第14話:ゲート封鎖と新生ダンジョン
克徳たちは高知県に上陸したモンスターの討伐を終えた。
だが、まだ海中にいるモンスターの討伐は終わっていない。
いや、単に海中のモンスターを討伐すれば良い訳じゃない。
海上か海中に開いた巨大なゲートを探し出して、閉じなければならない。
通常なら、陸海空の自衛隊で包囲封鎖できないゲートは神仏が閉じる。
早い話が、陸自が封鎖できない空中と海上海中のゲートを神仏が即座に閉じる。
とはいえ、日本の神仏の神通力も無限ではない。
陸上のゲートを閉じないのは、空と海のゲートを優先的に閉じる為だ。
それも、人の住む場所を中心に外に行くほど閉じるのが遅くなる。
神仏がどれほど頑張られても、排他的経済水域までしか目が届かない。
だから、今回襲って来たモンスターは日本の排他的経済水域内から来ていない。
日本の排他的経済水域外にあるゲートを出て、日本にまで攻め込んできたのだ。
これが偶然なら好いのだが、地球の邪神が異世界神と手を組んだのなら大事だ。
それもあって、日本の神仏はこれまで自重していた事を解禁した。
人に憑依してお告げをしたのだ、尊き方の皇女に憑依してお告げをしたのだ。
マスゴミを無視して、世界中の動画サイトにお告げを投稿して国民に知らせた。
「日の本に暮らす人々に告げる。
異世界の神に加えて、地球の邪神までが他教徒を殺そうとしている。
この状況では、今までのように下界に手出ししない訳にはいけなくなった。
我が守ってやる、順番に各地のゲートにダンジョンを付与するから、そこに住め。
ダンジョンの中にいればモンスターに襲われる事はない。
ただし、ダンジョンの中に入れるのは神仏の信徒だけだ。
モンスターと邪神の信徒はダンジョンに弾かれるから安心せよ。
ダンジョンに入りたい者は、邪教から改宗せよ。
ダンジョンの入り口に神仏の像を置くから、心から祈りを捧げよ。
新たに創るダンジョンの管理は克徳たちに任せる」
神仏に憑依された皇女殿下は、そこまで言うとカメラの前で倒れた。
最も力の弱い神仏であっても、人の身に憑依させるのは激烈な負担なのだ。
神仏が最初にダンジョンを創られたのは、四国四県だった。
「多くの者が観ていたと思うが、俺が神仏からゲートを任された克徳だ。
先の陸自事件と今回の陸自事件で俺の顔は知っているだろう?
だが、他人の言う事など信用できないだろう?
特に動画配信だけだと、AIによるフェイクや詐欺が心配だろう?
だから、皆が知っている一番身近なゲート前に行ってくれ。
新たなダンジョンや遠くのダンジョンに行けという動画やメールは詐欺だ!
絶対に信用するな、一番近くのゲートに行け、いいな!
金を払えとか金を渡すとか、食料を与えるという動画やメールも詐欺だ。
一番近くのゲートに行けという動画やメール以外は嘘だ、絶対に信じるな。
ゲート前に行ったら、強大な神使が守っているから安心しろ。
今回の陸自事件動画に映っていた、角翼狼か角翼犬が守っている、安心しろ!」
克徳と神使たちは、神仏がお告げした通りゲートにダンジョンを創っていった。
実際に創るのは神仏だが、克徳が祝詞を上げたらできるので、まるで克徳がダンジョンを創りだしているように見える。
新たに創られたダンジョンの前には、多数の神仏壁画が横並びに刻まれている。
入口の一番近くには、事もあろうに克徳の壁画が刻まれている。
壁画だけでなく、無数の神使たちがダンジョン入り口を守っている。
ダンジョンに逃げ込もうとした人々は、全ての神仏壁画に祈る。
行儀よくダンジョンを守っている、平から座までの神使たちにも祈る
ダンジョンの入り口からしばらくは高さ4メートル幅3メートルだが、その左右天上には神仏壁画が刻まれていて、心から祈りを捧げないと先に進めない。
現に自分以外に神はいないと言う、邪神の信徒がダンジョンに入れなかった。
ダンジョンの中に灯りはなく、人々はLED懐中電灯を使っている。
200メートルほど歩くと、道が直線と左右に分かれた。
そこから先は、何十もの分かれ道が等間隔に左右にある
左右の分かれ道に入ると延々と扉が並んでいる。
扉が向き合わないように少しずらして、分かれ道の左右に扉が並んでいる。
