第8話 転生者
異世界に転生して2ヶ月が経っただろうか。
毎日コツコツと薬草を集め、筋トレをして、ついに俺は――。
「ルビア様、治療費ありがとうございました」
「うむぅ、苦しゅうないぃ〜」
ルビアがムカつく程満足そうな表情を浮かべ、俺の差し出したお金を受け取る。
俺はやっとルビアに借りていた借金を返し終え、そして右腕も完治した。
「腕治ってよかったですねぇ。これで薬草採取も捗りますよぉ」
ルビアはテーブルにあるパンを千切り、口に運んでいた。
「お前が採取手伝ってくれたらもっと捗るんだけど?」
俺の言葉を無視して美味しそうにパン頬張るルビア。
「…………はぁ、とりあえず今日の分の薬草採取の依頼受けてくるよ」
俺は薬草採取の依頼を受ける為に受付へと歩き出す。
「はい、ではこちらのカゴ一杯に薬草を摘んできて下さいね」
「ありがとうございます」
俺はカゴを受け取り、ルビアの所に戻ろうとすると――。
「す、すみません、大丈夫ですか?」
「ああ大丈夫で…………」
誰かとぶつかり咄嗟に謝るが、俺は目の前にいた少年を見て言葉が途切れてしまう。
「…………え? 日本…………人?」
俺がぶつかった少年の姿は、黒髪黒目で顔立ちは異世界の人とは違い、日本でよく見慣れた顔立ちをしていた。そして何よりも服が日本でよく見かける服装をしている。
俺が驚いていると、相手の表情が徐々に明るくなっていく。
「日本人…………ということは! 貴方も転生者なんですね⁉︎」
「え? あ、ああうん。そうだけど」
「僕、初めてですよ! 他の転生者に会うの!」
嬉しそうにはしゃいでいるが、よく見ると俺よりも年下で、中学生くらいに見える。だけど更に俺が驚いたのは。
「ほら、イオリ。少し落ち着きなさい。相手の人も困ってるでしょう?」
そこにはルビアと同じ精霊が飛んでいた。
「だってミリア! 初めて同郷の人に会えたんだよ⁉︎ 」
「分かったから。少し静かにしなさい。周りに迷惑でしょう?」
嬉しそうにはしゃぐ少年を宥めると、フワリと俺の前まで飛んでくる。
「ごめんなさいね。驚いたでしょう?」
「い、いや、大丈夫ですよ。ははっ」
…………なんだろう。ウチの精霊よりもしっかりしてそうなんだけど?
「ほらイオリ。嬉しいのは分かったから、まずは挨拶をしなさい」
「あっ、そうだね。えっと、初めましてイオリです。本名は『松平 伊織』(マツヒラ イオリ)』です」
「精霊ミリアと申します。以後お見知りおきを。私のことはミリア、この子のことはイオリとお呼び下さい」
「あぁ分かりました、俺はリクです。『五十嵐 陸』(イガラシ リク)』」
この世界に来て初めて自分と同じ転生者と挨拶を交わした。
そして、相手がキョロキョロと周りを伺う様子が目に入る。
「リクさんは精霊がサポートについてないんですか?」
「イオリ、サポートについていない転生者もいると前に話したでしょう?」
「あれ? そうだっけ?」
その様子を見て、俺は頬を掻きながら口を開く。
「い、いやぁ、居るには居るけどね。あそこのテーブルに…………」
サポートをしてくれた記憶があんまりないけどな。
「でしたら、其方に座ってからお話ししましょう。私も貴方をサポートしている精霊に挨拶したいので」
「そうだね。いいですかリクさん」
「もちろん大丈夫」
俺の返事に2人は笑顔で返してくれた。
テーブルまで戻ってくると、ルビアが不満そうな表情で待っていた。
「もぉ、リクさん遅いですよぉ」
「なんでそんなに不満そうなんだよ、そんなに時間経ってないだろ」
頬を膨らませて文句を言ってくるルビア。
そして横からイオリが顔を覗かせた。
「あっ! 初めましてイオリです」
「…………もしかして他の転生者ですかぁ?」
ルビアがフワリと浮かび上がり、目を丸くしていた。
更に横からミリアが飛んでくる。
「初めまして同胞。私は精霊ミリアと………………」
不意にミリアの言葉が途切れ、2人の様子を伺っていると。
