リヒトの想い
時は戻り…お茶会で、ルークと別れた後の話…
シルバーウルフの気を逸らす為、アティカスは、氷の槍を創り出しシルバーウルフへと放つ…
氷の槍は、シルバーウルフに命中すると、シルバーウルフは雄叫びを上げアティカス達を睨む。
「リヒト様!絶対に俺から、離れないでくださいね!」
「ぷぎゃ!」
分かった!と、言うようにリヒトは、鳴くとアティカスの肩に強くしがみつく
アティカスは、行きますよ!っと言うと飛びかかってきたシルバーウルフの攻撃を、ギリギリのところでかわし体勢を整え再び氷の槍を作り出し、シルバーウルフの前足目掛け飛ばす
しかし、シルバーウルフは槍を避け素早くアティカスに近づくと、鋭い爪を振り下ろした。
「ーッ!!」
「ぷぎゃ!?!」
爪は、微かにアティカスの腕をかすめた。
服が破けジワリッと、血が滲む
アティカスは、体勢を整えるためシルバーウルフを見つめたまま後ろへ下がると、自身の傷ついた腕を一瞬だけ見て再び目線を、シルバーウルフに戻す
「…やはり強いな。…これから、どうしたものか。」
アティカスが、どうするか悩んでいるとリヒトが、肩から降りると、唸り声を上げアティカスの前に出る
「リヒト様…!?」
「ぷぎゃ!ぷぎゃぎゃ!」
リヒトは、チラリっと少しだけアティカスの方を振り向くとじっと、アティカスを見つめた。
アティカスは、そんなリヒトの目を見つめ一瞬目を見開きそして、ゆっくりと頷く
「リヒト様…貴方は……」
「ぷぎゃ!」
「畏まりました。でも決して、無理はしないでくださいね!」
「ぷぎゃっぷ!!」
リヒトは、大丈夫!と強い意志を込めて鳴くと、シルバーウルフへと視線を戻した。
「では、リヒト様…いきますよッ!」
「ぷぎゃ!」
〖リヒト視点〗〜
ボクは、目覚める前の記憶があまり無い。
あまりというのは、ボクの名前も、歳も、何者なのかも分からないけど、少しだけ覚えてる事があるからだ。
それは、とても寂しくて辛くて苦しかった記憶
ずっと暗くて冷たい闇の中で、生きていた残酷までに切ない記憶
永遠に続く闇の中、ボクは彷徨っていた。
〖だれか…たすけて…〗
呟いたボクの助けの声は、誰にも届かない。
そう……ずっと思っていた。
でもある時、目の前が、パッと明るくなりボクを暖かい光が包み込んだんだ。
そして…目が覚めた時、最初に見たのは…ルークだった。
優しくて強くて真っ直ぐな目をしたもう一人のボク何故だが、ルークがもう一人ボクだと言う事を見た瞬間に理解し分かった。
だから、ルークを見た時自然と心から、安心した。
それからボクは、〖リヒト〗と呼ばれルークとの生活が始まった。
ボクは、とても幸せで毎日が、幸福だった。だってずっと、知らなかった感情や楽しい思い出をどんどんをルーク達が、教えてくれたんだ。
楽しくて幸せで、心地いい居場所……。
ボクの大切な居場所。大事な人達。
ボクを見つめて微笑み、抱き締め優しく撫でてくれるルークの手が…腕の中が、大好き
ルークの傍にいるアティカスとマリーもボクに、優しくていい匂いがして大好き
ボクを愛し優しい光で、守ってくれる人達…
だからこそ、守られるだけじゃなくてボクも、皆を守れる様になりたかった。愛する人達を…
そんな想いが芽生え始めた頃、お茶会に突然現れた悪い魔獣の攻撃が、アティカスの腕を傷をつけたのを見た瞬間…ボクの内側から強い【力】が、溢れるのを感じた。
〖守りたい!〗
ぽかぽかと暖かく強い力が、身体中をぐるぐると周り巡る。
この力は…ボクの力?この力があれば、ボクもアティカスを、ルークを、皆を守れる?
