第4話 推理解答編 親子 ②父親

推理解答編 親子


 ②父親


 俺の名前は工藤仁くどう ひとし。物心ついた時から親父はいなかった。母ちゃんはいつも酒に酔っては俺を殴った。そして俺が小学3年の時、母ちゃんは家を出たまま帰って来なかった。養護施設で育った俺は、悪い仲間に誘われるまま色々な犯罪に手を出した。働きだしてからも、少年院帰りの俺は職場で陰湿な嫌がらせを受け、我慢出来ず暴力をふるっては首になり職を転々とした。

 こんな生活から抜け出さなければいけない、そう思っていた頃、昔の仲間に誘われ商売をすることになった。そいつは自分は人の上に立つ人間じゃないからと、俺を代表者にしてくれた。出資金名目で金が必要になり、俺はそいつから紹介された金融機関から金を借りた。すると、その日のうちに金と共にそいつも消えた。

 俺は借金返済の為、その金融機関の社長に雇われている。まともな仕事でないのは確かだが、俺には選択権は無かった。毎月の給料はほとんどが返済に回っている。

 そんな矢先、彼女と出会った。こんな俺を好きだって言ってくれて、悪い仕事からは足を洗って欲しいと。俺は社長に頭を下げ、地道に働きながら返済するつもりだった。

 しかし、彼女は突然俺の目の前から消えた。「ごめんなさい」との書置きと共に。

 目の前が真っ暗になり、もう何もかも嫌になった。所詮、俺には人並みの幸せなんて望めない、そう開き直って今回の誘拐を引き受けた。


 ガキが逃げ出した時は青ざめちまった。他のグループが昨日誘拐に失敗して、社長から半殺しに合ってたからなあ。やっと捕まえたと思ったら、駅前で大騒ぎしやがって。まあ、なんとか黙らせることが出来たが、あの爺さんがジロジロ見てたのには冷汗もんだったぜ。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 さて、次のお客様はまだかのう。


 

 第5話 ストーカー へ続く

 

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