第2話


 翌日、結乃はドキドキと胸を高鳴らせながら開店の時間を待っていた。

 まだ頭にモヤがかかっていて、夢の中にいるみたいだ。

 兵頭に怒鳴られているところに、颯爽と現れ結乃を助けてくれた男性が、あの『シューさん』かもしれないなんて。

 彼は何者なのだろう?


「おーい、結乃!」

「え?あ、なに?」

「七号のケーキボックスふたつとってくれってさっきから何度も言ってるだろ?」

「あ、ごめん……」

「昨日からなんか変だな?夕飯も全然食わねーし……」


 貢は何かを探るように、ふたつの瞳をジロリと動かした。

 昨晩はなんだか胸がいっぱいになってしまって、絶対安静の母に代わり作った夕食もあまり食べられなかった。

 昨日のことを正直に話せば、結乃がセクハラ紛いの行為を受けたことを話さなければならない。

 気が長い方とは言えない貢のことだ。身勝手な振る舞いを大目に見てもらえた学生時代とは違う。大騒ぎにはしたくない。


「なんでもない!お母さんがいなくて、ちょっと疲れてたみたい」


 結乃は指定されたケーキボックスを棚の上から下ろすと、「はいっ!」と元気よく貢に渡した。


「ふーん……。ならいいけど?忙しくなったら呼べよ?」

「う、うん!わかった!」


 そんなやり取りをした数十分後。待ちかねていた開店時間がやって来る。



 目当ての彼は開店から三十分すると、ノエルに来店した。

 扉を押し開くグレーのスウェット姿が目に入ると、ドキンと心臓が跳ね上がった。

 半月型の唇がゆっくり開いていくと、結乃に緊張が走った。


「シュークリームとブレンドコーヒーひとつ。店内で」

「……はい。九百八十円です」


 定型のやり取りを済ませると『シューさん』はいつもの席に座った。

 結乃はトレーにシュークリームとブレンドコーヒーを載せると、しずしずと彼が座る窓際の席まで歩みを進めた。


「お待たせしました。シュークリームとブレンドコーヒーです」

「ありがとう」


 テーブルに皿とカップを置くと、トレーを両手で胸に抱きかかえ、大きく息を吸う。

 自分から話しかけるのは、相当な勇気が必要だった。

 昨日の恩人と『シューさん』。

 二人の共通点はシュークリームとブレンドコーヒーだけ。人違いという可能性だってあった。

 それでも構わないと、結乃は覚悟を決め口を開く。

 

「あの……昨日はありがとうございました!」


 結乃はお礼を言うと、彼に向かって深々と頭を下げた。

 コーヒーに口をつけようとしていた彼はしばしの間、面食らっていたが、やがてカップをソーサーに置き直した。


「ああ。別に気にしなくていいよ。乱暴な態度が目に余っただけだから。頭を上げてくれる?」


『シューさん』は結乃の畏まった態度にひたすら戸惑っていた。

 

(やっぱり『シューさん』だったんだ……)

 

 昨日のやり取りは夢や幻でもなく、間違いなく彼だったことに安堵する。

 スーツを着ていなくても髪型が変わっていようと、昨日の男性は『シューさん』だったのだ。

 結乃はスッと頭を持ち上げると、ピンチから救ってくれた英雄に改めてこう言った。


「お礼をさせてください!甘いものお好きですよね!?ケーキもシュークリームに負けないくらい美味しいのでぜひ召し上がってください!お好みのものをすぐにお持ちします!」


 勢いに任せ、ひと息で話しきった後で、自分の失態にはたと気がつく。


(押し付けがましかった……かも?)