ルビアは徐々に表情が明るくなっていくが、ミリアは顔を引き攣らせていた。そしてーー。
「先輩じゃないですかぁ!」
「………………ルビアぁ………」
はしゃぐルビアと対照的にミリアは頭を抱えて顔を伏せていた。
テーブルに座り、俺が一番に口を開いた。
「なぁルビア。ミリアと知り合いなのか?」
「知り合いも何も先輩ですよぉ。神様に仕える前に色々とお世話になったんですよぉ」
「へー」
俺はミリアに視線を向けるが、頭に手を当て、顔色が青ざめていた。
「えっとミリア? 大丈夫?」
「え、ええ…………なんとか」
イオリも心配そうに声をかけるが、明らかに様子がおかしい。
「…………なぁ、ルビア。なんかお前の姿を見てからこうなったように見えるんだけど。お前何かしたの?」
「? 何もしてませんよぉ?」
ルビアが首を傾げながらそう答えると、ミリアが鋭い目つきで。
「何もしてない⁉︎ よく言えたわね! 私がどれだけ貴女に振り回されたか!」
テーブルをバンバンと叩きながら叫ぶ。
「あのー、何があったんっすか?」
「この子が神様に仕える前。教育係として私が選ばれたんです。ですが…………この子、面倒臭がりの上に自由すぎて私がどれだけ苦労したか!」
再び顔に手を当て俯くミリア。
ああ、なんか容易に想像できるわぁ。俺もこいつにいつもムカついてるから。
ミリアの苦労にはとても共感してしまう。
「そうですかぁ? 私はそんなことした記憶ありませんよぉ」
「⁉︎ 貴女のそういう所! 昔から大っ嫌いよ‼︎」
「? 私は先輩のこと好きですよぉ? よく怒るけどぉ、色々と手伝ってくれますからぁ」
…………何? この全く噛み合ってない2人。
その2人の様子を見ていたイオリが優しく声をかける。
「ほ、ほら、ミリア。落ち着いて」
「はぁ……はぁ……。そ、そうね。私とした事が」
「あはは、ここまで取り乱したミリアは見た事なかったけど、この異世界で右も左も分からない僕を支えてくれたミリアには本当に感謝してるんだよ?」
「ふー、それが私の役目ですから」
俺は2人の会話を聞いて、心の中で思ってしまう。
あのぉ、なんなの? その信頼関係。俺の所と全然違うんだけど⁉︎
そして、俺は横目でルビアに視線を向けると、眠たそうに背伸びしている姿が目に入った。
こいつ本当に自由だな………………。
ミリアが落ち着いたのを確認して、自分から話を切り出す。
「えっと、それじゃあ改めて、イオリ君は異世界に来てからどれくらい経つの? 俺は2ヶ月くらいなんだけど」
「僕は異世界に来てから…………半年くらいですかね」
意外と俺より長かった。
「色々と大変だったんじゃないか?」
「あはは、確かに大変でしたけど。ミリアが助けてくれたので、そこまでは」
……何それ羨ましい。俺も真面目な精霊と交代して欲しいんだけど。
俺はルビアに視線を向けると、欠伸をしながら話を聞いていた。
「所でリクさんのスキルは魔王に対抗出来そうですか? 僕の貰ったスキルは戦闘向きじゃなくて……」
「ん? 魔王?」
そういえば、日々生きるのに必死で魔王を倒せって言われてたの忘れてたわ。
…………でも、魔王を倒す必要ってあるか? 別に町は平和そうだし、そんな無理して魔王を倒さなくても。
「魔王って倒す必要あるのか? 別に無理しなくても…………」
「え?………………」
「貴方、本気で言ってるんですか?」
イオリとミリアが驚きの表情を浮かべて、俺を見てきた。
「え? 何? 俺何かおかしなこと言った?」
周りの空気が変わり戸惑っていると。ルビアが馬鹿を見たような表情を浮かべながらーー。
「リクさん何言ってるんですかぁ? 魔王が世界を支配したら神様達を信仰するの力も弱まるしぃ、神様の庇護の元で生きている転生者達は魂ごと消滅するんですよぉ?」
「はあぁぁぁぁぁ⁉︎ 」
「もぉ、何驚いてるんですかぁ。私最初にぃ………………あれ? 言いましたっけ?」
「初耳だ馬鹿野郎! そういうのは1番最初に言うことだろうがぁ!」
こいつぅ! そんな重要なこと言い忘れてたのか!
