オカルト百物語

オノヒロ

ホラー

R病院

 これは私の友人から聞いた話です。


 今から随分と前の話になります。


 当時私の住んでいた市の隣にK市という市があります。

 そして、そこには心霊スポットとして有名なR病院という廃病院がありました。


 このR病院、病院と言っても実態は精神病院でして、しかも経営破綻により経営者が夜逃げ同然で逃げ去ったそうです。

(後に医療関係者だった親戚に聞きましたが事情はもう少し複雑でした。)


 そんな風に夜逃げ同然での突然の経営破綻という事で、院内には多数の道具や備品が置き去りにされているとの噂でした。


 当時、私の友人のTは結構なヤンチャ系の男で、警察の厄介にこそなっていませんでしたがかなり色々な事をしていたそうです。


 ある日、Tの友人AがR病院に肝試しに行こうと言い出しました。


 はい。ヤンチャ系にはよくある話です。


 友人からの問い掛けにTはOKと返事を返し、かくしてTと友人ABCの四人でR病院に肝試しに行く事になりました。


 唯一運転免許を持てる年齢だったAの車でT達がR病院に着くと、外観から荒れ果てたR病院の姿がありました。それを見て、Tは素直に気持ち悪いと思ったそうです。


 そうしてR病院へと入ったT達。R病院の中は噂の通りに荒れ果てており、部屋にはベッドなどの設備も残ったままだったそうです。古い時代の精神病院ですので、ベッドに備え付けられた拘束の様の布ベルトや壁に付いた誰かの爪の跡など、そこには生々しい精神病院の痕跡が見て取れて幽霊とは関係なく怖かったとTは言っていました。


カツン、カツン、カツン、


 静かな院内にはただT達が歩く音だけが木霊します。一階、二階、三階、四階とT達は気味の悪さを感じながらも院内を探索していきますが何も起こりません。探索の途中、手術台の残った手術室なども探索しましたが、こちらも薄気味悪いだけで何もありません。


「せっかく来たのに何も出ないな~」


 最上階まで来た Bがつまらなさそうに言いました。しかしそれを聞いたAが答えます。


「いや、実はここがヤバいのは地下らしいぜ。地下にはカルテが残っていてそれを持って帰ったら呪われるって噂らしい」

「なら行こうぜ」


 Bの言葉で一行は階段を降りて地下へと行く事にしました。


カツン、カツン、カツン、


 やはり静かな院内に響くのはT達の足音だけです。


 地下へと降りたT達は早速地下階の探索を始めました。霊安室などの部屋を探索していく中で、カルテ倉庫と書かれた部屋がありました。


「ここじゃないのか?」


 Bが楽しそうに言いながらその部屋に入ると、確かにそこには大量のカルテが放置されたままになっていました。

 既に何回も人が入って荒らしていったのでしょう。床にはカルテがぶちまけられていて、幾つかには踏まれた跡がありました。

 開かれたままのカルテから見えるリアルな記録にTは気持ち悪さを感じたそうです。


「おい、B。どうするんだ?持って帰るのか?」


 AはBに尋ねましたが、


「いや……流石にこれはちょっと……」


 実際のカルテを目の前にしてBも怖じ気づいたようです。


 結局、T達の誰もがカルテを持って帰ろうとはせず、病院の入口へと戻りました。すると、


「あっ、悪い。ライターをどっかに置いて来たみたいだから取ってくる。ちょっと外で待っていて」


 それまでほとんど話していなかったCがおもむろにそう言いました。Cは愛用のジッポライターがあって、それを大切にしていたそうです。


「一緒に行こうか?」


 Tは尋ねましたが、


「いや、何も無かったし別にいいって」


 Cはサラリと答えると一人で院内へと戻ってきました。


 一方、残されたT達は病院の入り口前で待つ事にしました。

 全員が未成年でありながら煙草を吸ってのんびりとCを待ちます。


「でも、見た目はともかく実際は大した事無かったな」

「いや、お前ビビッてカルテ持ってきてないから」

「それは違う話だろ!」

「誰も持って帰ってきてないから同じじゃね?」


 3人が笑いながら談笑を続けていると、


「そういえばCの奴遅くね?ライター一本にどれだけ掛かっているんだよ?」


 何気なく言ったBの言葉にAはポツリと言いました。


「あれ? そもそもさ、ライターって置き忘れる訳なくね? だって中で俺達誰もライター何て使ってないぜ?」


 Aの言う通りでした。院内では持ち込んだ懐中電灯を使っていた為、誰もライターを手に取る事など無かったのです。


「「「……」」」


 3人の背筋に何とも言えない嫌な予感が過ぎりました。


「Cを捜しに行くぞ……」


 誰からとも無しにそう言うと、3人はCを捜す為に再び院内へと入りました。院内を捜した結果、3人はCを見つけました。


 Cは手術台の上でライターを握ったまま目を見開いて死んでいました……


 その後、警察を呼んだT達は事情聴取をされる事となりました。しかし、Cの死亡原因にT達の関与が認められるような痕跡は無く、T達は不法侵入に対しての厳重注意だけで済む事となり、この一件は当時の新聞の地方欄に載る事となりました。


 最後に、TがCの両親から葬儀の場で非難と共に死亡原因を聞かされたそうです。

 それは、極度のストレスによる心臓麻痺との事でした。


 一体、Cはあの時何を見たのでしょうか……

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