 シュークリームが好きなら甘いもの全般が好きだろうというのは結乃の予想でしかない。

 強引にケーキをすすめたことを粛々と反省していると、彼は顎に手をやり何かを考え込んだ。


「うーん。確かにケーキも気になるけど……」


 どうやら、甘い物好きという予想は外れていなかったようだ。結乃がほっと胸を撫で下ろしたのも束の間。


「じゃあ、ひとつ頼まれてくれるかな?」

「へ?」


 思いも寄らぬお願いに、今度は結乃の方が素っ頓狂な声を上げることになった。



 ◇


 お礼がしたいと話した翌日。

 定休日にも関わらず、結乃は朝五時に目を覚ました。

 ムクリと布団から起き上がると、シャワーを済ませ、髪をブローする。

 そして、クローゼットからありったけの服を引っ張り出した。


(なにを着よう……)


 結乃のワードローブはオシャレという単語とは無縁の、貧弱なラインナップばかりだった。

 結乃はしばし悩んだ結果、今年買ったばかりのカシュクールデザインのシフォンワンピースを着ることにした。

 ウエストのゴムのおかげでスタイルが良く見えるし、ふわりと揺れる裾が可愛く、一緒に服を買いに行った友人からも褒められた。

 耳には働いている時にはつけられない雫型のイアリング。

 髪も少しだけアイロンで巻き、ハーフアップにしてリボンバレッタで留めた。


(お、おかしくないかな……?)


 姿見の前で一生懸命、考えみたものの、そもそもの正解が分からない。

 もう一度、前髪を整え直そうかと思ったその時、セットしていたスマホのアラームが鳴る。

 待ち合わせの時間は容赦なく迫っていた。


(急がなきゃ……!)

 

 結乃はバッグを持つと、慌てて部屋から飛び出した。

 廊下を小走りで駆け抜けていると、朝十時を過ぎてようやく起床してきた貢とすれ違う。



「なんだよ、朝からめかしこんで。出掛けるのか?」

「うん!行ってきまーす!」


 パンプスを履くと、誰と会うのか聞かれる前にそそくさと家を出る。

 信号待ちにの間にスマホを手に取り、『シューさん』へメッセージを送る。


(ええっと……『今から行きます』っと……)


 メッセージを送信してすぐ彼から『了解』と返事があり、思わず胸を躍らせる。

 結乃は昨日の会話を思い出していた。


『明日、お店は定休日だよね?』

『はい』

『少しでいいから外で会えないかな?一時間ぐらい……』

『大丈夫です!』

『じゃあ、駅前の噴水広場の前に十時集合ね』


 待ち合わせの時間と場所が決まると、ふたりは互いの連絡先を交換したのだった。


(落ち着くのよ、結乃!)


 男性とふたりきりで待ち合わせをしただけ。そこに特別な意味なんてないはず。

 そう何度も言い聞かせてみたはものの、自然と身支度には気合が入ってしまうし、手にはうっすら汗をかいている。

 待ち合わせ場所に到着し、ベンチに座る彼の姿が目に入ると胸のざわめきは大きくなる一方だった。



「結乃ちゃん、こっちだよ」

柊登しゅうとさん!」


 片手を上げて結乃を呼んだ、彼の名前は御厨柊登みくりやしゅうとという。

 奇しくも結乃が心の中で呼んでいたあだ名通りの名前だった。

 柊登は昨日のスウェット姿とは打って変わり、涼し気なリネン素材のジャケットとブルーのシャツを身に着けていた。

 あまりの男ぶりに、とても直視できない。

 ノエルに来る時とギャップがありすぎて、一体どちらが本当の柊登なのか、わからなくなりそう。


「お待たせしてすみません!」

「いや、俺が早く着きすぎたんだね」


 柊登は結乃よりもなお早く、待ち合わせ場所に到着していた。

 二人はたわいもない話をしながら、ベンチに腰を下ろした。

 平日の午前中ということもあり、噴水広場には人も少なく散歩と思しき人たちが何人か通り過ぎるばかりだった。



「休みの日に呼び出してごめんね。結乃ちゃんにはこれを食べてもらいたかったんだ」


 柊登はそう言うと、持参した紙箱を結乃にも見えるようにベンチに置いた。

 紙箱を開け中を覗き込むと、丸みを帯びた手のひらサイズの白い物体がいくつも収まっていた。

 