「ルビア…………貴女」
「ははは。知らなかったんならしょうがないですね」
2人は更に呆れた表情で俺達を見ていた。
「僕が神様から授かったのは『製作』というスキルです」
俺はイオリが授かったスキルを聞いて少し考える。
「『製作』ねぇ。確かに戦闘向きではないけど。武器とか道具とか作れるんじゃないの?」
「はい、一応作れるんですけど。素材を集めないといけないし、知識がないと制作出来ても品質が悪いものしか出来ないんですよ」
んー、それでも俺の『筋力百倍』よりも便利そうだけどなぁ。使っても腕の骨折れないし。魔法使えそうだしな。
1人で考え込んでいるとイオリが続きを話し始める。
「それにこのスキル。何故か製作に魔力を使うんですよ。僕、魔力量Dだからそんなに多くは作れなくて」
…………それ魔力量Sの俺が使えたら色々出来たんじゃね?
「リクさんはどんなスキルを?」
「俺のは『筋力百倍』ってスキルで、使うと筋力が百倍に…………」
「『筋力百倍』⁉︎ とても戦闘向きのスキルじゃないですか!」
俺のスキルを聞いて、イオリは前のめりになり食いついてくる。
「い、いやでもな。鍛えて負担を減らさないと腕が折れたり、最悪内臓が破裂するかもしれないんだよ」
「だったら鍛えましょう! 1日みっちり27時間! 僕も付き合いますから!」
「いや! 1日27時間もないんだけど⁉︎」
とんでもなくスパルタなトレーニングじゃねぇか⁉︎
そして、更に前のめりになり顔を近づけてくる。
「『筋力百倍』のスキルを使って負傷するなら魔法との併用は出来ないんですか⁉︎ スキルの効果時間は? 何処までなら耐えられるか試したんですか? そもそも筋力なら、ある程度自分でもコントロール出来るのでは⁉︎」
「めっちゃグイグイくるな!」
イオリは興奮気味に聞いてきくるので、俺が困っていると。
「ほら、イオリ。リクさんも困ってるから落ち着きなさい」
「あっ、ご、ごめんなさい。つい」
「い、いや大丈夫」
ミリアの言葉で落ち着きを取り戻したイオリは、申し訳無さそうな表情を浮かべる。
なんだろう? この子変なスイッチ持ってるな。大丈夫か?
一度、ほっと胸を撫で下ろすと、ルビアが俺の頭に乗ってきた。
「でもぉ、リクさんのスキルを試すのも悪くありませんよぉ? オークの亜種と戦って以来使ってませんよねぇ?」
「そうだけどさ、また腕折れるの嫌なんだけど」
「その時はぁ、またお金貸して上げますよぉ?」
「お前、また俺に借金を背負わせる気だろ?」
返事は返って来ないが、頭の方からルビアの鼻歌が聞こえてきた。
俺はどうするか、と考え込む。
冒険者ギルドの外ーー。
「ここならぁ、リクさんのスキルも試せますよぉ」
周りを見回すと、走り回れるだけの広さがある。
「よし、それじゃあ試してみるか」
俺は目を瞑り、あの時の感覚を思い出す。
ゆっくりと深呼吸をして集中すると、身体の筋肉の繊維に熱が入っていくような感覚を感じる。
「…………あのぉ、リクさん。スキル発動出来ましたかぁ?」
「おう、出来たぞ」
「ああ、だったら出来たって言ってくださいよぉ。見た目変わらないから、目を瞑ってカッコつけてるようにしか見えませんよぉ」
こいつぅ! はたき落としてやろうか! 人が真剣にやってるのによぉ!
