妹の友達から、わたしで童貞捨てたクセに!と言われ本当に捨てることになった話

桜井正宗

[前編] わたしで童貞捨てたクセに!

 まさか実の妹の部屋で童貞を捨てることになるとは思いもしなかった。


 衝撃的で、激動の人生を今歩み始めていた俺。


 ベッドの上には『理咲リサ』が息を乱していた。俺の妹の友達だ。

 彼女はずっと、俺に言い続けていた。



 『わたしで童貞捨てたクセに!』



 ――と。



 俺と理咲はそんな関係ではなかった。

 今までは。


 そう、今となっては本当にそうなってしまった――。


 あれは一か月前だった。


 ・

 ・

 ・


 大学に入ってから、妹が友達を連れてくるようになった。


 名前は『天音アマネ 理咲リサ』というらしく、小柄で可愛らしいアイドル級の美少女だった。


 シュークリームのクリーム色みたいな髪から本当に甘い匂いが漂っていた。これが女の子の匂いかぁ……などと、俺は童貞みたいなことを――いや、事実童貞なのだが、思ってしまった。



心夜しんや。ねえ、心夜ってば……!」



 妹の朝陽あさひが俺の名を連呼する。



「あ、すまん。シュークリームの話しだっけ」

「なんの話よ~。あたし、ちょっと用事があるから出かけるの。理咲ちゃんと遊んであげて」


「一緒に出掛ければいいじゃないか」

「そういうわけにはいかないの!」



 朝陽は、俺を置いて家から出て行ってしまう。

 俺と理咲はリビングに取り残され、気まずい空気が流れていた。


 どうしろって言うんだよ……。


 こんな可愛い友達を一人置いていくとか、危険すぎだろう。



「あ、あの……宝泉寺ほうせんじさん」



 理咲は怯えるようにして俺を呼んだ。そ、そんな怖がらなくても……いや、怖いよな。数回しか顔を合わせていないし、お互いをそれほど知っているワケではない。


 俺からしたら、妹の友達。

 向こうからしたら妹の兄であり、それだけの薄い関係性だ。


 それなのに二人きりにされて、困惑しているのだろう。という俺もどうしていいか分からん。



「な、なんだい?」

「か、彼女とかいるんですか……!?」



 突然の質問に俺は頭が真っ白になった。

 な、なんでそんなこと聞くかな!?


 急すぎて思わず「いない」とだけ短く答えてしまった。……なに言ってんだ、俺。

 いや、事実年齢イコールなんだが。



「そうでしたか」



 なにを納得しているんだ!

 くぅ……そりゃね、ずっと冴えない学生生活を送っていたからね。ハイパーコミュ障なので友達だってゼロさ(泣)


 大学生になってから多少マシになった程度だけど、それでも彼女はいない。



 それにしても、どうしようか。

 なにをすればいいのだろう。



「動画でも見る?」

「は、はい……」



 テレビには配信サイトが見られる小型端末を取り付けてある。リモコンで操作して、ヨーチューブに接続。


 普段、妹の朝陽が見ている猫動画でも適当に再生した。



「可愛いよね、猫」

「そうですね。可愛いです」



 なぜか俺を直視して感想を述べる理咲。……って、アレ。動画を見ていないぞ、この子。


 その視線は明らかに俺だけに向いていた。



(えっと……?)

「それにカッコイイです」



「へ」



 理咲は、こちらにゆっくりと歩み寄ってくる。

 そして、俺の隣に座ってきた。


 ち、近ッ!

 マジで近い。なんでこんな距離感? どうなっているんだ、これは! 触れそうなほど隣に理咲がいた。

 あの匂いが俺の脳をクラクラさせた。


 なんだか、変な気分に。



「宝泉寺さん。――いえ、お兄さん……」

「う、うん?」


「実は、わたし」



 理咲は、なにかを言いかけたが、突然リビングに入ってきた朝陽によって止められた。



「ただいま~…って、二人ともなにしてるのおおおお!? え、キス!?」




 俺と理咲が並んで座っている場面を見て驚く朝陽。

 気づけばキスされそうなほどに顔が近かった。


 そりゃ、誤解を受けても仕方ない! って、なんでこんなことに!




「おかえり、朝陽ちゃん」

「ねえ、理咲ちゃん。お兄となにをして……」



 明らかに動揺する朝陽は、俺を“お兄”と自然に呼んでいた。それ、小学生以来だぞ。


「えっちなことかな」



「「え!?」」



 俺と朝陽の声が被った。


 いやいやいやいやいや!!



「違う! 違うんだ! 俺はなにもしていない!」



 立ち上がり、俺は朝陽に弁明したが――。


 理咲も立ち上がってムキになって、こう言ったんだ。




「わたしで童貞捨てたクセに!」




 その瞬間、空気が凍った。


 って、なにを言っているんだ!?


 俺はなにもしていないぞ!!


 指一本も触れた覚えはない。なのに、理咲はどうしてそんなことを……! てか、この状況どうすれば……!



◆面白と感じたらでいいので★をお願いいたします!

◆こちらのラブコメもよろしくお願い致します


『覚醒した隣の席の井伊さんはつよつよすぎた』

https://kakuyomu.jp/works/16818093093467153835

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る