異世界転生したけど『異世界なめんな!』って言われた! 俺どうすれば?
丸リュー
第1話 異世界なめんな!①
「ん? ここ何処だ?」
気づくと俺は、何もない真っ白な場所に立っていた。周りを見渡しても何もない。そんな空間にふわふわと光源が1つ浮いており、こちらに近づいてきた。
「あーはいはい。貴方ですね? 今回死んで転生対象になったのは」
なんか光源が近づいてきて、訳の分からないことを言い出した。ただわかったのは――。
「は? 死んだ? 誰が?」
「貴方に決まってるじゃないですかぁ」
(いやいやいや、そんなわけないだろ。)
俺が死んだとか言ってくる光源。ていうか。
「君は何? そもそもなんで光源が話せるの?」
「誰が光源ですかぁ。 一応神に仕えてる精霊ですよぉ」
そう言うと、光源の光が弱まり中から小さい人のシルエットが浮かんできた。
「ほら、光源じゃありませんよぉ。私はれっきとした精霊ですよぉ」
「……お、おう」
精霊っていうか、ファンタジーに出てくる小さい妖精みたいな見た目だけどな。
「えーと、じゃあ今回転生対象になった…………名前なんだっけ? えっと、名前、名前」
小さいファイルを取り出し調べ始めたんだが。てか目の前にいるんだから、聞けよ!
「五十嵐…………五十嵐 陸だよ」
「五十嵐……五十嵐…………あっ、いたいた」
ファイルの名前を見つけたのか、ペンを取り出し何か書き始める。
「あの、ここ何処なんですか? 周りなんもないし。俺が死んだとかなんとか」
「あー、ちょっとうるさいんで黙っててくれません?」
⁉ なんだこいつ‼
ファイルにペンを走らせ、しばらくすると。
「ふー、では今回死んでしまった貴方は転生対象になった訳ですが」
「ちょっと待て! そこだよ! なんだよ死んだって⁉ 俺ここにいるだろ⁉」
「いやぁ、死んでますよ? えーと……」
またファイルに視線を落とし。
「五十嵐 陸。20歳。大学生で引きこもりがち。えーとここはどうでもよくてぇ、あったあった。死因:急性アルコール中毒…………はっ!」
おい、こいつ今、鼻で笑いやがったぞ⁉︎ おい!…………でもなんか思い出してきたな。大学の先輩に無理やり飲みに誘われて、それから…………記憶がねぇ。
「あー、おほん。まぁ、貴方の死因なんてどうでもいいんですが。自己紹介がまだでしたね、私は神に仕える精霊の一人、ルビアと申します。あー、相手するのめんどくさいなぁ」
「なんだお前⁉」
とりあえず、このルビアとかいう精霊の第一印象はむかつく奴だわ。…………だけど、そうか。こうしてると実感ないけど俺、死んでしまったのか。お袋、親父、生きてる間に何もしてやれなかったな。妹にも………………あいつに貸した五千円返してもらってねぇな。
もう会えないのかと考え、寂しいなと思っていると――。
「今回貴方は異世界転生の対象に選ばれたんですよぉ」
「異世界? 異世界って魔法と剣の世界のか⁉」
異世界と聞き俺の気持ちは高鳴った。いや、元の世界の家族には未練はあるが、異世界と聞いて興奮しない日本人はいないだろう。
「あー、そうですそうです。その異世界ですよぉ。…………ちっ、声でかくてうるさいなぁ、この人」
なんか、最後の方声が小さくて聞き取れなかったけど。
「あれだろ? 能力もらって異世界いけるんだろ?」
「そーですよぉ。じゃあ、ちょっと待っててくださいねぇー。神様呼んでくるんでぇ」
めんどくさそうに神呼びに行ったけど、あいつ本当に神に仕えてんのか? まぁ、でも神か。こういう時の定番は、人とは思えないほどの美貌の女神かなぁ。少しドキドキしてきたな。
そわそわしながら待つこと、数分。
「あ、いたいた。あの人ですよぉー、神様」
背後から精霊の声が聞こえ、ドキドキと期待を膨らませ、振り返る。そこにいたのは。
二メートルを超える身長に、俺の胴体くらいあるであろう腕と足。そしてパンツ一丁で逞しい筋肉をした男神がいた。それを見て俺は――。
「夢壊れたわ! 俺のドキドキ返せ‼ 馬鹿野郎‼」
心の内から出てくる言葉を抑えきれなかった。
「何言ってるんですかぁ? ほらぁ、神様ーこのうるさい人が今回の転生者ですよぉ」
相変わらず精霊は気だるそうにしながら男神に話しかける。
「むん! 青年! 今回異世界に転生することになった訳だが! ふん! ルビア君からどこまで話を聞いてるかな!?」
「い、いや、何も聞いてませんけど……」
なんなんだ? この男神。ポーズ決めながらじゃないと話せないの?