ルビアにムカついていると、イオリとミリアが歩いてくるのが見えた。
「リクさん、お待たせしました。よいしょ」
「…………何これ? 廃材?」
「ええ、ギルドの人に頼んで貰ってきたのよ」
何に使うのかと首を傾げていると。イオリが廃材に触れると。
「見ててくださいね、リクさん。これが僕のスキルです」
その瞬間、廃材が眩い閃光を放ち、粘土のように形を変える。そしてーー。
「これは…………人形?」
「はいそうですよ。知識はなくてもこういうのなら簡単に作れるんですよ。ツギハギだらけですけどね、ははは」
見た目は不恰好だが、あの廃材から作られたと考えると凄いスキルだ。
「貴方にはこの人形を使ってスキルを試して貰います。まずは小突く程度で殴ってみて下さい」
「ああ、なるほどね。それじゃあみんな少し離れてくれ」
俺はそっと人形を優しく小突いてみる。その刹那ーー。
バギャァァン‼︎
「ちょっ!」
小突いた人形は弾かれたように、遠くの壁に叩きつけられ、小突いた反動の衝撃で俺は尻餅をついた。
「ええぇ…………嘘だろ?」
壁に叩きつけられた人形はバラバラになって地面に横たわる姿が目に入っていた。
「す、凄いですよ、リクさん」
「想像以上ですね、これは。では次はこちらを」
ミリアが水の入ったコップを差し出してくる。
「どうすんのこれ?」
「スキルが発動した状態で水を飲んでみて下さい」
ああ、力の制御がどれくらい出来るか見たいのね。
そうと分かると俺はコップをゆっくりと握る。その瞬間。
パリン!
「あっやべ!」
「では、もう一度」
ミリアが代わりを持ってくる。今度は更に慎重にコップを掴む。
「くっ…………」
割れずに持てたが、プルプルと口元まで運ぶのに苦労していると。
「リクさん、もう少しスムーズに行けませんかぁ?」
パリン!
「あぁ!」
ルビアが頭に乗ってきた拍子に力が入り、コップが割れた。
「おいルビア、いきなり頭に乗ってくるなよ」
「いやぁ、もう少し早く出来ませんかぁ?」
「お前なぁ、割れないように持つだけで針の穴に糸を通すような集中力がいるんだぞ?」
ルビアは俺の頭からふわりと飛び上がり、入れ替わるようにミリアが近づいてくる。
「それでは、他のを試してみましょう」
ミリアにそう言われて色々と試してみる。イオリの作った的に石を投げたり、軽く走ったり、ジャンプしたり。
そして、1時間後――。
「つ、疲れた」
俺はその場に倒れてしまう。身体はそこまで動かしてはいないが、集中して制御しないとまた腕が折れそうでという心理的緊張の疲れを感じる。
俺はゆっくりとスキルを解除するために力を抜くと、熱が身体の外へと流れる感覚を覚える。
そして、ルビアが俺の頭の上まで飛んでくると。
「リクさん、今回は何処も折れてませんかぁ?」
「ああ、多分な」
俺は立ちあがろうと地面に手をつく。その瞬間――。
ビキキッ!
「いったぁぁぁぁ!」
あまりの痛さに俺はその場に再び倒れてしまう。
「リクさん! やっぱり折れてましたかぁ⁉︎ 折れてたんですねぇ⁉︎」
「お前! 何で嬉しそうなんだよ⁉︎」
嬉しそうにするルビアにムカついていると、イオリとミリアが心配そうな顔を覗かせた。
「ちょ! リクさん大丈夫ですか⁉︎」
「まさか、あれでも折れるんですか?」
「違う! これ………………筋肉痛だ!」
「「「…………え?」」」
3人が真顔で返事をする。
「ちょ! これマジで痛い! 前回使った時はこんなことなかったのになんで今回は…………」
「あぁ、ほらあれですよぉ。前回は使った時間が短かったじゃないですかぁ。でも今回は長時間使ったからぁ…………」
「おいぃぃぃ! 更にデメリットが増えたんだけど⁉︎」
スキルの威力が凄いのは分かったけど、やっぱりデメリットがデカすぎだろ!
