CentralFolklore
まそほ
迷える魂
学院へ
~月に照らされた山道~
《険しい岩山の道。空を遮るものはなく、月の光を真っ直ぐに浴びる》
《この世界で、空にあるものは月と星のみ。人々は月の光で1日——1月を知る》
《静寂をつんざくように馬車が駆けている》
《スピカは揺られて、ぼんやり空を眺めている》
スピカ「月がずいぶん大きく見える」
御者「このあたりは月に最も近い場所だと言われているからね」
「つまり、目的地が近づいてきたということさ」
「ほら。あの山の向こう」
(スピカは視線を下げ、広大な森を眼下に見る)
スピカ「……わあ!」
《見えてきたのは、高台にある大きな建物たち》
《赤い建物、一際大きな青い建物、そして離れた場所にある白い建物》
御者「あれが王立魔法学院だ。でっかい森に囲まれたでっかい城さ」
スピカ「すごい、すごい!」
御者「夢を見ているかい、これからに」
スピカ「はい。とっても楽しみです」
御者「ははっ、それはいい事だ」
~王立魔法学院~
《身長の2倍程の外壁の間に、鉄の門が鎮座する》
《門の横には小屋があり、窓から栗色の髪の女が顔を出す》
《スピカの姿を確認すると、外へ出てくる》
《御者と別れ、栗髪の女に連れられて小屋の方へ》
???「初めまして、スピカちゃん。私は学院の相談係を務めるビスケットです」
スピカ「はじめまして!」
ビスケット「はるばるお疲れ様でした。詳しい案内は明月行いましょうか」
「お部屋に案内しますね。もう遅いので、特別に非常口を通りますよ」
〜庭園〜
《小さな扉を通り抜けると、外壁の中。道を芝生が囲んでいる》
《ベンチや噴水が置かれている。今は誰の姿もない》
ビスケット「ここは庭園と呼ばれています。みんなの憩いの場ですね」
「まっすぐ向かえば教室などがある本館、向かって左に進めば植物園、丘を歩いてさらに進めば星霊殿」
「そして右手に見えるのが、みんなのお部屋がある、寮です」
《青い屋根の建物を示す》
~学生寮~
《静かなエントランス。人の気配はない》
ビスケット「みんなはもう寝ちゃってますね。寮監さんは巡回でしょうか。静か~に行きましょう」
《2階へ上がる。廊下を少し歩いたところで、立ち止まる》
ビスケット「つきました!こちらがスピカちゃんのお部屋です」
「生活に必要なものは一通り揃っているはずです。万が一不備があったら教えてくださいね」
スピカ「はい、ありがとうございます」
ビスケット「それじゃあ明月の朝、迎えに来ますね。おやすみなさい!」
スピカ「わかりました。おやすみなさい」
「……」
《ベッド、クローゼット、本棚、テーブルに椅子。月光が射し込む窓からは学院の庭園が見える》
スピカ(ここが、私のお部屋)
(住んでたところより豪華かも……なんて)
(ベッドがフカフカだ。よく眠れそう!!)
(お部屋も色々見たいけど……早く寝ないと寝坊しちゃう!)
(……楽しみだなあ、これからどんな月々が待っているんだろう!)
《そして、次の朝》
スピカ「……んん」
「ふあぁ……」
スピカ(ドキドキしすぎて疲れてたのかな、よく眠れた)
(よし、支度をしなくちゃ)
《洗い場に向かう。白く輝く洗面台と鏡》
スピカ「わぁ、ピカピカだ……」
スピカ(お風呂がついてる!すごい!)
(1人用……なんだよね)
(収納も大きいなあ)
(服が入ってる。持ってこなくても平気だって聞いてたけど)
メモ『学院の制服といくつか普段着を用意しました。サイズが合わなかったら教えてください』
《クリーム色の襟付きジャケットにスカート、シンプルでありふれた洋服たち》
スピカ(うん、少し大きいかもしれないけど大丈夫そう)
(えへへ!私、本当にこの学院の生徒になったんだ)
(まだ夢みたいで……でも、本当のことなんだ!)
《軽やかなノックの音がする》
ビスケット「スピカちゃーん、ビスケットです」
スピカ「はーい!」
ビスケット「おはようございます!ゆっくり休めましたか?」
スピカ「おはようございます。とっても快適でした!」
「何から何まですごくて……感激しちゃいます」
ビスケット「寮で暮らしてもらう以上、安心できる場所でなければいけませんからね。そう言ってくれて嬉しいです」
「それでは、学院ツアーを始めちゃっていいですか?」
スピカ「はい、お願いします」
ビスケット「ではでは!出発です!」
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