第12話 恥ずかしいけれど戻るしか
帰りの新幹線では日記を書こうと思い、日記帳を持ってきた。帰宅してから書いたのでは、寝るのが何時になるか分からない。
まずは腹ごしらえ。と言っても、独りだから日記を書きながら食べようと思っていた。まずは焼き鳥を食べる。ちょっと冷めて硬くなっている。最初から冷めていたようにも思うが。次にポテト。これが、トルネード型だからかじるのが難しい。ポロポロこぼしてしまった。最初はビニール袋の上で食べていたのに、途中から日記帳の上で食べてしまい、かけらを落として油じみを作ってしまった。まあ、日記は誰にも見せないから大した事ではないのだが。
食べ終わり、本格的に日記を書いていると、2つ隣の席に若い女の子が座った。そして、どこの駅だったか……京都だったか、真ん中の席にも女の子が座った。私はがーっと日記を書いているのだが、隣から甘いチョコドーナツの匂いがしていて、更にうどんの匂いがしてきて、この子よく食べるなと思いながら書いていた。
名古屋で女の子たちは降りた。けれども、新幹線はもっと混雑してきた。私の隣とその隣には男性が座った。やっぱり、男性が座ると狭く感じるものだ。
途中から、日記帳を机の上ではなく膝の上に乗せて書いていた。机の上だと、ちょと前かがみになるので、お腹が圧迫されるから。時々揺れるし、膝の上だし、字はめちゃくちゃだけれど、いつもの事だ。
日記を書き終えた。ふう、1時間半かかったか(と思ったが、実際には1時間15分だ)。今日は盛りだくさんだったから、そのくらいかかって当然だろう。そうだ、何時に品川に着くのだったか。
時間を調べると22:35だった。え、今はもう33分じゃないか。まずい、降りる準備をしなければ。私はちょっと焦った。あれ、新横浜過ぎたっけな。でも、だいぶ前に、
「次は新横浜に止まります。」
というアナウンスは聞いたし、夢中になって日記を書いている間に通り過ぎたのだろう。上の棚に置いていた551を下した。窓際にいると、棚から物を取り出すのにものすごく背中を反らす必要があるのだな。そして、膝に掛けていた上着をエコバッグに入れた。よし、忘れ物ないな。
そう、今日は半袖ではなく七分袖だった事もあり、上着は要らなかった。だが、新幹線では足が寒くて膝掛けにしていた。そうか、必要だったのは上着ではなく膝掛けだったか。
隣の人は起きていたが、通路側の男性が眠っていて、足を引いてくれなかったから通路へ出るのが大変だった。そして、扉の前へと移動した。よかった、間に合った。
ところが、いつになっても品川に着かない。39分くらいになって、おかしいと思った。いや、今日はダイヤが乱れていてもおかしくないと思ったのだが、流石に何もアナウンスがなくて4分も遅れるのはおかしいだろう。
スマホで地図を出してみた。今どこにいるのか。ありゃ、何だ?全然東京じゃない。名古屋と東京の真ん中くらいにいた。そして、気づいた。今は21時半過ぎで、到着まではまだ1時間近くあるという事に。1時間間違えた!
あちゃー。とりあえずトイレに行こう。奥に入ってしまうとトイレに行くのも大変。新幹線は座席の間が広いから余裕だと思っていたが、やっぱりぎっしり座ると全然余裕なんてない。
全ての荷物を持ってトイレに入って、出てきて、さて困った。また先ほどの席に戻るのは恥ずかしいから、別の車両に行くか。と思ったが、2号車を覗いても空いてなさそう。私はてっきり徐々に空(す)いて行くのだと思っていたが、東京に近づくにつれ、混んでいくものだったのだ。そういえば、通路に座り込んでスマホを見ている人もいる。1号車に戻るしかないか。
1号車に戻るには、前から入る事になり、全員の顔が見える。で、やっぱり空いている席は、私がさっきまで座っていた席しかなかった。そりゃそうだよな。通路まで人が溢れているのだから。
仕方なく、またさっきの席に戻った。「この人、用心深い人だな」と思われただろうか。トイレに行くのに全ての荷物を持って行くくらい。棚の上のお土産まで。
それにしても、新幹線のトイレ独特の匂いがあると思うのだが、席に戻ったらその匂いが時々して、なぜ?私が持ってきた?いや、そんなはずないよな、とちょっとパニクった。多分、お隣の方の何らかの匂いと、トイレの匂いが似ていたのだと思われる。匂いに敏感で……申し訳ない。
Wi-Fiを繋げて動画でも観ようかなと思ったが、帰りは全然繋がらなかった。新幹線の無料Wi-Fi。やはりみんなで使っているから混んでいるのだろうか。諦めて本を読んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます