第11話 覚醒する力と決断
静寂の時間
旬は部屋に入ると、深く息をついた。
静かな部屋の中で、一人で思考を落ち着ける時間を欲していた。
扉が軽くノックされる音がして、彼は振り向いた。
「どうぞ。」
朝食と会話
扉を開けると、アイとレイが顔を出した。レイは手にトレーを持ち、簡単な朝食を運んでいた。
「少し食べてから話しましょう。」
彼らは旬の前に食事を並べた。
ネオ・アルカディア特有のシンプルな食事で、栄養が考えられていると分かる。
旬は「ありがとう」と小声で言い、フォークを取って口に運んだ。
「思ったよりも美味しいな。」
旬の感想に、レイが笑った。
「見た目よりいいでしょ。味付けは控えめだけど、エネルギー効率を重視してるからね。」
解析データの発見
アイが話を切り出した。
「旬、さっき記録装置を使って解析したデータの中に、君の夢と関係がありそうなパターンが見つかったの。」
「それって、どういうこと?」
旬は興味津々で聞いた。
アイは続ける。
「君が夢で見た場所。それがオメガシティの中枢システムにつながっている可能性がある。もしそこに行ければ、君がここに来た理由やポッドの謎が解けるかもしれないの。」
その言葉に旬の胸が高鳴った。
「いつ、そこに行けるんだ?」
アイは少し考え込んで答えた。
「今夜のうちに移動する計画を立ててる。でも、準備にはまだ少し時間がかかる。」
旬は深く頷いた。
「準備ができたら教えてくれ。」
アイは一言「わかった」と言って部屋を出て行った。
夢の記憶との一致
一人になった旬は、再び考え込むように目を閉じた。
彼がこの世界で何をすべきなのか、どんな運命が彼を待っているのか。答えはまだはっきりしないけれど、少しずつ霧が晴れていくような気がした。
その時、再び扉がノックされた。
今度はレイが部屋に入ってきた。
「何かあったのか?」
旬は尋ねる。
レイは小さな記録装置を手に持ちながら言った。
「これを見てほしい。」
レイが見せた記録装置には、薄暗い通路や見覚えのある建物の映像が映っていた。
それを見た旬は言う。「これ、俺の夢で見た場所そのままだ。」
レイは頷いた。
「やっぱりそうなんだ。君の記憶と一致する場所が記録されている。そこに行けば、何か分かるはず。」
旬はしばらく考えた後、答えた。
「確かに、行かなきゃならない気がする。」
レイは安心した表情を浮かべた。
「よかった。計画を少し早めて、その場所に向かおう。」
旬は「わかった」と言い、部屋を出て行く準備を始めた。
出発と不穏な兆し
しばらくして、アイが部屋を訪れた。
「準備が整ったわ。すぐに出発しましょう。」
旬は立ち上がり、彼女に続いた。
通路に出ると、レイと他のメンバーも待っていた。
突然、遠くで何かの金属音が響いた。それは不規則に繰り返され、やがて近づいてくる。全員が一瞬で緊張感を高めた。
「行こう。」
全員が頷き、静かに歩き始めた。
しかし、進む先から不審な音が聞こえた。
全員がその場で止まり、警戒した。
レイはスクリーンを操作し、状況を確認した。
「ネオ警察だ。」
アイは低い声で答える。
「計画が漏れたかもしれない。」
旬はどうするべきか迷うが、アイが指示を出した。
「別のルートを通ろう。接触は避ける。」
全員が頷き、慎重に行動を始めた。
追跡の足音
突然、通路の向こうで足音が響いた。
金属の床を踏みしめる音が規則的に続き、明らかにこちらを捜索している様子だった。
アイが静かに手を挙げ、全員に動きを止めるよう合図を送る。
「隠れる場所を探して。」
レイが即座に周囲を見回し、小さなメンテナンス用の格子状の通気口を指さした。
「ここに入れる?」
旬がすぐに確認すると、大人一人がなんとか通れるほどの隙間があった。
「やるしかない。」
逃走の失敗
彼らは素早く通気口のカバーを外し、一人ずつ中へ滑り込もうとした。しかし、最後に旬が入る直前、警官の一人が異変に気づいた。
「待て!そこだ!」
