第5話 電車での時間

クラス懇親会当日、俺は目的地のボウリング会場に行くための電車を駅で待っていた。


天気も崩れることはなく快晴であり、絶好の外出日和であった。


集合時間は午後からなのだが、俺は少し早い電車に乗っている。なんでも蓮と如月さんが先に行って他の人たちを待っていると言ったからだ。


正直俺が行ったところで何も役には立たないが、この企画の発端には少なからず関わっているため同じ時間に行くことに決めたのだ。ちなみに結城さんも同じ考えだったらしく、俺たち1番グループのみ早めの現着となっている。


けどまさかこの4人が同じグループになるとはな…。


グループを決めた日の放課後、俺は帰宅の準備を進めていたがクラスメイトに少し絡まれたのだ。といっても暴言なり暴力をされたわけではい。


……おそらく牽制されたんだと思う。同じグループになれて羨ましい、実際結城さん如月さんのことどう思ってるんだよ、気まずいならグループ変わってやるよ、などと…。


ちなみにグループ変わってやるよと言ったやつはバスケ部所属の武井だった。


同じバスケ部所属だから気を遣ってくれたのか、それとも結城さん如月さんに何か想うところがあるのかはわからない。勘になってしまうがおそらくは後者によるものだと思っているが。


今日も何か言われるんだろうな…と考えていたら、電車が来たので乗ることにする。



◆◆◆



休日ということだったが、あまり混んでいることはなかった。ただ座れるほど空いていなかったので、ドア付近に立っていることにした。


他に乗車する人をぼーっと眺めていたら、ある彼女が乗車してきた。他のクラス男子であれば喜ぶべき場面であったかもしれないが、俺としてはなんとも微妙な感じだ。


「あ、あの…おはようございます」


「…おはよう」


「神崎くんもこの時間の電車だったんですね」


「ん…そういえば最寄り駅一緒だったか」


そう言って挨拶をしてきた結城陽菜乃は俺の隣に移動してきた。おどおどしていて少し気まずそうだ。


「……結城さん。俺の服装そんなに変かな?」


「えっ…な、なんでですか」


「いや、そんなに見られたら誰でも気になるというか」


隣に移動してきてからか、結城さんは俺のことをじーっと見てきた。そんなに俺の服装変だったかな…。


今日の服装は黒のジーンズ、上は白の長袖にカーディガンを羽織っている。特別おしゃれではないがそこまでファッションに興味があるわけではないので変と思われなければ別に問題ない。


「ち、違います!その…普段は制服なので私服は新鮮だなと」


「あぁ、確かにそうかもね」


てっきり結城さんは休日は色んな人と遊んでいるものだと思っていたがそうでもないのかもな。部活の練習もあるだろうし忙しいのかもしれないな。


「なので…に、似合っていると思います」


そう言った結城さんはニコッと笑った。


…この笑顔は反則だな。容姿も相まってクラスで人気な理由が理解できる。


「あ、ありがとう…結城さんも凄く似合ってるよ」


彼女はクリーンな白色のロングスカート、上着にはボーダーニットに俺と同じくガーディアンを羽織っている。とても大人びた印象があるファッションだ。


「うぅ…ありがとうございます」


少し恥ずかしながら彼女はそう応えた。


なぜそんな反応をするんだ…。


それから会話が続くことはなく、電車が発車してからも2人は終始無言であった。



◆◆◆



ボウリング会場はここから電車で約30分ほどかかる。理由としてはクラスのほとんどが電車通学だからだ。中には数時間かけて通学している人もいるとか。


そこに配慮したのか、なるべくクラス全員の中間地点になる場所となった。そのあたりの気遣いは流石だなと感じた。


「あの……」


「ん…?」


「い、いえ…なんでもありません」


すごく結城さんが気まずそうにしている。


おそらく入学式前にあったことを気にしているのだろう。あの時は俺も動揺していて冷たい反応をしてしまった。正直結城さんに落ち度はまったくないからなあの出来事に関しては。


今日俺と同じグループにもなっているし、余計に気を張っているのかもしれない…。もし結城さんが今日のことを楽しみにしていたなら申し訳ないな…。


なら…俺が態度を改めなければならない。


「結城さん…もしかしてあの日のことを気にしているのかな」


まずは事情を確認してみる。もしかしたらただ俺といることが嫌なのかもしれないし…。


…もしそうだったらちょっと傷つくけど。


「いえ…そんなことは…」


「正直に言って大丈夫だよ。その…あの日のことは俺も申し訳ないと思っているから」


「そんなことないです!あれは私が…その…神崎くんのことを考えないで色々聞いてしまったから」


まぁ確かに色々言われたり聞かれたりしたが、別にそこまで気にしてはいない。正直なぜそこまで気になっているんだとは思ったが、そこは彼女の事情なので関係ない。


「俺は気にしてないから大丈夫…。その、今日はせっかくクラスのみんなで遊ぶからあの日のことは一旦考えないで楽しもう」


「は、はい。そうですね…今日は楽しみにしていたので、神崎くんも楽しみましょう」


「うん、そうだね」


これで少しは緊張が取れてくれていたらいいんだけども…。とにかく俺のことが生理的に受け付けていないというわけではなくてよかった。


「あの…神崎くんはボウリングは得意ですか?」


「小学生の時に行った以来かな…。結城さんは得意だったりする?」


外から見たら少しぎこちないかもしてない。それでも俺と彼女は少しずつ会話をしていくことができた。


到着まで残り15分ほどだろうか…そんなことを考えながら俺は結城さんとの会話に集中することにした。




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お疲れ様です。作者です。


結城陽菜乃さんが色々緊張だったりしているのは理由があります。

それはどこかで回収予定できたらなと。

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