「大福ですか?」

「そう。フルーツ大福。和菓子は苦手?」

「いえ!大好きです!」

「それはよかった」


 柊登は食べやすいようにと紙皿とお手拭きまで準備していた。


「でも、どうして私に大福を?」

「俺、パティスリーやスイーツ専門店の経営コンサルタントをしているんだ」

「経営コンサルタント……」

「そう。職人達はスイーツ作りに自信があっても、店舗経営については素人だろう?ブランディングや資金繰りについてアドバイスしたり、腕のいい職人には出資して共同経営を持ちかけたり……」

「うわあ!そうだったんですね!」


 点と点がようやく繋がり、結乃は納得した。

 あの奇怪な食べ方は経営者ならではの、厳しい視点に基づいたものだったのだ。

 柊登は二年前に起業して以来、スイーツ店専門の経営コンサルタントとして、多くの製菓店の店舗運営に携わってきたという。

 いくつかの店舗では共同経営者として名を連ね、三十歳にして、既に五店舗もスイーツ店を経営しているそうだ。



「この大福は今度出店する店の試作品なんだ」

「試作品?」

「食べてみた感想を聞かせてもらえないかな?」

「そういうことなら遠慮なく……」


 ノエルのケーキを食べてもらうはずだったのに、逆にフルーツ大福を食べさせてもらうとは、まるであべこべだ。

 しかし、目の前のフルーツ大福の魅力には抗えない。

 なにを隠そう結乃はケーキだけでなく和菓子も大好物なのだ。


 紙皿の上に載せられたフルーツ大福は、嬉しいほどにずしりと重い。

 結乃はフィルムを剥がすと、ガブリと大きく頬張り、そして目を見張った。

 ひとくち食べただけでわかるこのジューシーさ。お高いメロンに違いない。


「美味しい?」


 結乃は口に大福をいれたまま、何度もコクコクと頷いた。

 その美味しさに感動し、幸せを何度も噛み締めてからゴクンと胃の中に流し込む。


「メロンの上品な甘みがさっぱりした白餡と相性が良いです!夏にぴったりです!いくらでも食べられそう!」

 

 やや大げさだが正直に感想を伝えると、柊登はクスクスと笑い出した。

 最初のひとつをあっという間に食べ終えると、二つ目へと手を伸ばす。

 柊登は終始ニコニコと結乃が食べる姿を見守っていた。



「ごちそうさまでした」


 フルーツ大福をふたつ食べきった結乃は、空になった皿に向かって両手を合わせた。

 さすがに一度に食べきれないので、残ったものは家に持ち帰ることにした。

 母と貢のお土産になってちょうどいい。


「気になる点はない?」

「え?」


 すっかり油断していた結乃は思わず聞き返した。


「洋菓子店の娘さんなら、舌が肥えてるだろう?率直な意見が聞きたいな」


 柊登から率直な意見が聞きたいと言われ、結乃は頭を悩ませた。

 生まれた時から洋菓子に慣れ親しんでいるとはいえ、結乃はパティシエでもないただの販売員だ。


「今のままでも十分美味しいですよ!私の意見なんてとても……」

「ノエルのケーキについているポップを書いているのは結乃ちゃんでしょ?」

「はい、そうですけど……」


 得意げに言い当てられ、結乃は目をきょとんとさせた。


「いつも感心していたんだよ。ケーキの特徴や味が伝わってくる説明で。誰にでもわかりやすいように、あえて難しい言葉を使わないようにしているだろう?ノエルが地元の人から愛されているのは、ああいった丁寧な仕事があるからだ。うちの店でも見習いたいくらいだよ」


 ポップは結乃が一番好きな作業で、いつも何を書こうか心を砕いている。

 手放しで褒められると、結乃も悪い気はしなかった。

 地味な作業にも価値を見出してくれた柊登に背中を押され、結乃は勇気を出した。



「あの、強いて言うなら……」

「強いて言うなら?」

「大福って求肥の色が全部白いじゃないですか?お年寄りとか子どもだと、シールを見落すこともあるし、中のフルーツが何か、もっとわかりやすくしてもらえるといいなあ……なんて……」