「ちょ! 待ってこれ本当に動けない!」
「もぉぉ、何言ってるんですかぁ! この後薬草採取があるんですからぁ。起きて下さいよぉ」
ルビアが俺の背中に乗るとピョンピョン跳ね始める。
「いったぁぁ! おいこら背中で跳ねるな! いってぇぇぇぇ!」
その後、ルビアは俺が起き上がるまで背中で跳ね続けていた。
町の外門――。
「…………えーと、本当に大丈夫ですか? リクさん」
「あ、ああ大丈夫だ。心配してくれてありがとう、イオリ」
俺は足をプルプルさせ何とか立っている状態だ。そして、イオリが少し寂しそうな表情を浮かべる。
「…………ここでお別れですね。僕達は次の町に。出来ればリクさんと一緒に組んで冒険者をしたかったんですけど…………」
俺は隣にいるミリアに視線を向ける。
「イオリ、リクと組むのには私も問題はありません。ですが、リクと組むとルビアまで着いてきます。私はもうこの子の面倒は見たくないんです!」
「あ、あはは、ルビアさんも根は悪い人じゃないと思うけど…………」
「そこが1番問題なのよ! 悪気がないのが!」
俺はミリアの言い分に心底頷く。
分かる。その気持ちよく分かるぞミリア。
「あははは。……でも、本当に残念です。リクさんのスキルを使えるように1日20時間のトレーニングを手伝いたかったです」
…………それは全力で遠慮したいんだけどなぁ。そう考えると俺も組まなくて正解だったかもしれない。
背中に何か冷たいものが這い上がる感触を覚え、身体を震わせる。
「私もぉ、ミリア先輩と一緒は遠慮したいですねぇ」
「お前、先輩のこと好きって言ってなかった?」
「それはぁ、仕事を手伝ってくれるから好きなだけでぇ。ミリア先輩、仕事もプライベートもきっちりしてて厳しいんですよぉ」
「……お前正直だよなぁ」
「だからぁ、他の精霊達にはぁ、行き遅れ先輩って呼ばれてますよぉ?」
…………おい、もう少し声のボリューム考えろよ。その行き遅れ先輩の顔が引き攣ってるじゃねぇか。
「ルビア?………………貴女も陰で私のことそう呼んでるの?」
「? 私は呼んでませんよぉ? むしろぉ、私は先輩は行き遅れじゃないって言ってますよぉ?」
「ルビア、貴女そんなに私ことを…………っ」
ミリアが自分の知らない所で自分をフォローしていてくれたことに感動したのか、手を口元に当てる。
俺もルビアの言葉に関心して言葉をかける。
「へぇ、お前もたまにはそういうこと言うんだな。見直したよ」
ルビアは大きく胸を張り、ドヤ顔で――。
「ふふん。そうでしょう? ちゃんと言ってやりましたからねぇ。ミリア先輩は行き遅れなんて年齢とっくに超えてますよぉ、って。いつもサバを読んでた実年齢だってちゃんと教えてーー」
「ルビアァぁぁぁぁぁぁ‼︎」
激昂したミリアがルビアに飛び掛かろうとして、イオリが止めに入る。
「ちょ! ミリア! ミリア! 落ち着いて!」
「ルビア! お前は何で最後に地雷を踏み抜くんだよ!」
「? 何のことですかぁ?」
ルビアは首を傾げて不思議そうに聞き返してくる。
いや! 何で分からないんだよ!
「それよりもぉ、早く薬草摘みに行かないと帰りが暗くなりますよぉ?」
そういうとルビアは森の方へと飛んで行く。
「おいぃ! せめてミリアに一言謝ってから行けぇ!」
「リ、リクさん! ここは僕が抑えますから!」
「なんかごめんな! イオリ君も元気で!」
「はい! また会いましょう! ってほらミリアもうルビアさんいないから」
俺はイオリが必死にミリアを抑える姿を遠目に、薬草採取のため森を目指して歩く。
「またミリア先輩に会えますかねぇ?」
「多分、向こうは二度と会いたくないと思ってそうだけどな」
筋肉痛に耐えて、森に向かっているとルビアがふわりと俺の頭に乗ってくる。
「魔王…………倒さないとですねぇ」
「その前に資金と一緒に魔王と戦ってくれる仲間が欲しいなぁ。あと重いから降りろ」
いつも通っている道を歩き、風が優しく頬を撫で、気持ちいい日差しが目をに差し込んだ。
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