ラストステージ

広之新

プロローグ

 それは月のない夜だった。人気のない廃墟ビルの陰でスキンヘッドのいかつい顔をした中年男がタバコを吸いながら人を待っていた。


「おせえな・・・」


 男はイライラしていた。もう何本も煙草を吸っては地面に落として消していた。すると彼の前に人影が現れた。


「遅いぞ!」


 男は食って掛かろうとしたが、その人影が押し付けるかのように封筒を差し出した。それで男の機嫌は直った。


「おっ! かなり入っているな」


 男は封筒の中の札を数えた。かなりの枚数がある。


「じゃあ、次も頼むぜ。連絡するからな」


 男がそう言うと、その人影は何も言わずに去ろうとした。


「俺から逃げられねえぜ! はっはっは!」


 男は後ろからそう声をかけて笑っていた。その人影は振り返りもせず、そのまま闇に消えた。


「さて! 金が手に入ったし、一杯、行くか!」


 男は後ろを向いて歩き出した。すると背後から駆け寄る足音が聞こえた。男がそれに気づいて振り返ると、何者かが彼にぶつかってそのまま逃げた。


「何だ! この野郎!」


 男は怒ってそう声を上げたが、同時に激しい痛みを胸に感じた。


「ううう・・・」


 男は呻き声を出して崩れるようにして膝をついた。その胸にはナイフが突き刺さっていたのだ。どくどくと血が流れる。


「ち、畜生! やりやがったな!」


 男はそのままあおむけに倒れ、絶命した。



 誰もいない通りをハンチングをかぶった男が歩いていた。ほどよく酔って気持ちよさそうに千鳥足で歩いている。すると角から誰かが飛び出してきてぶつかった。


「気をつけろ!」


 酔っぱらった男はそう大声を上げてぶつかった相手をみた。


「おや?」


 ちらっとだったがどこかで見た顔だ・・・男はそう思った。その相手はすぐに走って行ってしまった。


「なんだ! ぶつかっておいて謝りもしないで! ひでぇ世の中だ!」


 男はそうぶつぶつ言いながらまた歩き始めた。するとその角の向こうから大きな声が聞こえた。


「人が倒れている!」

「ナイフで刺されているぞ!」

「人殺しだ!」


 男はそれを聞いて行ってみた。すでにやじ馬でいっぱいになっている。人をかき分けて前に出ると、建物の陰にナイフで刺されたスキンヘッドの男が倒れていた。


(あいつだ! 俺にぶつかってきた奴がったんだ!)


 その男は確信した。そして・・・


「思い出した。あいつだ。ふふん・・・これはいいカモになりそうだ・・・」


 その男はほくそ笑んでいた。

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