 大福を包むフィルムにはフルーツの名前が書かれたシールが貼ってある。

 採算と作り手の効率を考えれば、この方法が一番楽なことは結乃だってわかっている。

 しかし、購入した人の中には小さなシールを見落とす人もいるだろう。


「お役に立てたでしょうか?作る方は本当に素人で……」

「いや、とても参考になったよ。ありがとう」


 柊登は何か思うところがあったのか、思案に暮れる様子を見せた。


(変なの……)


 よく知らない男性とふたりきりという状況なのに、不思議と居心地は悪くない。

 いつもなら亡くなった父と貢以外の男性が近寄って来ると、緊張で身体がこわばってしまうのに、今日は自然体でいられる。

 助けてもらった恩があるせいだろうか。

 この人は信用できると、心が勝手に判断しているとでも?

 こっそり横顔を盗み見ていると、腕を組みかえようとした柊登とバチリと目が合った。


「結乃ちゃん」


 柊登はずいっと前のめりになり、結乃の頬に手をかけた。

 シュークリームを見つめる時と同じ眼差しで結乃をジイっと見つめ、徐々に美麗な面差しを近づけてくる。



(え?え!?)


 なにが起こっているのかわからず、結乃はただただ目を大きく見開くばかりだ。

 まつ毛の数さえ数えられそうな至近距離で見つめ合うことが、なにを意味するのか。

 初恋がまだの結乃ですら知っている。

 

(まさか……!?)

 

 突然訪れた口づけの予感に、結乃はぎゅっと目を瞑り首をすくませた。

 しかし、何秒経っても期待していたような出来事は起こらなかった。


「……ここ、粉がついてるよ」


 柊登はクスリと笑い、親指で結乃の唇のふちをなぞった。


「うん、取れた」


 柊登はウェットティッシュで指を拭うと、乗り出していた身体をすっと元の位置に戻した。

 羞恥のあまりカァーっと身体が熱くなる。


(なにを期待していたの!?)


 キスされるかもしれないと、あらぬロマンスを期待していた自分が恥ずかしい。

 穴があったら入りたい。むしろ、掘りたい。掘らせてほしい。



 その後の記憶は曖昧だった。

 結乃はなんとか体裁を取り繕うことに成功し、柊登とは広場の入口で別れた。

 足取りもおぼつかないまま帰宅の途に着く。


「ただいまー」

「おかえりー。随分と早かったのね」

「うん……」


 結乃は居間にいる母と手短に会話を交わすと、フルーツ大福をダイニングテーブルの上に置いた。

 貢は出掛けており、座布団を枕にしてひとりきりでテレビを見ていた。


「腰の具合はどうなの?」

「ぼちぼちってところ?大人しくテレビばっかり見てたわよ……」


 最初の内は、トイレに行くのですら人の手を借りる必要があったが、痛み止めと湿布が効いたのか、母の腰は順調に快方に向かっていた。


「フルーツ大福もらってきたけど食べる?今、お茶淹れて……」


 湯呑みを棚から出しかけたそのとき、結乃の目がテレビに釘付けになる。

 結乃は即座に母を押しのけ、ガバッとテレビに張りついた。


「ちょっと、結乃!見えないじゃない!」

「こ、ここ!ここ、この人!」


 結乃は口を金魚のようにパクパクと開けては閉じ、画面にアップで映し出されたある男性を指差した。

 男性は予約開始から三十分で完売するという『濃厚ショコラテリーヌ』を番組のキャストに紹介していた。

 母は孫の手で背中をかきながら、怪訝そうに眉をひそめた。



「なーに?あんた『スイーツ王子』を知らないの?洋菓子店の娘にしちゃあ、遅れてるわね」

「『スイーツ王子』!?」


 聞き慣れない単語に、思わず声が裏返る。

 結乃が指差したのは間違いなく、先ほどまで一緒にベンチに座っていた柊登だった。


 母はここぞとばかりに解説した。

 『スイーツ王子』こと、御厨柊登はスイーツ界の風雲児として、業界に数々の風穴を開けてきたという。

 小麦の産地すら見分ける『神の舌』と、時流を見抜く『千里眼』を巧みに操り、これまでプロデュースしてきた店は軒並み新たなトレンドを生み出してきた。

 

