正ヒロインのポジションに異世界転生したけど不満です。
狩野すみか
第1話
俺は何をするにも臆病で、好きな人にも振り向いて貰えたことがなかったけど、ディズニーの影響で、トゥルーラブを求める傾向が強いのか、よく分からないけど、恋愛にも奥手だった。
そんな、非モテ童貞のまま、若くして人生を終えた俺が、妊娠可能な令息達が恋愛ドラマを繰り広げる、大人気オンラインゲーム『愛は海よりも深く』、通称『
アヴリールは銀髪だけど、金髪碧眼の、いわゆるお人形のような外見で、天使のような性格だった。
彼は聖エトワール学園の姫であり、最終学年で生徒会長のルノールをはじめ、学園内外に多数のシンパを持っていた。
姉妹高のオレアンとは、毎年六月に開催される姉妹高交流ダンスパーティーで知り合い、運命的な恋に落ちる。
幼い頃に、社交界の華といわれた母親が年下の愛人を作って家を出て行ったオレアンは、幼なじみで婚約者のミハこと、ミハールをはじめ、複数の令息達と爛れた関係にある。
正直、俺は、オレアンとは出会いたくなかった。
俺は面白ければ何でも読むけど、腐男子ではないし、恋愛対象も女子だった。
しかも、オレアンにはミハという婚約者がいる。
今世も、出っ張りのある方に生まれたんだから、今世は出会いに恵まれて、非モテ童貞を卒業したかった。
噂だけど、オレアンとミハはかなり良い感じらしい。
甲斐甲斐しく世話を焼くミハをオレアンは母親のように慕っており、独占欲むき出しだとか。
この辺りはゲームと違うような気がするけど、今の俺には好都合だった。
「アヴリール、バナナケーキ焼いたんだけど!
って、そんな嫌な顔しないでよ……」
「ああ、ごめん。こないだ、貰ったやつが生焼けだったもんで……」
「ああ、ごめん。言ってくれたらよかったのに。でも、これは大丈夫だから!」
と言って、爽やかを絵に描いたような、生徒会長のルノールが、半ば強引に、俺の手の中に落とすようにして、綺麗にラッピングされたバナナケーキをくれた。
ルノールは品のいいお坊ちゃんといった感じだが、お菓子作りが趣味で、学業成績もよく、健康で、運動神経もよかった。
「今度、試合があるから見に来てよ~」
この世界でも、ハリポタのクィディッチのような競技が流行っており、当然のように、彼はアタッカーを務めていた。
存在自体が嫌味なはずなのに、何故か彼は、下級生からも同級生からも好かれており、プレーヤー人気も高かった。
しかも、物腰が柔らかいせいか、軽く見えるけど軽くないんだよな……。
「考えておくよ。僕が行くことを快く思わない人もいるから」
ゲームのセリフを思い出し、俺は口にした。
鈴蘭のように可憐で愛らしいアヴリールにも弱点がある。
彼は、日曜学校でリチャード神父に可愛がられていたとはいえ、この手のゲームにありがちな、庶民階級の出身なのだ。
「気にする必要ないよ」
と気楽にルノールは言ったけど、それは彼が貴族階級、しかも公爵家の長男だから言えることで、少々無神経に感じられた。
その点、オレアンは伯爵家の長男で、同じお貴族様でも、まだ親しみやすかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます