第25話 テレビ番組
ある春の朝、庭にエンジン音が響いた。
道路はまだ生きてたのか。
まずい。
警察とか役人じゃないよな?
嫌な汗を出しながら車のほうへ近づくと、カメラを構えたおじさんとマイクを持った若い男性が降りてきた。
「突然すみません。こくみんテレビの石橋といいます。
山奥に住んでいる人を探してインタビューしているのですが、お話を聞かせていただいてもよろしいでしょうか」
汗が引き、心拍数が下がる。
警察じゃないならセーフだ。
取材に来た2人は、人工衛星の画像から人里離れた場所にいる人を探しているらしい。似た番組を大昔に見た気がするが、まだやっていたのか。
取材は社交的な態度で断った。
僕は逃げている訳じゃないが取材を受けるメリットがない。
彼らには一度考えて欲しい。
ここまで山深くで暮らす人には何か事情があるかもしれないと。
彼らはそれを取材したいのだろうが、僕が殺人鬼である可能性は考えているのだろうか。
彼らはゴネることなく去っていった。
整備されてない険しい山道だが無事に帰れるだろうか。
やはり人と関わっても心配事が増えるだけだ。
畑を耕して、大地と自然と暮らすのがいい。
若い頃の僕に「山で暮らせ」と言ってやりたい。
毎日バイトをしても、人のお金を盗んでも、何をしても人生は真っ暗だった。この人生の先には何もなく、死ぬまで抜けられない繰り返しの闇の中だった。
ただただ何か暗い、漠然とした不安が背中にいて僕をじっと見つめる。人間社会で暮らすということは、僕にとってはそういうことだ。
だが、この山に来てからそんな暗闇から解放された。周囲に人がいなくなっただけで心の抑うつが解放された。
そうして、孤独だけが僕が救えるのだと悟った。
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