第24話:コア共鳴現象
二人が研究所に戻ると、すでに夜遅かった。スタッフのほとんどは帰宅しており、建物は静まり返っていた。
「専用の隔離室で調査しましょう」
和也は最高レベルのセキュリティが施された実験室に結晶を運んだ。そこなら万が一の事態にも対応できる。
「まずは基本的な分析から始めましょう」
二人は防護服を着用し、結晶の分析を開始した。特殊な装置で魔力レベルを測定すると、その値は計測限界を超えていた。
「これは驚異的な数値です」
松本が測定結果を見て驚いた。
「通常のダンジョン素材の何百倍もの魔力濃度...」
和也は慎重に結晶の表面構造をスキャンした。
「この結晶構造...どこかで見たことがあるような...」
彼は突然、佐々木の調合書を思い出した。そこには「ダンジョンコア」の理論的構造が記されていた。そして目の前の結晶は、その記述と完全に一致していた。
「間違いありません。これは本物のダンジョンコアの断片です」
二人は興奮と緊張が入り混じった状態で研究を続けた。コアの性質、放出するエネルギーの特性、そして何より、それが「調和調合」にどう応用できるかを探る。
夜が更けていく中、和也はある発見をした。
「松本さん、この結晶は...反応しています」
「反応?」
「ええ、私たちの調合素材に対して。特に『光彩の花』のエキスと強い共鳴を示しています」
和也は小さな実験を試みた。光彩の花のエキスを微量、結晶に近づけると、両者の間に美しい光の糸が形成された。
「これは...魔力の流れが可視化されています」
「素晴らしい発見です!」
松本は興奮して言った。
「これを応用すれば、『調和調合』の効率を飛躍的に高められるかもしれません」
二人は夜通し実験を続け、朝方にはいくつかの重要な発見をまとめていた。
「これは公式に報告すべきです」
和也は決断した。
「山本所長に連絡し、この発見を共有しましょう」
松本もうなずいた。
「そうですね。私たちだけで抱え込むべきではありません」
和也が山本に連絡すると、所長は驚きながらも即座に研究所に駆けつけた。
「これが本物のダンジョンコアの断片...」
山本は防護ガラス越しに結晶を見つめ、感嘆の声を上げた。
「そして既にこれだけの発見を...素晴らしい仕事です」
和也は発見の経緯と、一晩の研究成果を詳細に報告した。
「この結晶を『調和調合』研究の中心に据えることで、革新的な進展が期待できます」
山本は深く考え込んだ後、決断を下した。
「『ダンジョンコア研究プロジェクト』を正式に立ち上げましょう。佐藤さん、あなたがプロジェクトリーダーです」
「ありがとうございます」
「ただし、最高レベルのセキュリティと倫理審査を伴います。調合師ギルドの二の舞にならないよう、常に透明性を保ちながら進めてください」
「はい、必ず」
こうして、和也の研究はさらに新たな段階へと進んだ。
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