 誰が名付け親かは知らないが『スイーツ王子』のふたつ名は今やすっかり定着し、手がけるスイーツに負けず劣らずの甘いマスクも相まって、今やテレビに引っ張りだこ。

 絶賛、話題沸騰中の青年実業家なのだそうだ。


(柊登さんってそんなに有名な人だったの!?)


 母の話を聞き終えた結乃は目が回りそうになった。

 柊登が世間を賑わせている著名人とは知らずに、なんと気安く声を掛けてしまったのだろう。

 無知な自分への恥ずかしさと後悔が同時に押し寄せてきて、思わず絶望する。


(私ってば偉そうに……!)


 最悪なことに柊登に求められるがままに、彼が手がけるスイーツにアドバイスまでしてしまった。

 

(明日からどんな顔をして接客すればいいの!?)



 ◇

 

「シュークリームとブレンドコーヒーひとつ。店内で」

「はい……」


 いつも通りノエルにやって来た柊登とは対照的に、結乃の声には力がなかった。

 結乃は柊登がシュークリームを食べ終わるのを待ち、席まで謝罪に赴いた。


「昨日はすいませんでした!私、実は柊登さんが『スイーツ王子』と呼ばれるような凄い人だって知らなくて。色々と失礼を!」


 昨晩、柊登が経営しているお店を調べた結乃はひえっと、恐れおののいた。

 柊登のお店はどれも、有名なパティシエが監修を手掛ける超人気スイーツ店だったのだ。

 無知というのは恐ろしい。

 ひたすら恐縮しっぱなしの結乃に対し、柊登はさして気にした様子もなく、淡々とコーヒーを飲みながら答えた。

 

「ついに知られちゃったか……。本当に大層なあだ名だよね。王子って柄でもないのに」

「そんなことないです!助けてもらったとき、本物の王子様みたいでかっこよかったです!」


 本音がつい漏れ出て力説すると、柊登は弾けるような笑い声を上げた。

 

「あはは!ありがとう!全部バレちゃったみたいだし、もう変装する必要もないかな?」


 あのスウェット姿は変装のつもりだったのか。

 確かにテレビそのままの姿で来店されたら、目立ちすぎる。

 最初からスイーツ王子のオーラを全面展開されていたら、結乃も柊登を警戒していただろう。



「それにしても、ノエルのシュークリームは本当に美味しいよね。特にこのカスタードクリームがいい。コクがあって、まろやかだ。シュー生地の方もかなりこだわっているし、焼き方も絶妙としか言いようがない!一度パティシエだっていうお兄さんに話を聞きたいなあ……」


 堰を切ったように溢れ出す賛辞に結乃はすっかり圧倒された。

 柊登はキラキラと目を輝かせ、シュークリームを見つめていたが、あっと呟き我に返った。


「ごめん。仕事柄、つい……。俺、すっかりノエルのファンで」


 柊登はやってしまったとばかりに、恥ずかしそうに額に手を当てた。


「ふふっ。あははっ!」


 我慢しようと奮闘したが、結乃はとうとう吹き出してしまった。

 シュークリームを食べながらいつもそんなことを考えていたのかと思うと、おかしくてしかたない。


「柊登さんは本当にスイーツが好きなんですね」


 結乃よりもずっと年上なのにスイーツのことになると子供みたいだ。

 笑われた柊登は照れくささを誤魔化すように、コーヒーごとゴクンと言葉を飲み込んだ。

 その日以来、柊登は朝以外にもノエルに立ち寄るようになった。

 

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