第三章 ルーゼント家編

甘味

あれから、数週間…何事もなく穏やかな日常に戻り

冒険者活動も慣れ始めた現在…


俺は、何故か…本邸の中を逃げ回っていた。


「どうしてこうなったんだ……!」


遡ること数日前の事……


俺は、唐突に甘味が食べたくなり自室の椅子に、座り頭を抱え悩んでいた。


甘味が、食べたいならば…食べればいいじゃないか?と思うかもしれないが……実は、この世界に甘味と呼べるものが少ない…俺が前世で食べてきた甘味とは、全然異なるものばかりだった。

初めて食べたこの世界の甘味は……クッキーに似た焼き菓子で、めちゃくちゃ硬く甘みは微かな上に、少し酸っぱかった。

そしてチョコレートっぽい見た目の甘味は、口に入れた瞬間…何故か苦くてしょっぱかった。

この世界にある甘味は、全て見た目に反した味をしている…それを甘味と呼べるだろうか……否!!!呼べない


それに、この前…街で食べたケーキは、とても美味しかったが〖ケーキ〗とは、付いていたがケーキと言うよりも、〖パイ〗と言われた方が、しっくりくるもので…

パイ生地の様なもので、リネゴのみを包み焼いたもので前世で言う所のアップルパイに近いものだろう…

マリーさんが、食べていたキャロッテケーキも同じ様な感じだった。


何故?この様な甘味ばかりなのかと、調べてみたら原因はなんと……この国だけなのかそれとも、他の国もなのかは、分からないが調理法が、〖焼く〗·〖切る〗·〖軽く煮込む〗と、少ない調理法しか知らないという事と料理のレパートリーの少なさだった。


そもそもこの世界の食材は、どれもそのままで十分美味しい物ばかりで調をこだわる必要がなかったらしい…

(そりゃ……甘味が少ないわけだ……そういえば、今まで別の事で必死で、余り考えていなかったが今まで食べてきた食事も簡単なものが、多かった気がするな……マジか…)


頭を抱えていると、アティカスくんとマリーさんが心配そうに俺を見てくる


「ルーク様?どうなさいました?」

「アティカスくん…」

「はい?」

「甘味が食べたい……」


その言葉に、アティカスくんは…では、用意させましょう。と言うとマリーさんへ指示しようとするのを俺は、止める


「まって…まってっ!!違うんだ!」

「ルーク様?」


不思議そうにしている二人に、俺は考えていた事を話すと二人は、驚く


「甘味と言われれば、それが当たり前でしたので…考えも致しませんでした…」

「確かにそうですわね…私が、好きなキャロッテケーキもルーク様の話だと、ケーキではなく…パイ?と言う物だと言うことですよね?」

「うん…ケーキってよりパイに近いと思うな~」

「そうですか…ルーク様の前世で食べたという甘味たちは、どんなものなんですか?」

「そうだな…?チョコは、この世界のチョコは、苦くてしょっぱいけど、前世で食べたチョコは、とても甘いんだ。それに、クッキーも硬くないしサクサクで甘くてとても美味しいんだ!他にも……」


俺は、思い出せるだけの前世で食べた甘味たちをアティカスくんとマリーさんに伝えると、二人は、目を輝かせた。


「どれも話を聞いただけでも、美味しそうですわ!」

「そうですね!特に俺は、ぷりん?というものが気になります。」

「私は、ぱんけーき?という甘味が、気になりますわ!」


そんな二人を見つけながら、俺は考えていた。

(二人共、凄く興味津々だな~!食べさせたいけど……う~ん…あ!材料さえあれば、あのプリンなら、俺でも作れるかもしれないな!)


「ねぇ?アティカスくん…厨房室って借りられないかな?」

「厨房室ですか?」

「うん。」

「大丈夫だと思いますが、念の為話をしてきますので少々お待ちください。」

「分かった。よろしくね!」


そう言うとアティカスくんは、軽くお辞儀をして部屋を後にした。暫くすると、アティカスくんが戻り告げる


「話は、通してきました。」

「ありがとう!じゃあ…厨房室へ行こうか!」


俺は、厨房室が借りれると分かりウキウキで自室を出て厨房室へと向かった。因みに、リヒトは俺のベットの上で、すやすやと寝ていたので今回は、お留守番だ

厨房室へ着き扉を開け入ると、中にいた数名の料理人が作業を一瞬止め…嫌そうな顔で俺を見たが、すぐに作業へと戻る

(あ~…最近、ほぼこういう扱い?態度?されなくなってたから忘れてた…。俺、嫌われてるんだったわ…)


どうしたものかと突っ立っていると、他の料理人より少し立派そうな厨房服を着た175cmくらいの少しふくよかな体格の50代くらいの料理長らしき男性が、俺に近づいてきた。


「これは!これは!ルーク様ではありませんか?貴方様が、厨房室になんの御用でしょうかな……?」

「少し厨房と材料を貸してほしいのですが……」

「おやおや…!まさか…貴方様が…料理を…?」

「ダメでしょうか……?」

「いえいえ!この厨房室も材料も元々、ルーゼント家のものですから…ご自由にお使い下さい。(ハッ…!〖化け物〗が、いい気なものだな…)」


最後の方は、小声で何を言っていたか分からなかったが料理長は、お辞儀もせずくるりと俺に背を向け去っていった。


「よし!じゃあ…作業の邪魔にならないあの隅でやろ…ッ!?って…え?どうしたの二人共…」

「……いえ」

「何でもありませんわ…」


アティカスくんとマリーさんの方を振り向くと、二人の顔は笑顔だが、目が笑っていなかった。

(なんでもない訳ないよなこれ……ギルドの時と同じ顔をしてるよ二人共…めっちゃ怒ってる……もしかして…さっき聞こえなかった部分二人には、聞こえたのか…それで怒ってるってことは……あ~何となくなんて言ったのか分かったかも…)


俺は、二人の片手を掴み…大丈夫だよ。俺の為に、怒ってくれてありがとう。と告げると二人は、繋いだ手をぎゅっと握り返してくれる


その後、厨房の端へ移動した俺は、早速プリン作りを開始した。


「それでルーク様?一体、何を作るんですか?」

「プリンだよ!」

「え!?」

「本当ですか!ルーク様!!あの先程、教えて下さったぷりんですか!」

「そうだよ!前世の時、どうしてもプリンが食べたくなって調べて作った事があったのを、思い出したんだ。あれなら…材料と鍋さえあれば、簡単に作れるはず!」

「お手伝い致します!」

「私も!」

「うん!三人で一緒に作ろう!」


アティカスくんとマリーさんに必要な物を教えると二人は分かりました。と告げすぐに、食材と調理器具を取りに向かう


俺は、前世で作ったプリンの作り方をもっと詳しく思い出す為…目を瞑り記憶を思い出す

(確か…材料は、卵と牛乳と砂糖があれば作れるはず!蒸し器は……この世界は、無いだろうな…でも鍋があればいけたはずだ!うん!いけるな!)



そんな俺の様子を、じっーと遠くから見つめる青年がいる事に俺は、気づかなかった。

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