「よし! では、さっそく能力を授けて異世界に行ってもらおうか‼」
「いや、ちょっと待て‼ 急すぎんだろ⁉」
なんか、過程が一気に吹っ飛んだんだけど⁉ なんで異世界転生の対象になったかも、異世界で何をすればいいか聞いてないんだけど⁉
「むぅん‼ さぁ! これで君の特技に、筋力が百倍になるスキルが追加されたぞ‼」
神様が俺に向かってポーズを決めると、身体の奥が熱くなるのを感じた。
「いや! 雑だなおい! ってか、スキルって自分で選べねぇのかよ⁉」
「あー、それは担当の神様次第ですよぉ」
なんだよそれ! ていうか筋力百倍って強いのか弱いのかわかんないんだけど‼
「ぬぅぅん‼ さぁその筋力で異世界の魔王を打ち滅ぼしてくるんだ‼」
「魔王⁉ いや、魔王倒すの⁉ ってか、他に聞きたいことが――」
「むぅん! なんだって? いきなり異世界は不安だって? ならばルビア君をサポートにつけよう‼ 行ってくれるね! ルビア君!」
「えー、めんどくさいなぁ。この人とぉ? 神様が行けっていうなら…………まぁ」
「おいぃぃぃぃ! 何勝手に話進めてんだぁ⁉ 少しは俺の話を‼」
すると足元に魔法陣が浮かび上がり、光が強くなる。
「おいこら‼ 何勝手に送り出そうとしてんだ!! まだ聞きたいこと聞けて…………!」
「神様ー。帰ってきたらボーナス、期待してますよぉ」
足元の光で男神の姿が見えなくなっていく中。
「ぬん‼ 青年、覚えておくといい! 筋肉はすべてを救う‼」
最後にそんな言葉が聞こえたが。
「全然なんのアドバイスにもなってねぇぇぇぇ‼」
「いってきまぁーす」
こうして俺は、なんの情報もない中、異世界に飛ばされた。
激しい光が収まると、俺は森の開けた所に立っていた。
「…………」
「さぁ、ここが異世界ですよぉ。…………何黙ってるんです? さっきまであんなにはしゃいでたじゃないですかぁ?」
近くを飛び回りながら、精霊が何か言っているが。そんなことより。
「いや! この世界のこと何も聞けずに異世界送られたんだけど⁉ なんなんだよ! あの筋肉の神!」
俺が精霊に向かって叫ぶと、めんどくさそうな表情を浮かべる。
「いや、だから神様が言ってたじゃないですかぁ。魔王を倒せーって」
「いや! 言ってたけども! そうじゃないだろ! なんで倒さないといけないか、の経緯を聞いてないんだよ!」
俺の叫びを無視して、周りをキョロキョロと見渡す精霊。
「あー神様、また座標がズレてる。町から少し離れてますねー」
「聞けよ、人の話を!」
精霊がため息をしながら振り返り。
「もぉぉ、なんなんです? せっかく異世界に来たんだから、喜んだらどうなんですかぁ」
「はぁ……はぁ……いきなり飛ばされてなきゃ、もっと喜んでるよ」
とにかく一旦冷静に、落ち着け。そうだよ。異世界に来たんだから、まずは。
「とりあえず、アレだ。能力値とかスキルを見る方法とかあるんだろ?」
俺の質問に精霊は首を傾げる。
「いや、だから、ゲームでいうステータスとかだよ。見れるんだろ?」
俺の言っていることを理解出来たのか頷く。
「あー、それですかぁ。それならぁ、町に鑑定士の人がいるから、お金払えば紙に書いて渡してくれますよ?」
「……えっ? お金かかるの? なんか空中にウィンドウが出るんじゃないの?」
「貴方の世界にはそんなのあるんです?」
「いや、ないけど……」
なんだろう、なんか夢がまた1つ壊された気分だな。
「えーとっ、ところで………………こがらし、さん?」
「『いがらし』だ! 五十嵐 陸!」
「あぁ、そうなんです? じゃあ、リクさんって呼びますねぇ」
自分の名前を呼ばれるが、そういえば、俺も精霊とかより名前で呼んだほうがいいだろうか?
