴は崖を上がれないので、石が外れて気づかれても問題はない。  

 近くにある良い大きさの石は2つ。

 手にあるのと合わせて弾は3発。



 よし、投げるぞ。

 そう思ったところで”もしも”が頭を走る。

 もしも、当たり所が悪くて女が死んだらどうする……。


 

 人に向かって石を投げるのはかなり勇気がいる行為だ。

 人は人を傷つけることに対して大きな心理的障壁がある。

 それは社会性のある動物だから当たり前だ。

 数年間人と関わらずに生きてきたが、それでも逃れられない本能らしい。



 しかし、キリストの時代は人に石を投げるのが当たり前だったのだ。

 これは後天的なもので、教育のせいかもしれない。

 そして、教育は身を守るには何も役に立たないものだ。


 どうせ若い頃の1日を学校に奪われるなら身の守り方を教えてほしかった。

 いくら人を傷つけないように教育しても、暴力に訴える人や我儘を無理矢理に行う人は必ず現れるのだから。


 あの女のように暴力にしか頭が働かない人は日本中に沢山いる。

 国語や数学の知識では暴力から身を守れないのだ。

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