第21話 『記録の守人』

記録の核

光がふわりと揺れる不思議な空間で、「記録の核」が優しく輝いていた。まるで、4人がどんな決断を下すのかを静かに見守っているかのようだった。


中央に立っていた「記録の守人」がゆっくりと一歩を踏み出すと、水面に波紋が広がるように光が拡がった。


「君たちだけに、すべてを任せるわけにはいかない」


その声には、怒りよりもむしろ悲しさが感じられた。


「だが、聞かせてほしい。 記録とは、誰のためのものだと思う? 誰かが生きていた証は、誰が決めるべきだと思う?」


アイが戸惑いながら口を開いた。 「……それを、私たちに聞くの?」


守人は穏やかにうなずいた。 「君たちもまた、この記録の一部だからだ。答える資格がある」


守人の装甲が徐々に消え去り、その中から人間の姿が現れた。それは昔、この記録を守っていた人間の姿だった。人の言葉で伝えるために、この姿を選んだのだ。


◆ 選択の瞬間


守人は静かに問いかける。 「君たちはなぜ、ここへ来たのだ?」


クロスが一歩前に出て答えた。 「俺たちは魂を転生させるシステムを壊しに来た。でも……」


レイが言葉を引き継ぐ。 「ただ壊すだけではなく、それが本当に新しい未来を作るのか、私たちは確かめたい」


守人はじっと彼らを見つめ、ゆっくりとうなずいた。


「君たちには選択がある。 破壊するのか、それとも受け継ぐのか。 君たちが選ぶ道が、世界の運命を決める」


アカシック・ゲート

その瞬間、空間全体が大きく揺れ動いた。 風が吹き抜け、光が渦を巻き、水が空へと舞い上がる。 中央には真っ直ぐな光の道が現れた。


「……これは?」アイが驚いた様子で声を上げた。


「これはアカシック・ゲートだ。すべての魂の記録が眠る場所への扉だ。 進むのなら、覚悟が必要だ。 そこでは過去も未来も、あらゆる記憶を見ることになる」


クロスが拳をぎゅっと握り締めた。 「覚悟なら、とっくに決めている」


旬が静かに前に出て言った。 「あの扉の向こうに世界を変える答えがあるなら、俺たちは進む」


扉はゆっくりと開き、まばゆい光が彼らを包み込んだ。


ソウルゾーン

扉の向こう側は、これまで見たことのない景色が広がっていた。 そこには時間も重さもなく、数え切れないほどの記録が空中に浮かび、ゆっくりと漂っていた。


それらは誰かが生きた証であり、過去も現在も未来も同時にそこに存在していた。


「ここが……時間を超えた場所、ソウルゾーンなの?」アイがつぶやいた。


レイが周囲を見渡しながら口を開いた。 「ここに来たからには、私たちにも責任が生まれるってことね」


クロスが真剣な眼差しで言った。 「だからこそ、真っ直ぐ向き合うしかない」


その時、一つの記録が4人の魂に反応した。 そこには、魂が生まれたばかりの、まだ名前も記憶も持たない純粋な瞬間が映し出されていた。


それは、新しい冒険の始まりを告げているかのようだった。


魂の回廊:旬

一番はじめに光に触れたのは、旬だった。 空間が水面のように揺れ、彼の姿が映し出される。


そこに映ったのは、名前もない存在。 まだ何も知らなかったけど、“誰かを守りたい”という気持ちだけは強くあった。


「……これが、俺の魂の形……?」


その思いに触れた瞬間、旬の瞳が紫に光った。


彼の魂と記憶がつながり、新しい力が目を覚ました。


魂の回廊:レイ

次に選ばれたのは、レイだった。 足元の風が静かに舞い、空間を包みこむ。


そこに現れたのは、昔のレイの影。 でも、それはまだ形もない、ただ迷っている魂だった。


どこに進むか決められず、ただ流れに従っていた存在。


「選ばなければ傷つかない。だから私は流されてた」


風が問いかけてくる。 「それって、本当に自由だったの?」


風はやがて1つの矢のように集まり、レイの心にまっすぐ届いた。


「……私は、選ぶ。風に流されるんじゃなくて、自分で動かす」


その言葉とともに、彼女の背に光の羽のような風が広がった。


魂の回廊:アイの目覚め

紫色の光が記録層の一角で静かに揺らぎ、アイの足元に波紋が広がった。


映し出されたのは感情を持たず、ただの機能として存在した「始まりの魂」。


「……私は感情を拒んだ。精度を守るために」


アイの声は静かで、その奥には隠せない感情が見え隠れしていた。