『左右の通路にある扉は、お前たちの家の玄関になっている』
左右の通路の前にいた犬の権神使が人々の心に話しかけた。
全員が飛び上がるほど驚いたが、犬権神使は構う事なく話し続ける。
『扉は神仏に祈る事で開閉する。
信心を無くしたら扉が開かなくなるから気を付けろ』
通路を守る犬権神使に言われて全員がギョッとする。
『心からの祈りが重なれば、祈りを捧げた神仏の姿が扉に浮き彫りになる。
祈りを捧げる神仏は1柱でなくて良い。
心から祈りを捧げる神仏が多ければ、浮き彫りになる神仏が増える。
部屋の中で祈れば、お前たちを守ってくださる神仏の姿が壁に浮き彫りになる。
お前たちの祈りが届けば部屋も広くなるぞ』
話を聞いた人々が、争わないようにしながら急いで部屋を確保しようとした。
争ったら神仏に罰せられ、ダンジョンから放り出されるのは分かっている。
だから争う事なく、先着順で部屋を確保していった。
「部屋を確保したら、次は食料を確保してもらう。
神仏がダンジョン獣を創ってくださるから、狩りの経験者は食料階層に行け。
分かっているだろうが、ダンジョン内での食料独占は許されない。
神仏の罰を受けて、ダンジョンから放り出されると思え。
管理している神使の指示に従って、ダンジョン内にいる全員で公平に分けろ。
いずれは狩りに参加した人間で公平に分けるが、今は狩りに参加していない人間にも公平に分けるのが神仏の思し召しだ、分かったか!」
克徳が言った事を、ダンジョン各所を守っている神使たちが人々に伝える。
他のダンジョンにいる人たちにも、各所を守っている神使たちが伝える。
ダンジョンの外にいる人たちには、世界中の動画配信サイトを通じて伝える。
「今のダンジョン内には電気も水道も通っていないからとても不便だ。
だが、何時モンスターに襲われるか分からない外よりは安心だ。
外の便利な場所が良いという者は、非常時にだけダンジョンに逃げ込め。
国や市町村が本気で取り組めば、電気もガスも水道もダンジョンに通る。
だが、外と同じようにモンスターが現れる度に寸断される。
もうモンスターが現れる前の生活には戻れないのだ、現実を受け入れろ。
ダンジョンと外のどちらが良いのか、自分で真剣に考えろ」
克徳の言葉がまた神使たちを通して人々に伝えられる。
人々は本気で今後の事を考えたが、なかなか答えが出ない。
ただ、今ダンジョンに逃げ込む人々は外が不安な人が大半だ。
外の方が良いという人は、自宅の防魔室や防魔地下室に隠れている。
国や地方自治体を信じている人は、防魔砦に逃げ込んでいる。
ただ、これまでは国や地方自治体を信じていた人も、たった今ライブ配信された自衛隊の悪事と、つい最近あった自衛隊の悪事で国を信じられなくなっていた。
「ダンジョンに逃げ込んだ人たちで、このままダンジョンに住む覚悟の人たちは、近くにいる神使の指示に従ってダンジョンの奥に行け」
全ての人が一斉にダンジョンに逃げ込んだわけではない。
家からダンジョンまで直ぐの人もいれば遠方の人もいる。
決断に時間がかかる人もいれば、家財道具を持って逃げて来る人もいる。
まだ不安で、どうしていいか決断できない人もいる。
克徳も神使たちもそんな人たちを急かしたりはしない。
ダンジョンに永住すると決めた人たちだけを、神使たちは奥に連れて行く。
ダンジョンの奥には、克徳の願いを聞いて神仏が創った大池がある。
大池の水は地球上のどんな湖沼よりも清らかで、飲料水に使える。
人の住む通路の近くには、同じ様な聖浄水がコンコンと湧く井戸がある。
「ダンジョンの池に亀や蟹、鯉や鯰、鮒などを放流しても好い。
ダンジョン獣だけに頼らずに、食料を確保できるようにしろ」
神使たちはダンジョンで人間の案内をしていただけではない。
信徒と共に異世界に侵攻して、見張りのモンスターを皆殺しにする。
神通力しか身体に宿さない信徒たちは、魔力の武器を持てば2倍の強さになる。
異世界の神や権力者たちは、これまでゲートを通って攻め込んでくる神使たちを基準に見張りを配置していたので、全く歯が立たずに皆殺しにされた。
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