第4話 たぬきの置物と大山君の『意外な類似性』
さて、大山君と同棲を始めてから『奇妙な体験』をするようになった私ですが、大山君との関係はいたって良好です。大山君は大の料理好きで、しかもヘルシーで美味しい料理をいつも作ってくれるので、本当に感謝しています。
一方の私は、掃除と洗濯を担当しています。家事の分担が自然にできているということは、これから先のことを考えると、とても安心です。
これから先のことを考えると、『夜の関係』も大切になってくるわけですが、実は、大山君には少し変わった特徴があります。ただ『少し変わっている』というだけで、別にそれが悪いわけではありませんし、決して問題というわけでもありません。
私としても、それを直してほしいとも思いませんし、そもそも直しようもないと思うので、今となってはそれを自然と受け入れています。
二人で録画したグルメ番組を見ていた時のことです。『古き良き』という雰囲気の定食屋さんの店先に、大きなたぬきの焼き物が置かれていました。たぬきの大きな睾丸が画面に映し出されると、スタジオの芸人さんが『おい、そんなとこアップにすな!』とツッコミを入れていました。それを見て、私も大山君も楽しく笑いました。
「……あ」
しかし、睾丸の大きいたぬきの焼き物を見て、私はふと大山君との類似性を見出してしまいました。
「どうしました?」
「……い、いえ、何でもありません」
もしかすると、大山君は自身の大きな睾丸にコンプレックスを抱いているかもしれません。私は一つ前の洋食屋さんのハンバーグを思い出し、何とか話題を変えることに成功しました。
ですが、番組がいいところでCMに切り替わると、大山君はおつまみの『どんぐり』をポリポリと食べながら、自分からたぬきの置物に話を戻してしまいました。
「それにしても、さっきのたぬき、金玉が小さかったですね~」
「ぶふッ⁉」
『のほほん』と凄いことを言う大山君に驚いてしまい、私は飲んでいたビールを思わず噴き出してしまいました。
「ど、どうしました? 大丈夫ですか?」
急にビールを噴き出してしまった私を見て、大山君はひどく心配していました。
「だ、大丈夫です。問題ありません」
私は周りを綺麗に拭くと、空になったコップに再びビールを注ぎました。柿ピーに手を伸ばしたころ、ちょうどCMが終わり、グルメ番組が再開しました。
「……大山君、本当にあれで小さいほうなんですか?」
「あれ?」
「……さっきの、たぬきの焼き物のことです」
「ああ~」
大山君は嬉しそうに顔を綻ばせました。
「だって、あんなに大きい狸なのに、金玉は僕のより小さいじゃないですか~」
「そ、そうですね……」
他の人のそれを見たことはありませんが、大山君のものはとても大きいです。敢えてどれくらい大きいかを表現することは控えますが、とにかくとても大きいです。
もしかすると大山君にとってはコンプレックスかもしれない思い、今まで密かに心配していたくらいですが、この様子では、むしろそれが大きいことを誇りに思っているようにすら感じられます。
「たぬきは、何といっても金玉の大きさが大切ですからね~」
「はあ、なるほど……」
大山君はかなり酔っているようです。明日は休日ですが、これ以上飲むのは控えた方が良いのかもしれません。
「もし大山君がたぬきだったら、今頃は、『大親分』と呼ばれていたかもしれませんね」
「あはは~。じっちゃんも元気ですし、まだまだ大親分は早いですよ~」
まるで、大山君のお爺さんがたぬきの大親分のような言い草です。
ここまで酔ってしまったからには、本当は早いところ寝かせてしまった方が良いのかもしれませんが、大山君から『家族の話』を聞く機会は、実は、今までほとんどありませんでした。私は好奇心が勝ってしまい、大山君にあれこれと尋ねます。
「大山君のお爺さんは、何をしているんですか?」
「大親分ですよ~」
「お父さんは?」
「ん~? 親分ですよ~」
「……あの、まさかとは思いますが、『そういう道の方々』ではないですよね?」
「そういう道?」
「つまり、『ヤクザ』ということです」
「ああ~、そういうことでしたか~。『仕事』ということなら、お爺さんも、お父さんも、お医者さんですね~」
「そ、そうでしたか。それは凄いですね」
「ん~? まあ、『外のお医者さん』だと、色々と難しいですからね~」
「外のお医者さん?」
「はい~。僕たちの体は、不思議ですから~」
「はあ……」
大山君が言いたいのは、『人間の体はまだまだ謎が多い』ということでしょうか?
私には『医学』の知識はありませんが、人間の体はその全てが解明されたわけではないということは、何となく想像ができます。私が学生時代に勉強してきた『物理学』にも、未だに解明されていない謎が、山のようにあるからです。
しかし、『外のお医者さん』とは、一体どういう意味なのでしょう? 気になった私はもう一度尋ねようとしましたが、とうとう大山君は机に突っ伏してしまい、気持ちよさそうに眠ってしまうのでした。
今から起こすのは流石に可哀そうです。私は大山君の部屋から毛布を持ってくると、体が冷えないように肩から掛けてあげました。
「……あったかいたぬ~」
「ふふっ」
思わず、私は笑ってしまいました。
大山君は時々、『たぬ~』という不思議な語尾を付けることがあります。普段は決して付けることはありませんが、今みたいに酔っぱらっている時や、寝ぼけている時なんかは、気持ちよさそうな顔をして『たぬ~』と言います。私は気持ちよさそうに眠る大山君の頭を一撫でしてから、歯磨きをするために洗面所へと向かいました。
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