【長編】魔界の宴

G3M

第1章 退部

第1話 飲み会

 部活の打ち上げがあり、徹は仕方なしに参加した。だが居づらくなって席を立った。


「先輩、どこ行くんですか?」と後輩の沙也加が声をかけた。


「ちょっと具合が悪いんだ」と徹。


「誰か呼びましょうか?」と沙也加。


「いいよ。大したことないから」と徹。


「どこが悪いんですか?」と沙也加。


「腹を壊したみたいなんだ」と徹。「冷たいものを飲みすぎたみたいだ。」


「そうですか?」と沙也加。「あんまり食べたり飲んだりしてなかったみたいですけど」


「もともとおなかが弱いんだ」と徹。


「トイレですか?」と沙也加。


「ああ」と徹。


「トイレの方向はあっちですよ」と沙也加。


「そうだったか」と徹。


「外に出ようとしてませんか?」と沙也加。


「風にあたりたくて」と徹。


「先輩、飲み会は好きじゃないんですか?」と沙也加。


「そんなことないよ」と徹。


「誰ともしゃべってませんでしたよ」と沙也加。


「見てたの?」と徹。


「先輩の周りの人、だれも先輩と目を合わせようとしてなくて、先輩すごく気まずそうにしてましたよね」と沙也加。


「分かってるならほっといてよ」と徹。


「どうするつもりですか?」と沙也加。


「わからないよ」と徹。


「帰っちゃだめですよ」と沙也加。「幹事さんが心配しますから。」


「ああ、わかった」と徹。「適当にテーブルに戻るよ。」


「それまでどうするつもりですか?」と沙也加。


「風にあたってくる」と徹。


「外で泣くんですか。そんなのだめです」と沙也加。


「泣かないよ」と徹。


「知ってますよ、先輩ときどき泣いてるの」と沙也加。


「沙也加ちゃんって、結構意地悪だね」と徹。


「先輩やっと、私の名前を呼んでくれましたね」と沙也加。


「僕のこと、からかってたんだ」と徹。


「私と会場に戻りませんか?」と沙也加。「私が話し相手になってあげます。」


「うれしいけど、沙也加ちゃんまでつまはじきになっちゃうよ」と徹。「僕はOBや上級生の人たちから嫌われてるから。」


「知ってますよ」と沙也加。「そんなこと。」


「ところで先輩、お酒飲めないんですか?」と沙也加。


「少しは飲めるけど、すごくお酒に弱いんだ」と徹。


「飲むとどうなるんですか?」と沙也加。


「頭がくらくらして、すぐ寝てしまうんだ」と徹。


「お酒は何が好きですか?」と沙也加。


「日本酒かな」と徹。「ビールみたいな冷たい飲み物はだめなんだ。おなかを壊すから」


「ひょっとして、熱燗ですか?」と沙也加。


「うん」と徹。


「夏なのに」と沙也加。


「仕方ないだろ」と徹。


「じゃあ一緒に来てください」と沙也加。

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