警報が甲高い音を立てて鳴り響き、赤いライトが激しく点滅する。通路全体が赤く染まり、光の明滅が不気味な影を作り出した。ネオ警察の兵士たちが銃を構え、一斉にこちらに照準を合わせた。
「くそ、逃げられない!」レイが叫ぶ。
「戦うしかないわね。」アイが短く呟くと、手元の端末を操作し、天井の照明を一瞬だけ明滅させた。
旬の覚醒と異変
その瞬間、旬の意識が研ぎ澄まされ、時間の流れが遅くなったように感じた。
警官が引き金を引いた瞬間、彼の体が自然と動いた。銃弾が飛ぶ直前に、旬の手元のポッドが淡い光を放つ。
周囲の空気が揺れ、一瞬、重力が歪むような感覚が走った。まるで空間全体が引き裂かれるように、足元の床が波打つように揺れ、体がわずかに浮かび上がる。圧縮された空気が爆発的に弾け、周囲の光景が一瞬歪んで見えた。
「うっ……!?」
ネオ警察の隊員たちは目を見開き、驚きで動きを止めた。その隙に、旬は素早く距離を詰める。
「はあっ!」
圧倒的な戦闘力
旬の拳が振り下ろされると、まるで衝撃波が走ったように、先頭の警官が後方へ吹き飛んだ。
「な、何だ……!?」
他の警官たちは慌てて銃を構えるが、旬のポッドがさらに強い光を放ち、空間が揺れる。
「ポッドが……!」アイが驚いた声を上げる。
旬の動きは明らかに普通の人間の反応速度を超えていた。
「行くぞ!」
彼は次の警官に向かって跳びかかり、手のひらから放たれたエネルギー波が相手の武器を弾き飛ばす。
レイも銃を構え、アイはサポートデバイスを操作して敵の動きを封じる。
「これが……俺の力なのか?」
だが、それは喜びではなく、恐れに近い感情だった。
体が思い通りに動く。だが、それは自分の意志なのか、それとも何か別の存在に突き動かされているのか——。
拳を握ると、微かに震えていた。
彼の体から発せられるエネルギーは、まるで生き物のように波打ち、空気を震わせていた。
手のひらを見つめると、そこには淡い光の残像が残り、皮膚がわずかに発熱しているのを感じる。
意識の奥底で、何かが目覚めようとしていた。
旬は敵を次々と倒しながら、自分の中で何かが覚醒していくのを感じた。
戦いの終結と決断
最後の警官が銃を構えるが、旬は一瞬で間合いを詰め、その腕を掴んで勢いよく捻り上げる。
警官の身体が宙を舞い、床に叩きつけられた。
他の兵士たちは、意識を失って倒れる者、武器を奪われて呆然とする者、戦意を失って動けない者——完全に戦闘不能だった。
レイが呆然とした表情で旬を見つめた。
「……今の、何?」
アイも眉をひそめる。
「旬、あなた本当に大丈夫?」
旬は言葉に詰まった。
圧倒的な力を手に入れた実感がある。だが、同時に拭えない違和感が胸の奥に残る。
「……わからない。けど……今は進もう。」
アイが素早く状況を確認し、声を張る。
「時間がない、早くここを離れよう!」
レイが焦った表情で言う。
「でも、このままじゃオメガシティの中枢には行けないよ。」
旬は歯を食いしばった。
ここまで来て引き返すのか。しかし、ネオ警察の警戒が強まっている以上、無理に進めば更なる危険を招くだけだ。
「……一旦、身を隠そう。」
旬が決断する。
アイも頷く。
「そうね。今は撤退が最善。別のルートを探しましょう。」
旬たちは悔しさをにじませながらも、オメガシティの中枢行きを断念し、別の逃走ルートを模索することにした。
旬はまだ手のひらに残るエネルギーの感覚を感じながら、仲間たちと共に次の目的地へと駆け出した。
次回予告
突然の覚醒に戸惑いながらも、新たな力を手に入れた旬。しかし、真の危機はまだ終わらない。
ネオ警察の追撃を振り切った彼らが辿り着いたのは、レジスタンスの訓練施設だった。
そこでは、旬の新たな力を試す過酷な試練が待っていた。そして、彼の存在に気づいた未知の脅威が、闇の中で動き出そうとしている——。
次回——「覚醒の試練」
さらなる力を求める旬、新たな仲間、そして忍び寄る影——。
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