06.さざめき
救急車のサイレンが、無我夢中のわたしの意識を引き戻した。
救急隊員の男性がわたしを現場から引き離すまで、わたしはずっとゆめみの名前を叫びながら真っ赤な手で鉄柱や看板を取り去ろうとしていたらしい。
担架に乗せられたゆめみがわたしの手を掴む。そのまま救急車に乗り込んだ。
病院へ向かう途中、真っ赤なゆめみと泣きはらすわたしに、救急隊員のひとはずっと優しく声をかけてくた。
でも、耳に入らない。
わたしたちはお互い声にもならない声で、ずっと謝りあった。
「ごめん……」
「わたしも、ごめんね……」
「ううん。ごめん……」
掠れる声で。
聞き取れもしないような声量で。
そして間もなく病院に着くと耳にしたタイミングで、ゆめみの充血した目がわたしを捉えた。
なにか喋りたそうだったから、耳を口元に寄せる。
そのときの言葉がわたしを突き刺した。
到着後、人が行き交いざわつくなか、救急隊員の方がわたしたちの名前を尋ねる。
わたしは両手を握りしめ、俯いたまま答えた。
「
そして、
「事故で怪我した方は……
そう、言い切った。
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