第18話同じ穴の狢
「授かりもの……ですか?」
机に座りながら、さもいつもの授業かのように聞き返す。
「そう。まあ、別にそう伝わっているだけで、真実かは分からないんだけどね」
教壇に立ちながら、体験したこともない『教員』のように振る舞いながら、返答する。
その『教員』は続けて、
「
「じゃあ、
大原が口を開き、至らぬところを指摘する。が、カトルスの方は何故か嬉しそうだった。
「いい質問だ。
『狼』という単語にスグルの眉が少しピクリと動く。
レンが遭った、あの熊男やカメレオンだってこの類いであろう。
少し口早になりながら、先生はさらに詳細を語る。
「そうゆう奴らには、各々種としての名前がある。だけど、一体誰が命名したのかも分からないんだ。全く不思議なもんだよ。じゃあ次は、
「………ッ……」
気づけばスグルはそうやって自身の下唇を噛んでいた。
その後も先生の授業は続いた。具体的に何をやったかと言うと、散々言っていた実技訓練、果ては絶対に戦いであろう社交会でしか用いないような礼儀作法だった。
だが、スグルにはそんなことはどうでもいい。
いつも受けている学校の授業のように、すんなりと頭の中に入ってこない。まるで何かに弾かれているという気持ちの悪い感触がスグルにも伝わってくる。
でも、その何かというのはスグルにはもう分かっているはずのものだ。
なのに、それを表に出すのはおろか、深層心理で認めることすら憚られる。
それぐらい囚われていた。
学友を殺した、悪獣に。
けれども感情の整理をする時間はない。
何故なら彼は神の宣う『英雄』なのだから。
視点は打って変わって、侘しい街のギルドの広場。レンの居るところだ。
「…………というわケね」
椅子に座りながら向かい合い、レンは長々と話を聞いていた。だが、意外にも退屈はしていない。内容が内容だからであろうか。
具体的に言うなら『
内容としては数時間前にスグル達が先生から教えられたことと大差はないのだ。
だが、レンにはスグルのような素直さがないので、気になったことはズバズバと聞いてくる。
もちろん、『黙ってただ黙々と話を聞くのが素直』ではないのならもっと違った言い方になるだろう。
「でもあいつらって、人の姿もしてましたけどあれは違うんです?……あれ?ない」
生暖かさしかもう感じられない紅茶が入っていた鉄器を持ちながら、頭にツラツラと記憶が蘇っていく。あの狼へと姿を変えた小汚い男や熊男になった
これに対して、羊飼いは答えなかった。というより、先に答えようとした者が居るのだ。
「あれは
それはカプリの口から発せられたものだった。
「お〜よく知ってルねぇ。まだ"見た目"は俺とそう変わらないのに」
『俺とそう変わらない』という発言に若干不満げなカプリに羊飼いは、『流石!』という顔を向けていた。
その調子を崩さず、ふと窓を見る。
外の様子はもう夕暮れであり、あと数十分でお天道様は顔を出さなくなる。
それを確認したら、羊飼いは急に立ち上がり、こう言った。
「勘定だ。外に出るヨ」
そう言った後、小走りで受付の方へ向かっていた。
レンは『なんで?』という顔をしていたが、カプリと黙ったままのブラッドはその真意を理解していた。
ブラッドは真意を"理解した上"で黙っていた。
ギルドから出ると昼間と同じでやっぱり閑散としている。その様子はさながらゴーストタウンを思わせる。
何もない街を眺めていることに何の意味があるか分からず、レンは不思議な顔していた。それは、言葉として出ていった。
「で、なんで外に出てきたんですか?何もありませんけど」
不思議な顔が怪訝な顔なになってきているレンに、
「はい、これ」
そう言いながら小袋を渡してきた。
中身は四角柱の形をした硬いもの、ということしか分からない。
「なんなのよ、これ」
カプリも小袋の中身に興味が湧いたようで前へ乗り出してくる。だけどもそれは、羊飼いがレンに何をさせたいか、を知っているからこそのものだった。
次の瞬間、カプリは羊飼いのこの行動の意味が分かった。
シュン、という風を切る音とともに何かが通り過ぎて行った。そして、レンの手からは小袋は消えていた。カプリにはそれが見えていた。
レンはカプリのように"信じられないぐらいの速さ"で動く何かがなんなのかは分かっていないが、気配は感じ取ったので、咄嗟に前にいるカプリを引き戻し、その目の前に手を突き出す。
小袋が無くなるのを確認した羊飼いは、フッ、と少しニヤけながら、冷静に言った。
「奴らガ、このシェラタンをこんな寂しい街にした張本人達だ。さぁ、頑張れよ。同じ穴の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます