泉が激しすぎる!

第15話 「……なら、もっとして欲しい」


 ムードって、大切だと思う。


 夜景の見えるレストラン、カップルだらけの天文台––––良いムードは、それ相応の関係値を築いてくれる。


 そういう意味では、放課後の空き教室で二人きりという今のシチュエーションは、かなりムードがある。


「んむっ」


 唐突に唇が塞がれて、生暖かい唾液が流し込まれた。


 どちらが先に、なんてよく分からない。


 とにかく、お互いそういう気分になってしまった。


「んっ、んん……ぅ」


 泉の柔らかい腰に腕を回して、ぎゅっと抱きしめる。

 私の膨らみと泉の小ぶりなそれがぶつかると、むにゅむにゅと押し付け合うように溶け合っていく。


 言葉なんて何もないけど、私はより強く泉に身体を押し当てた。

 するとすぐに、泉は自分の肉感を私に分け与えてくれる。


 意図せず身体と身体を擦り合わせるようになって、やがてそれは大きな快感へと変わっていく。

 

「っ、ん」


 気持ちいい。


 泉のキスは、すっごく気持ちがいい。


 こうやって唇を重ねられる相手がいて、それが私の大好きな人であることに、幸せを感じずにはいられなかった。


 忘れ物を取りに来ただけだったはずなのに。気がつけば、私も泉もお互いを求めていた。


 でも、きっとそれは悪いことじゃない。


「ふぁ、阿澄ちゃん……っ」


「なに……? 泉、きもちぃの?」


 瞳は蕩けそうなほどに虚なものになっていて、こんな泉の表情は久しぶりに見た気がした。


 気持ちいいだけじゃないんだ。


 キスは、それだけじゃない。


 二人の愛を思う存分に伝え合える、かけがいのない時間。

 

 きっと、そんな感じなんだと思う。


「人、来るかな……」


 それは困る。こんなに昂った身体のまま唇を離すなんて、できるわけがない。


 自然と、泉を抱く腕に力が込もった。


「誰か来ても、このままでいようよ……?」


「んっ、んむっ––––阿澄ちゃん、そんなに私を試さないで……」


 試してなんかいない。


 今はただ、泉と一つになっていたい。


 それだけなんだ。


「好き。泉のことが、大好き」


「はぁっ、ぁ。……なら、もっとして欲しい」


 こんな時にも、泉は素直すぎる。


 思えば、初めて告白された時もこんな感じだだったかな。


「もっともっと、私で夢中にさせてあげるからね……?」


 思い出が蘇って、私の好意は加速していく。


 激しく押し付け合う身体は、どんどんバランスを失って窓際へともたれかかってしまった。


 外にはグラウンドがあって、運動部が大きな声を上げている。

 窓の外からは、泉のいやらしく躍動する身体がくっきりと見えてしまうかもしれない。


 それでも私の理性では、彼女を守ることができなかった。


「っ、っぁ……! んんぅ!」


 必死になって、泉の唇を貪る。


 唇を薄く開いて、泉の肉感を咥え込むように激しく閉じる。


 何度も、何度も。


 繰り返し、啄むようなキスを泉の細い隙間に流し込んだ。


「んぅ、っぅ」


 二つの唇は触れ合うたび、激しく混じり合っていく。


 私の動きに呼応するように、泉は緩んだ唇を追いかけてくるから。

 身体を重ねている時みたいな安心感と高揚感が身体中を駆け巡って、思考が溶けていく。


 気づけば、外の喧騒が嘘みたいに遠ざかっている。

 抑えられない欲望は暴走を始め、窓際に位置する泉を乱暴に叩きつけてしまった。


 がこんがこんっ、と物の倒れる音を立てながら、それでも私は泉の唇を求め続けた。


「ふぅっふぅ……っ!」

 

 泉のふとももに、自分の脚を差し込む。


 ぐりぐりと押し当てて、逃げ道を奪っていく。

 泉が逃げるなんて、あり得ないのに。何だかそれは、本能にも似た行動に思えた。


 両腕で泉を抱きしめながら、下半身は小さく上下させる。

 少しでも泉との隙間を埋めたくて、私は夢中で身体を重ね続けた。


 だからだろうか。

 

 いつもなら、私の想定を上回る勢いで反撃してくる泉が、今日はやたら大人しい。

 もしかしたら、そんな余裕がないくらい私とのキスに没頭してくれているのかもしれない。


 そう思うと、欲を伝えるキスはまた加速してしまうのだ。


「ぷはっ、ぁぁ、ぁ……」


 キス。キス。息継ぎ。キス。キス。キス––––。


 終わりのない愛は、際限なくお互いの身体を行ったり来たりする。


 このままずっと、泉と溶け合ったままでもいいかもしれない。

 文字通り永遠の愛を、キスという形で確かめ合うんだ。


 そうやって、幾千もの時を––––。


 がたっ。


「!?」


 物音は、私の背中から。


 ドアの向こうで、儚げにその存在を主張した。

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