第18話:圧勝と半島国家
克徳の雷光のような突きを、魔族大将がギリギリ避ける。
「人間如きが思い上がるな!」
紙一重で避けられたが、命の危険を感じた魔族大将が負け惜しみに叫ぶ。
その気持ちを敏感に察したアースドラゴンが、克徳を噛み殺そうとする。
魔族大将の恐怖感と克徳の殺気にあてられて、暴れ馬のように跳ね回る。
「我は中級魔族、下級魔族とは違う!」
魔族大将が恐怖感を振り払うように大火炎を右腕から放つ。
その青白き炎で1万度以上の高温だと分かる。
克徳はその一撃必殺魔術を楽々と避け、槍で首を刎ね飛ばす。
そのまま槍を縦横無尽に操り、魔族大将が生き返らないように四肢を刎ね飛ばす。
更に跳ね飛ばした頭を両断し、心臓を刺し貫く。
心臓を貫いた後で胸部と胴体も輪切りにする。
「魔族大将討ち取ったり!」
「「「「「ウォオオオオオ」」」」」
一緒に戦っている信徒や神使たちが一斉に歓声を上げる。
ライブ配信を観ていた世界中の人々も一斉に歓声を上げる。
とんでもない信仰力がとめどもなく克徳に集まって来る。
一方、敵の魔族やモンスターは意気消沈した。
必勝を期して出陣した大将が討たれ、主だった指揮官も全員討たれているのだ。
戦意が地の底まで落ちて、全員逃げ出すのも当然だった。
これまで、何の抵抗もできない民間人、特に女子供を殺してきた連中だ。
逃げたから見逃してやるなどという気持ちにはなれない。
逃げる背後から斬りつけて全魔族と全モンスターを殺した。
殺して終わりではなく、魔力を増やすために食べる。
だが流石に魔族やモンスターを食べる姿をライブ配信できない。
ライブ配信中の映り込みは仕方がないが、できるだけ配信しないようにする。
「今日はこれでライブ配信を終わらせてもらう。
今から魔族の都市を攻め滅ぼすが、中に囚われている人間がいるかもしれない。
そのような姿をライブ配信するのは、地球に戻る人の弊害になるかもしれない。
次のライブ配信は、都市に囚われている人を全て助け終わってからになる。
それまでは、編集した名場面集を観ていただきたい、ではまた」
克徳がライブ配信を終了させてから、神使たちが本格的にモンスターを食べる。
強大な魔族を食べる事で、熾神使を超え上級魔族にも勝てるほど強くなった。
ライブ配信で信仰力も得た魔力持ち信徒は、少しずつ荒神や鬼神に近づく。
神通力だけを増やして来た信徒は、小規模な宗派の神仏に匹敵する力を得た。
特に高井彩葉を始めとした女性はとてつもない神通力を得た。
人々を助ける戦士であると同時に、アイドルのような存在になる。
なかには救世主のような女性、聖女として崇める人々までいる。
その後も克徳たちは衆議院の投票日まで毎日異世界でモンスターを斃した。
どのライブ配信も編集動画も、莫大な神通力を手に入る。
同時にダンジョンで毎日食用獣を狩り、日本中に配った。
ただし無料で配った訳ではなく、正当な報酬をもらって配る。
選挙買収だと言われないように、公私の別はキッチリとつける。
ただ、公にNPO登録して活動している候補者は無料で食料を提供している。
孤児院や介護施設に食料を無償提供する動画が投稿される。
子ども食堂に食料を無償提供する動画や、候補者自身が料理をして、困窮している人々に食事を無料提供する動画も投稿される。
与野党関係なく、これまでの政治家とは月とスッポンだ。
逮捕されずに出馬した現職議員と、逮捕収監された現職議員の穴埋めに出馬した与野党の候補が全員が落選して、克徳が創った政党の候補者が全員当選した。
ただ、比例区で戦うためには、事前に政党要件を満たす必要があった。
だから仕方なく、神仏が選んだ与野党議員を10人だけは政党に加えていた。
その人たちも全員衆議院選挙に当選した。
普通では考えられない、衆議院の議席100%となった。
参議院には1人の議員もいないが、この状態が続けば参議院選挙でも100%の議席を得るのは目に見えていた。
衆議院選挙に圧勝しても克徳たちの生活は変わらなかった。
朝早くから神仏に祈り、ダンジョンで食料獣を狩り、ゲートを越えて異世界に攻め込んでモンスターを斃す。
衆議院選挙区の代表、自分たちの代表が命懸けでモンスターと戦うのだ。
ほとんどの日本人が応援して祈るようになっていた。