ボクは、アティカスを見つめた後、目の前のシルバーウルフを睨みつけ、唸りながらアティカスの肩から降りアティカスの前に立つ
アティカスが、驚き大声でボクの名を呼ぶ。
大丈夫だよ。ボクも、みんなと戦えるんだ。
ボクは、少しだけ振り向きアティカスへ視線を向ける。アティカスと、目が合う。アティカスらは、一瞬だけ目を見開きすぐに真剣な顔で、ボクを見つめ返した。
ボクの意思が伝わったのか、アティカスは小さく頷き告げた。
「畏まりました。でも決して、無理はしないでくださいね!」
ボクは、アティカスの言葉に、大丈夫!と鳴きシルバーウルフへと視線を向けた。
ボクのこの力で、戦うんだ。みんなを守るために!
大好きな皆と…ルークと共に生きるために!
〜〜〜
アティカスは、氷魔法の槍を数本作り出しシルバーウルフに目掛け放つ。飛んできた槍を、シルバーウルフは素早く交わす。
その瞬間、いつの間にかシルバーウルフの近くまで、近づいたリヒトが口を開け、サッカーボールくらいの炎の球を生み出しその炎の球を、シルバーウルフ目掛け放った。
炎の球は、勢い良くシルバーウルフの顔面に命中する。シルバーウルフは、グァァ”ァ”ァ!と唸り声を上げ目を閉じ、頭を左右に激しく振り暴れる。
「今だ!…」
アティカスは、腰に差していた剣を掴み引き抜くと、素早くシルバーウルフの後ろ側に移動し、右後ろ足目掛け、力いっぱい剣を振り落とす
グギァ”ァ”ァ”ァッ!!と、大声で叫びシルバーウルフが、バランスを崩し倒れた。
その隙を見逃さず、アティカスは続けて氷の槍を放つ
ドシンッと音と共に、凄まじい砂煙が舞い上がる。
「…ハァ…ハァ……これで、どうだ。」
シルバーウルフは、倒れたまま動かない。
しかし、暫くするとピクリッと身体が揺れ足が動く。
「まだ動けるのか…ってリヒト様!?!」
「ぷぎゃ!」
そんなシルバーウルフにリヒトが、ゆっくりと近づき倒れたシルバーウルフの額と自身の額を合わせた。
その瞬間……
ふわりっと、淡い光がリヒトとシルバーウルフを包み込む。
「な……これは!?……聖魔法」
パキンッと、何かが割れる音が響くとリヒト達を包んでいた光が消え見えたシルバーウルフは、穏やかな顔つきで眠る様に、息絶えていた。
リヒトは、どこか悲しそうな辛そうな顔をしシルバーウルフを見つめその額に一度だけ、頭を擦り付ける。
雲の隙間から漏れた光が、リヒト達を照らし包む
アティカスは、その光景に目を見開きただ見つめていた。
〜
【リヒト視点】
倒れたシルバーウルフから、嫌な気配を感じボクは近づき額を合わせた。
流れ込んできたのは、シルバーウルフの嘆き…
【苦しみ】【辛い】【憎い】【もうやめたい】【こんな事したくない】【痛い】【もう楽になりたい】【助けて】【解放して】【悲しい】
そんな嘆きと辛い記憶が、ボクの中に流れてくる。
〖キミは、こんなことしたくなかったんだね。…親や兄弟達、仲間を殺され更には、番と子供達まで奪われるなんて…〗
シルバーウルフは、ゆっくりと瞼を開きボクを見つめた。
【お願い…小さき竜の子よ。私の子供達や大切な番の魂を呪詛魔石から解放してあげて…このまま私が逝けば、呪詛に込められた魂が飲み込まれ、二度生まれ変わる事も出来ず暗闇を迷う事になってしまう。私は、どうなってもいいから…家族をどうか……】
大きな瞳から、涙が溢れ流れ落ちる。
ボクは、心の中で祈り強く願う。
〖どうか、忌まわしき呪詛からこのシルバーウルフ達の魂が解放されますように…〗
その瞬間、淡く暖かい光がボク達を包み込む
パキンッと呪詛魔石が、割れる音が響き嫌な気配が消えていく。
【あぁ……ありがとう。これで、あの子達や大切な番の魂が、苦しみのない光輝く空へ逝くことができる。ありがとう…ありがとう。小さき竜の子、優しい者よ……】
そう言い終えると、シルバーウルフはゆっくりと瞼を閉じ穏やかに息絶えた。
ボクは、息絶え動かなくなったシルバーウルフの額に、一度だけ、頭をスリッと、擦り付け小さく鳴く。
その鳴き声は、誰に届くことなく静かに空気に溶けた。
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