第5話 女の部屋

 目標まであと5千円となった6件目。

 長い坂の途中にある2階建てのアパートの204号室。

 下見の途中でカーテンが開いているのに気づいた。その部屋の壁にはブランドのバッグと服がかかっていた。夜職の女性が住んでいるのだろう。


 ネットで見ると家賃は安くなく、部屋も広い。

 玄関から入って手前は洋式のダイニングキッチン、奥は畳敷きの寝室になっている。大きな襖を閉めると2部屋として使えるタイプのワンルームだ。



 時刻は深夜0時。

 簡単なピッキングでお邪魔すると想像通りの部屋だった。

 ベッドには数着のワンピースが投げられている。

 その派手さからブランドものだと期待したが、タグを見ると庶民的なメーカーのものだった。


 ベッドの反対側にあるローテーブルには卓上鏡が置かれ、化粧品でいっぱいになっていたが、その化粧品の隙間に膨らんだ茶封筒を見つけた。

 取り出すと帯封が付いている札束だった。

 真ん中まで透かしが入っている本物だ。


 興奮して跳ねそうになる自分を抑えながら札束をリュックに入れようとするが、そこで手が止まり頭が回り始める。


 なぜこんな大金を現金で持っているんだ?

 東京なら夜職の女性が札束を持っている姿も想像できるが、こんな田舎で?


 これは闇金に返済するためのお金かもしれないし、プライドを捨てて得たお金かもしれない。

 そんなお金がなくなれば女性は自殺を選ぶかもしれない。

 このお金を盗るのはやめておいたほうがいい。


 冷静になって札束を元に戻す。


 だが、100万は流石に悔しい。

 目標を達成できる5千円くらいのものでいいから貰いたい。

 今日はそれで終わりにしよう。



 タンス、ベッドの下、棚、いつもの順に物色していく。

 タンスにもベッドにも何もなかったが、棚には伏せられた写真立てがあった。

 気になって裏返すと、それは幸せそうな家族の写真だった。


 写りは鮮明で、あまり古いものではない。

 幼稚園の入園式だろう。

 元気そうな女性と優しそうな男性、そしてその間に挟まれる笑顔の男の子。


 これはまた不思議な写真だ。

 写真に写っている女性がここで一人暮らしを?

 

 離婚か。

 部屋には子供用品がないので親権は男の方が持っているのだろう。

 ならば母親のネグレクトかDVか。

 部屋の様子と1枚の写真で想像できるのはそんなところだ。

 幸せとは儚いものだ。


 写真を伏せて物色を続けるが、現金はなかった。

 体感時間では既に安全な3分間を過ぎている。


 急いで部屋を見渡すと、棚の横に乱雑にモノが詰められた段ボールを見つけた。

 そこを物色すると少し古いビデオカメラが出てきた。

 思い出の動画もあるかもしれないが、そんなデータはスマホに移しているだろうし問題ないだろう。

 適当に売っても数千円にはなるはずだ。

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