選挙期間中は興味本位で観ていた人も、いつの間にか応援するようになっていた。
巧みなスイッチングと編集によって、ファンになった人が多数いた。
金銭や物を渡すのではなく純粋に応援するだけで良いので、大半の日本人が何の抵抗もなく祈り信仰力を送るようになっていた。
ナレーションやテロップで教えられて、1番の推しはライブ配信で観るが、2番目以下の推しを後で観て応援するのも常識になった。
このまま上手く行けば、日本だけは魔族やモンスターを恐れる必要が無くなる。
そう思われたのだが、周囲の国々の悪政によってモンスター禍が続いた。
共産党の、いや、特定の一族が独裁していた半島国が崩壊したのだ。
大陸の共産党国家が、神仏の加護がなく広大な主要地区が崩壊していた。
少数民族区や自治区は神仏を崇めていたので、辛うじてゲートを塞いだ。
共産党の独裁政治家や大富豪が逃げ去ってから、死力を尽くして塞いだ。
大陸の共産党国家から支援が無くなった半島独裁国は、北の大国に助けられた。
北の大国の軍事力や、自国の核弾頭を使ってでもゲートを閉じて来た。
だが流石に、同じ半島の先にある民主主義国家との国境間際に現れたゲートは、北の大国も援軍を出せず、独裁国も核弾頭を使えなかった。
いや、独裁国は極貧国でもあったので、通常弾道も核弾頭も使い切っていた。
半島民主主義国は、国境にモンスターが集結した事で独裁国内にゲートを現れたのに気が付いたが、激烈な内戦を経験した事もあり、先に手を出す事ができなかった。
どの国も手出しできない間に続々とモンスターがゲートを通り、徐々にゲートが大きくなり、グリフォンやマンティコア、遂にはウィンドドラゴンまで出現した。
それどころか、邪神と互角の下級の魔族までがゲートから出てきてしまった。
そんな強大な下級魔族の指揮で、モンスターが独裁国の人々を虐殺して行った。
地下基地に逃げ込んだ独裁者一族も皆殺しにされ、国が崩壊した。
邪神と互角に近い戦いをしたアースドラゴンと同格の、ウィンドドラゴンより強い下級魔族が現れたのだから、民主主義国家と駐屯する米軍が慌てたのも当然だった。
独裁者一族が生き延びていたとしても、もう見過ごす事ができなかった。
独裁国の領空に入ってでもゲートを閉じようとした。
だが、出撃しようとした米軍たちの決断はほんの少し遅かった。
下級魔族に指揮されたモンスター軍団が南進してきたのだ。
民主主義国家軍が必死で首都を守ろうとするが、次々と撃破され殺された。
戦車や装甲車が叩き潰され、勇敢な兵士たちが紙屑のように引き裂かれる。
烏山、群山、水原空軍基地の米軍機が獅子奮迅の戦いを繰り返す。
ただ、多勢に無勢、ミサイルや銃弾を撃ち尽くすと撃墜された。
北の大国の戦闘機も独裁国のゲートを閉じようとする。
翌竜プテラノドンのようなモンスターとドックファイトを繰り返す。
だが、ミサイルや機銃の弾薬を討ち尽くして撃墜される戦闘機が続出する。
半島民主主義国軍、在留していた米軍、北の大国軍も拠点となる基地をモンスターに襲われ、完膚なきまで破壊された。
半島民主主義国の政治家や官僚は防魔地下基地に逃げ込む。
半島民主主義国の民は手抜き工事で基準よりも脆い防魔砦や防魔室に逃げ込む。
だが、逃げ遅れた人たちはほぼ皆殺しにされる。
外で生き残っているのは、出産可能な女性ばかりだ。
「緊急避難警報、緊急避難警報、隣国にゲートが出現しました。
至急防魔砦か防魔室にお逃げください、至急防魔砦か防魔室にお逃げください」
独裁国を南進したモンスターが、半島民主主義国を越えて日本に押し寄せる危険が高くなり、日本中に避難勧告が出された。
「我々がモンスターを迎撃する。
国民の皆さんは1番近いダンジョンに避難されてください。
モンスターを滅ぼしたら安全宣言をします。
それまでの間、ダンジョンに避難されてください。
ダンジョンに避難できない人は、防魔砦か防魔室に逃げてください」
克徳たちは迎撃の準備をしながらライブ配信した。
全国民、特に自分を推してくれている選挙区民やファンに避難を勧めた。
だが克徳たちのライブ配信を観ているのは日本人だけではない。
世界中の人々が、特に半島民主主義国で生き残っている人々が熱心に観ていた。
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