お見舞い
朝、秀は教室に入った。しかし、いつもとは違う。
「...あれ、舞衣は?」
昴、悠斗、大晴に聞くが、全員首を傾げるだけだ。
「まだ来てないだけかな。一応LINEしてみるか。」
『この時間まで学校来てないの珍しいな。大丈夫か?』
すぐに既読がついた。
『熱出た。今日は休みます』
返信を見た4人は慌てた。
「藤咲ちゃんが休み!?大丈夫なのか!?」
「本人は熱って言ってるけど...。心配だな」
「よし!今日放課後藤咲ちゃん家にお見舞いに行こう!」
「いいね。色々買っていこう!」
舞衣がいないため、4人にブレーキはかからなかった。
放課後、秀が舞衣の家を知っていたため、近くのスーパーで買い物をしてから秀の案内で舞衣の家に向かった。
ピーンポーン。
インターホンの音の後、スピーカーから「はあい」という声が聞こえてきた。
「舞衣のお見舞いに来ました。桜田です。」
「あぁ!秀くん!今開けるわね!」
少ししてドアが開き、舞衣の母親が出てきた。
「いらっしゃい。もしかしたら寝てるかもしれないけど...」
家の中に通され、4人は舞衣の部屋の前に来た。
ノックするが、返事はない。
「失礼しま〜す」
ゆっくりとドアを開けて、部屋の中に入る。舞衣はベッドで寝ていた。
「寝てる。静かにな。」
秀が自分の唇に人差し指を当てたときだ。
「ぶえっくしょい!」
大晴がクソでかいくしゃみをした。
「おいっ、大晴!」
「ん〜?」
「「「「あ」」」」
舞衣がゆっくりと目を開けた。
「ん、えぇ...。あれっ!?みんな!?」
舞衣が起き上がった。
「ごめん、起こした?」
「いや、大丈夫...。でも、何でみんながここに?」
「お見舞いに来たんだ。これ、買ってきた。」
悠斗がビニール袋を上げた。舞衣は中身を覗き、顔をしかめた。
「ただの熱なのにこんなに買ってきたの?」
ビニール袋の中にはヨーグルトやゼリー、スポーツドリンクが沢山入っていた。
「うん。」
「いいのに別に...」
でも舞衣の口角は上がっている。舞衣は体温計の電源を入れると、脇に挟んだ。
ピピピピッと鳴った体温計を脇から外した。
「36.7...。うん、明日は学校行けそう」
「良かった〜」
舞衣は体温計を元の場所に戻した。
「ありがとう、お見舞い来てくれて。移しちゃ悪いからそろそろ...」
「おう。じゃあ、また明日な」
3人が部屋から出て行き、最後に出た悠斗が手を振った。舞衣も振り返した。
かちゃりとドアが閉まった。スマホを見ると、美琴からLINEが来ていた。
『大丈夫かー?今日舞衣がいなくて4人のブレーキ係がいなくて大変だったよー(。-∀-)早く良くなってね( ^ω^ )』
美琴からのLINEに返信した。
「おはよー」
秀が教室に入り、3人と一緒にいると、美琴が近づいてきた。
「桃瀬。どうした?」
美琴は3人にスマホを見せた。それはLINEのトーク画面だった。
『そうだったんた!今日4人がお見舞い来てくれたんだ。熱出ただけでこんな心配されることないからちょっと照れ臭かったけど、嬉しかったな。もう明日には学校行けそう!学校楽しみだな!』
4人がスマホから目線を上げると、美琴がニヤニヤしていた。
「舞衣、嬉しかったってねー」
「何の話?」
後ろに舞衣がいて、美琴がスマホを落とした。
「あ、落ちたー...何?これ。もしかして見せたの?秀たちに?」
美琴が目線を泳がしている。舞衣は肩をプルプルと振るわせた。
「み〜こ〜!!!」
舞衣は美琴のスマホを振り上げたまま、美琴を追いかけた。
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