美濃攻略を勝家に任せ、信長は三河に向かった。


 今川から独立し、三河を治めている松平元康に会いに行ったのだ。

「竹千代はいるか?」

「…そんな幼少の頃の名前で呼ばないで下さいよ

 今は松平元康ですから…」

 元康は苦笑いする。

「そうだな…

 しかし、今川から独立したんだから名前も変えたらどうだ?」

「そうですね……、じゃあ、家康なんてどうですかね?」

 元康は改名する気満々でしっかり考えていた。

「家康かぁ…、なかなか良いじゃないか」

 信長はうんうんと頷いた。


「ついでに名字も新しくしたらどうだ?」

「名字?……う~ん、すぐには思い付かないですね」

 名字まで考えていなかった家康は首を捻った。

「お前は今まで結構損してきたからな、徳って字を入れようぜ?

 ここは三河だから……三徳…いや、徳川なんてどうだ?」

「徳川ですか?……ふむ、悪くないですね」

「じゃあ決まりだ!

 今日からお前は徳川家康だ!」

 信長は強引に名前を決めてしまった。

 しかし、家康は満更でもない顔だ。


「……それより、わざわざ三河まで来るなんてどうしたんですか?

 まさか、私の名前を付けに来た訳じゃないですよね?

 今、美濃が大変なんでしょ?」

 斎藤家の事は三河にも伝わっている。

「そうなんだよ…

 それでお前のところと同盟を結びたくて来たんだ」

「同盟ですか?

 …それは嬉しいけど、うちは独立したばかりの弱小ですよ

 力にはなれそうもないですね」

 家康は首を横に振る。


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