「じゃあ、俺はルビアさんって呼べばいいか?」
名前を呼ばれて首を傾げて、不満そうな表情を浮かべる精霊。
「いやー、なんかしっくりこないなぁ。ほら、私はサポートで貴方について行きますけどぉ、それで下に見られるのはいやなんですよねぇ。出来れば対等でいたいんですよぉ」
確かに、この異世界で右も左も分からない俺をサポートしてくれるんだし、そりゃあ対等な立場でいたいよなぁ。
「だからぁ、私の事は『ルビア様』と呼べよ。リク」
「いや! めっちゃ上から目線じぁねぇか‼」
本当になんだよ! こいつぅ!
とりあえず、俺は『ルビア』と呼ぶ事にした。
町に向かうため、ルビアについて森を歩く。慣れない道を歩くから、足が痛い。
「はぁ、はぁ。なぁ、ルビアぁ。町にはまだ着かないのかぁ?」
「もうすぐですよぉ、もうすぐ。………………たぶん」
おい、今なんか不安なこと言わなかったか?
「はぁ……はぁ……。ちょ…………少し休もう。足痛え」
「えー、早くしないと日が暮れますよぉ。それに、私は足痛くなってないですよぉ、全く貧弱ですねぇ」
「お前は歩いてないだろ! ずっと飛んでただろ!」
そう叫ぶと、俺は近くの木に背を向けて座り込む。
「はぁ…………」
「全く仕方ないですねぇ」
ルビアも近くの木の枝に座る。いい機会だから、ここで聞けることを聞いておこう。そうだな、とりあえず――。
「なぁ、ルビア。神様から貰ったスキルだけど、どうやって使うんだ?」
「そんなの私が知るわけないじゃないですかぁ」
は? 知らない? どういう事だよ。貰ったスキルの使い方が分からないなんて。
「まぁ、そのうち使える様になるんじゃないですかぁ?」
「なんでそういう重要なとこが適当なんだよ!」
おいおい、どうするんだよ。せっかくスキル貰ったのさぁ。『筋力百倍』のスキルが使えないって。ん?待てよ。
「…………もし、このスキルを使ったら、あの神様みたいにマッチョになるのか?」
「あー、そうはならないと思いますよぉ。神様のアレはただ筋トレが好きすぎるだけですからぁ…………たぶん」
だから、最後に不安なることを言うなよ。
「はぁ、強いのかどうか悩むスキルだなぁ。筋力が百倍なんて。…………ん? 筋力? 待てよ」
「? どうしたんですぅ?」
ルビアが不思議そうに問いかけてくる。
「もし、俺が筋トレとかで筋力を鍛えてから、このスキル使ったらどうなるんだ?」
「それはぁ、鍛えた分の筋力が百倍になるんじゃないですかぁ?」
おお! そう考えると俺が鍛えれば鍛えるほど、このスキルの恩恵もでかくなるってことか。それはいいな! スキルだけで完結するんじゃなく、俺自身の成長で効果が上がるなんて。
「ふふふ、早く試してみたいな」
「いやいやぁ、こんな丸腰のとこでモンスターに襲われても」
「分かってるよ、武器も装備もないし早く町に行くか」
「はいはい、行きますよぉ」
立ち上がり、再び町に向かって歩き出す。
「もうすぐで森を抜けますよぉ」
やっと、森を抜けられる。森だからモンスターに、出くわさないか心配してたけど。
「あっ、リクさんリクさん」
「ん? どうした?」
「モンスターがいました、まだこっちには気づいてませんけどぉ」
「今⁉ もうすぐ森抜けられるのにこのタイミングで⁉」
クソ! 序盤でモンスターに出くわすのは定番だが。丸腰で見つかったらどうする? 逃げるしかないが最悪、スライムかゴブリン一体くらいならいけるか?
俺はルビアの視線の先を見ると。
「あー、あれは、オーガの亜種ですねぇ」
そこには、2メートルを超える身長に屈強で傷だらけの肉体、鬼の様に鋭い眼光をした顔を見て、すぐにルビアを掴み木の影に隠れながらこの場を離れる。
「ちょっとぉ、何するんですかぁ。人を鷲掴みしてぇ。セクハラですよぉ、セクハラぁ」
「うるせぇ! なんだよ! こういう時の定番はスライムかゴブリンだろ! 何だよ! オーガの亜種って! 殺しに来てんだろ‼」
俺はオーガから見えない位置に来ると、脱兎のごとく走る。どれくらい走ったのか、いつも間にか森を抜けいていた。
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