道三から会いに来いと言われた信長は…。

「はぁ?俺に美濃に来いだと?

 めんどくせぇ~なぁ

 弟の信勝じゃ駄目なのか?」

「若っ!あなたは織田家嫡男なんですよ!

 もっと自覚を持って下さいっ!」

「…はい、ごめんなさい」

 家臣に怒られる信長だった。



 嫌々ながら美濃に向かった信長は普段通り、鎧も着けずに着流しで馬に乗っていた。

「なんだかなぁ~

 こんな山の中じゃ何の楽しみもねぇだろ?」

「若っ!斎藤様の前では失礼な言動は控えて下さいねっ!」

 家臣に釘を刺された。 

「はい、はい」

「若っ!!『はい』は一回!」

「はい!」

 適当に返事をして家臣に睨まれてしまった。


 それを道三は隠れて見ていた。

「あれが尾張の織田信長か?

 …ほう、正にうつけだな」

「殿、どうしますか?

 あんなうつけに大事な姫を嫁がせるのは…?」

 斎藤の家臣は結婚に反対した。


 しかし、城で道三の前に現れた信長はパリッとした紋付き袴の正装だった。

「お初にお目に掛かります

 織田家嫡男、信長と申します」

 嫡男に相応しい立ち居振る舞いをして見せた。


(…能ある鷹はなんとやらか?)

「お主、世間では『うつけ』と呼ばれているらしいな」

「お言葉ですが、道三様も世間では『マムシ』と呼ばれてますよね」

 道三の威圧にも信長は怯まなかった。


「貴様!我が殿に無礼であろう!」

 道三の側近が刀の柄に手を掛けた。

「初対面の相手にうつけと言う方が無礼なんじゃね?」

 信長は動じずに相手を睨み付けた。

「わっはははっ!

 信長と言ったな…なかなか面白い男だ

 良いだろう、帰蝶をお主の嫁にやる!

 煮るなり焼くなり好きにしろ!」

 道三は豪快に笑い飛ばし、信長を娘婿と認めた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る