第5話 反省
「…そういえば、さっきの試合は私の勝ちですからね」
我家は自分の手に包帯を巻きながら話す。
「はぁ?あんなにやられてたやつが何言ってんだか…」
「鬼ごっこは鬼が逃げ手に触れれば鬼の勝ちですよ」
紺南は先ほどの鬼ごっこのときに、勢いで我家の腹を殴ったことを思い出した。確かにあの時、触れていた。
「それはそうか…私の負けか…。それよりも君のお腹大丈夫?」
「あんなの痛くも痒くもないですよ」
紺南は我家に疑いの目を向ける。
「……それよりも、紺南殿は乱定剣がお得意なんですか?」
「ああ、乱定剣はよく使うよ」
「すごい覚悟があるんですね。私にはまだ覚悟が決まらず、乱定剣はなかなか使えません」
我家の言葉を聞いて紺南は声高らかに笑った。我家は思わず眉を顰める。
「ごめん、ごめん。でもまあ、歳を取れば怖いものなんてなくなるからね」
その時、医務室の戸が開けられた。戸を開けたのはこの部屋を仕事場としている勘鬼ではなく、アサギリ隊の組頭である
「あいつらの点呼して、解散させたぞ。黄昏ドキ班の者は全員いたな。ただ、アサナギ隊に関してはもとから何人いるかわからなくて…数えたところ三十一人いたのだが、これで全員か?」
「二人少ない…」
紺南が呟く。
「数えてくる」
紺南は医務室を飛び出した。我家はそのあとに続いて部屋を飛び出す。家伊はそれを追いかけた。
アサナギ隊の者たちは再度、第二訓練場に集められた。規則正しく並ぶアサナギ隊の者達を紺南は前から確認する。その間に我家は第二訓練場に取り残された人がいないかを確認する。
「
紺南は小さな声で呟く。
確認を終えた我家が紺南のところに来る。紺南が結果を聞くと、我家は首を横に振った。第二訓練場に取り残されたのは誰一人いない、ということだ。惣太と薄原は一体どこに行ってしまったのだろうか。
紺南は全員に解散の合図をかけた。組頭の指示に逆らえるわけもなく、アサナギ隊の者達は文句も言わずに帰っていった。
人がいなくなった第二訓練場には静寂が広がる。
「……紺南。こんなことは言いたくないのだが、最悪の事態を想定しておいた方がいいぞ」
家伊が重々しく言う。
「…アサギリ忍軍では音信不通になって十日経てば忍軍を抜けたとみなさる。そして、見つけ次第すぐに殺さなければならくなってしまう」
我家が続ける。紺南は黙り込んだ。あいつらに限って裏切るなんてありえない。せめて、便りが届けば…。
「紺南。何かあれば私達も協力する。だから、一人で抱え込むなよ」
「ああ、ありがとう。……このことは私の部下には秘密にしておくよ。人数も多いし、混乱を招くことになるだろうからね。」
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