強者は勝者ではない
レインは言葉とは裏腹に手は震えていた。
レインは冷静を繕っていたが、シクザールの策略に警戒している。
レインは静かにパスを選択した。
1周し、またレインのターンとなる。
つまり、分かることは、レインはJ以上の2枚出し出来るカードを持っていないということ。
問題なのは次レインが何を出すかということ。
『ベット1P』
出したカードは『4』!
僕のターンになり、この時点で
根拠なんてない、だけど僕は勝てる。何故かそう思っていた。
僕はゆっくりと、『Q』のカードを出した。
「レイズ2P」
予想通り全員がパスを選択する。
あまりにも思惑通りすぎて思わずにやけ顔が出てくる。
そして『8』のカードを出し、山札が切り上げ再度自分のターンとなる。
「ベット1P」
勝てる。その言葉だけが僕の中を埋め尽くしていた。
僕は無根拠な自信と、シクザールを信じる心だけがあった。
僕は『3』のカードを出し、「ベット1P」と宣言する。
それは大富豪では、最弱なカード。シクザールの手札によっては自滅する手。
何故そんな手を選んだのか、僕ですら分からない。ただ分かるのは、僕が楽しんでいるということ。
そして、シクザールのターンとなる。
シクザールは狙った瞬間と言わんばかりに『7』のカードをさっと出した。
「レイズ、99P」
そのあっさりとしたターンは誰もが一瞬固まったほどだった。
レインのターンとなり、レインはまるで断頭台に立っているような顔になっていた。
まるで願うかのように、何度も、何度もカードを睨めっこする。
「シクザールぅうう!悪魔が!このレインと戦うんじゃないのか!?」
苦し紛れのような言葉をシクザールに向けて放つ。
シクザールは豆鉄砲を食らった鳩のような顔になりながら言った。
「なにか勘違いしているようだけど、ボクは君と戦ってなんかいないよ。ボクは、ボクのゲームを楽しんでいるだけなんだからさ」
そしてレインはまるで諦めたかのように『パス』を選択する。
僕の手札は残り1枚。それは僕の勝ちが確定した瞬間でもあった。
僕は見せびらかすように『9』のカードを卓に叩きつけた。
「レイズ100P!」
こうして、僕の勝利となった。
圧倒的高揚感、何故か不思議と、頭の中はスッキリと透き通っていたことが分かった。
満ち足りる余韻を僕は少し楽しんでいた。
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