「でも、胸の奥にはずっと残っていた。理解ではなく、共鳴を求める何かが」


光が彼女の胸元に集まり、小さな記憶が現れた。 それは、名もなき誰かの痛みに寄り添う記録だった。


「私は……誰かの痛みに触れたかった」


紫色の瞳が揺れ動き、無表情だったアイの顔に人間らしい温かさが宿った。


アイの魂が目覚めると、空間は穏やかに震え、次の記録へと流れていった。


◆ 魂の回廊:クロスの葛藤


黒と銀の光が交差し、その中心にクロスの姿が浮かび上がる。


映し出されたのは誰かを背負った影。その手には赤い痕が刻まれていた。


「……俺は、『正しさ』のために誰かを犠牲にした」


その声は苦痛と決意が交錯していた。 守るか切るか。その選択にはいつも後悔が伴った。


「制御することでしか、自分を保てなかった。でも……」


赤い波紋が広がり、小さな手が現れた。 それは、かつて守ろうとした誰かの記録だった。


「もし違う選択ができていたら……」


クロスの義手が微かに輝いた。記憶が引き起こした反応だった。


「俺の魂も、まだ選べるのか」


黒と銀の光が一体化し、空間は静かに閉じられていった。


魂の共鳴、新たな記録の兆し

空間全体が震動し、記録層が一斉に光を放った。


魂の共鳴によって空間は再構築され、砕け散った「コスモオーブ」の一部が未知の力を秘めて静かに輝き始める。


「私たちが『記録を書き換えている』んだ」旬の声は確信に満ちていた。


オーブを囲む幾何学模様が鮮やかに輝き、やがて未知の空間への道を示すように形を変えた。


記録の守人、目覚める意志

オーブの輝きが最高潮に達すると、記録の守人がゆっくりと動き始めた。


「これは……想定を超えている」


その声には、理解を求めるような意志が込められていた。


「記録は書き換えることで、未来に新たな意味をもたらす」


守人は4人を尊敬の眼差しで見つめたが、次の瞬間、空間は再び緊迫した。


ナイトギデオン登場


重い足音と共にナイトギデオン部隊が記録空間に現れた。


「記録の書き換えは、即時制圧対象だ」


隊長ジークの宣言を合図に戦闘が始まる。


旬たちは覚醒した魂の力で敵のAI予測を狂わせ、戦いを有利に進める。


だが、ジークが前線に現れたことで、戦況は一気に激しさを増した。


◆ ナイトギデオン:秩序の執行者

《NOΣIS》──50年前、ネオ・アルカディアに設立された組織。 魂の記憶や個性を管理し、「自由意志」を誤差と定義した。


その中枢で魂を制御する特務部隊、それが《ナイトギデオン》だった。


記録層に現れた隊長ジーク(Ω-05)は、腰から《パルスレールブレード》を展開。 光子回路の刃が空間に幾何学模様を描いた。


「記録を操る者を、秩序の名のもとに断罪する」


兵たちが一斉に突撃し、空間は閃光と衝撃で満たされた。


第一交戦:魂の閃光

クロスの重力バリア、レイの風刃、アイの解析──そして旬の雷光の拳。


ナイトギデオンはただの機械兵ではない。魂を制御され、戦闘ごとに学習し進化する兵士たちだった。


「敵もリアルタイムで戦闘データを学習している!」


アイの叫びとともに敵はより鋭い反撃を繰り出す。


しかし、4人の魂は決して揺らがない。 互いの絆を深め、熾烈な攻撃にも耐え抜いた。


そんな彼らを上空から見つめる黒い影。その瞳には、意志ある知性が宿っていた。


まるで、この戦いが未来を決する「審判」であるかのように──。




次回予告

『REN Code No:RN-X03』


激化する戦いの中、圧倒的なAIの進化に晒されながらも、クロス、レイ、アイ、旬は己の魂の力を信じて立ち向かう。

そして――

その戦場に、一歩も動かず立つ男がいた。


彼の名は、レン (REN) CODE NO:RN-X03

かつてナイトギデオンの最前線にいた男。

今は命令を受けず、ただ、戦いを“見つめる者”

戦局を見守るだけの存在か、それとも……?


その瞳が赤く輝くとき、止まっていた何かが動き出す。

そして魂たちは、さらなる共鳴の先へ──


あなたなら、この戦いにどう関わる?

魂で選べ、未来を。

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